ナタリー PowerPush - つしまみれ

世界を揺るがすガールズバンドが夏全開の新作でメジャーに突進

歌詞は3人でセッションしながら作ったほうが思いが伝わる

──このアルバムはつしまみれのライブに一番近い印象を受けたんですよ。より本来の姿に近づいている気がしました。

まり ライブは観てくれたら良さが伝わると自信満々だったけど、その良さを音源にするのはなかなか難しいなと思っていて。これまではライブと同じことをやっても、なかなかうまく音源 にすることができなかったんです。その手伝いを今回エンジニアさんがやってくれたおかげで、より生々しくなったのかな。

みずえ 今まではレコーディングはレコーディング、ライブはライブと違うものみたいなイメージがあったけど、今回は「本当はこういうことがやりたいんです」と自分らしさをより前面に押し出してレコーディングできたと思ってます。

まり 歌も気持ちよく録れて、たとえば「マイクスメルくんくん」は1回しか歌ってなくて、まさにライブって感じです。マイクチェックのとき、ボリューム調整のために歌ったテイクがそのままCDになってたりするんです。ほかの曲もライブと同じように集中して歌うと、それをみんなが「2回目に歌ったやつがいい」みたいにジャッジして決まっていくんです。だから細かく直しすぎてないし、自分も潔く「これが私だ!」「これでOK!」とできたからよかったのかな。

──つしまみれはサウンド同様に歌詞も印象的ですよね。タイトルやフレーズ、言葉の響きの中に、耳に残るものが多い気がします。今回もかなりこだわったんじゃないですか?

まり 「ストップ&ゴー!」以外はタイトル先行です。まずみんなでひとつのタイトルを決めて。たとえば「山口」という曲はうちのマネージャーの山口さんからきてるんですけども、「『 山口』っていう曲を作ろうよ」「いいねー!」ってところから始めるので、その時点で3人のイメージはブレなくなるんです。一心不乱に「山」を表現する感じで、Aメロのフレーズは山口の「や(=8)」、8から始まるから8フレットとか。大きな山をイメージして、歌はおおらかな感じにします。で、「口(ぐち)」は、まぁ口なので。

やよい 愚痴を言っているところ。「キー!」ってなる感じですね。

まり 「ぐーちぐちぐち」というフレーズはその時点で決まるんです。山のところは母なる山のような気分で歌ってるのに、全体的になんか酷いことを言っているという(笑)。

みずえ まりの歌詞はメロディと一緒に曲の上に乗ってくると、見事に同化するんですよ。

まり 家ではあまり考えないようにしていて。ひとりで書いてたら重いものになるかもしれないけれど、3人でセッションしながら「愚痴がない!」と言ってるほうが「今、すごいムカついた感じ出た?」とか、熱い思いが伝わると思うんです。

みずえ 自然に身体から出てくる言葉だから、受け取るほうも自然に入ってくるんですよ。

つしまみれが売れること自体が面白い

──このアルバムがどのように広まっていくのか、今から楽しみですね。

まり すごく自分たちらしいアルバムが作れたので、反応が気になりますね。カッコいいと思うんだけどなあ。これが売れなかったら、「どういうことだ」ってちょっと考え直す。いや考え 直さないけど(笑)。

みずえ 「こんなことやっちゃって」とニンマリしてもらえるのが一番うれしいかな。

まり 早く世の中を揺るがせるようになりたくて。それこそ友達3人でスタートしたコピーバンドが、「日本で、結構すごい変な、カッコいいガールズバンドがいるぞ」みたいに話題になれたら面白いなと思うんですよ。

みずえ つしまみれが売れること自体が面白いよね(笑)

一同 (笑)

まり そうそう。だから、大学のときにお世話になってた先輩が「わあ、あいつらやってくれたぜ!」と思ってくれたり。それと、「海産物」という曲は、私たちの周りの解散したバンドへ の応援ソングだったりするんです。“海産(=解散)物”になった人たちから、「つしまみれがやってくれた!」と思ってもらえるようなバンドになりたいなと思って。みんなの気持ちも勝手に背負って突き進むぞ、という感じなんですよね。だから止ま るわけにはいかない。

みずえ お節介バンドなんです(笑)。

まり でもうちらが思ってるほど、解散したバンドたちはそんなにショックじゃない。なんかしれっとしてるよね。

一同 (笑)

まり ピンクリボン軍が解散したときは超ショックで、最後のライブで泣いて。「絶対うちら頑張る!」って思ったのに、みんな幸せそうに暮らしてる(笑)。

みずえ 楽しそうだよね。

まり なんか悔しい(笑)。

やよい だから逆に悔しがらせてやろうよ(笑)。

みずえ でもうちらはうちらで、突き進んでいて幸せだね。

1stアルバム『あっ、海だ。』 / 2009年6月17日発売 / 2500円(税込) / Victor/FlyingStar Records / VICB-60046

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CD収録曲
  1. 岩壁の上の一本指総長
  2. タイムラグ
  3. ブレスユー
  4. 険悪ショッピング
  5. 山口
  6. まつり
  7. マイクスメルくんくん
  8. ストップ&ゴー!
  9. いそぎんちゃくひともんちゃく
  10. 海産物
つしまみれ

1999年に千葉大学のバンドサークルで出会った、みずえ(Dr,Cho)、まり(Vo,G)、やよい(B,Cho)により結成。やよいの苗字「つしま」の「つし」と、まりの「ま」、みずえの「み」、3人が「まみれ」る、というコンセプトからバンド名が付けられる。コピーバンドを経て、オリジナル楽曲の制作を開始。2001年から大学外でもライブ活動をスタートさせる。2004年の初渡米以来、コンスタントに海外ツアーを開催。さまざまな土地でステージに立ち話題を集 めるなど、ワールドワイドな活躍を見せる。2009年4月、前代未聞の300円シングル「タイムラグ」でメジャーデビュー。ポップでキュート、少し毒のあるガールズロックで音楽ファンを惹きつけている。