TSUKEMENの存在意義は、音楽の楽しさを伝えること
──これも以前から感じていたことなのですが、TSUKEMENのファンの皆さんって、普段はどんな音楽を聴いている人が多いのかな?って思うんです。ライブに行くと、すごく熱心に、結成以来ずっと追いかけているような人もいて。クラシックのリスナーともロックのリスナーとも、ちょっと雰囲気が違うんですよね。
TAIRIKU あくまで漠然とした印象なんですけど、ジャンルに関わらず音楽そのものが好きで、新しい世界があると知ったら好奇心旺盛にどんどん足を踏み入れていって、世界を広げていくようなお客さんが多いように感じます。例えば、僕がTSUKEMEN以外の場所で誰かと共演したりするじゃないですか。すると、そこに来てくださったTSUKEMENのファンが、次はその共演者のライブに行ったりとか。すごくアクティブに音楽を楽しむ方々なのではないでしょうか。
──なるほど、本当にいいファンに恵まれていますね。逆に、この音楽ナタリーの特集で初めてTSUKEMENの存在を知る方もたくさんいると思います。自分たちのことをまったく知らない人に、自分たちの音楽を説明するとしたら、どんなことを伝えたいですか?
TAIRIKU どうしてもクラシックの楽器、バイオリンとかピアノとかって難しいイメージがすごくあるので、「難しくないよ」ということをまずは言いたいですね。TSUKEMENの音楽をちょっとでも聴いてくださったら、すぐに難しくない、敷居は高くないことがおわかりいただけると思うのですが、その一歩目を踏み出すのがなかなか……という感じなのでしょうね。まずはとにかく、気軽な気持ちでライブに来ていただけたら。
KENTA ライブ会場で配るアンケートに、「3人がすごく楽しそうに演奏しているのを見て、一緒に楽しい気持ちになった」と書いていただくことがよくあるのですが、やっぱりそこって、僕らが一番伝えたいことの1つだと思うんです。難しいと思われがちな楽器編成だけど、「音楽ってこんなに楽しいんだよ」とみんなに感じてもらうことが、TSUKEMENの存在意義と言うか、目指していることですからね。
SUGURU ロックやポップスが好きな人にとって、僕らの音楽って歌詞がないことが最大のネックだと思うんですよ。やっぱりロックとかって、「こいつの叫びはなんだ」というところを聴きたいわけじゃないですか。でも僕らにも、歌詞こそないけれど、伝えたいことはあるわけで。曲を作っているときの思いや考え、こうなってほしいなという願いなどを、ライブではMCで話したりもしています。なので、ただ聴くだけのコンサートじゃないっていうことは伝えたいですね。そしてロックやポップスのファンにライブに来ていただいて、一緒に楽しむ方法を教えていただきたいんです。僕らはお客さんに参加してもらうことに対してまだまだ素人なんで、今めっちゃ勉強しているんですよ。
KENTA そうそう。「こういうふうに参加してみたかった」とか「ここの合いの手はこうしたほうがいい」とか、いろいろアドバイスをいただけたら。
──そういう意味でも、バンド編成の曲を出したことで、新たなファンとの出会いもありそうですね。
TAIRIKU そうなったらいいですね。あとは、ライブでしか絶対に味わえない空気感は間違いなくあるので、CDやYouTubeなどで聴いていただくのも第一歩としてはすごくうれしいですが、ライブに来て、僕らと一緒に共有する喜びを味わっていただけたら、きっと何か心に残るものがあると思うんです。
SUGURU それは必ずあります!
TAIRIKU バイオリン2本とピアノという編成はすごく珍しいのですが、一昔前だったら、人と違うことをしようとすると「空気読めよ」とか「人より飛び出すな」とか言われるような雰囲気でした。けれどここ数年、2016、7年ぐらいからかな、潮目が変わってきたように感じるんです。何か一生懸命に旗を掲げてがんばろうと思う人のもとに、人が集まってくるような、そういう時代にちょっとずつなってきたんじゃないかなと思っていて。だから僕らの姿を見て、「ああ、こんな変わったグループもいるんだ。人と違うけどがんばってるんだ」と少しでも勇気付けられて、「自分もがんばろう」と思ってもらえたら、それはもう最高に幸せです。
まさに今がターニングポイント
──今年は結成10周年ですが、これまでの10年を振り返ってみて、「今思えばここがターニングポイントだった」と思うような出来事はありますか?
TAIRIKU ありますね。今ですね、まさに今!
SUGURU 僕も、たぶん今が一番の転機になる気がしています。これまでにもいろいろなポイントがありましたが、今後TSUKEMENがどんなふうに生きていくか、生き残っていけるかという分岐点は、まさに今だと思うんで。
KENTA やっぱりバンド編成にチャレンジしたのは、自分たちの中では一番とも思える大きな変化で。今まで10年、ずっと生音のスタイルでやってきて、それでこそ積み上げられた経験はもちろんあるのですが、ここにきて変化を起こしたいと思ったんですよね。軸を変える必要はないかもしれないけれど、何か新しいことに能動的に取り組んでいかなければと思いはじめたのが去年で、それが今年になって具現化して、来年に向けてその結果が出てくるという。ここ2、3年は変化の年ですね。
TAIRIKU 自分たちの投げかけたものが、世間でどんなふうに受け止められるのか、どんな反応が出てくるのか。アルバムのリリースを控えた今は、やれることをやってあとは待つのみ、みたいな心境ですね。
──バンド編成の曲は、ライブではどのようなアレンジになるのでしょう?
KENTA 基本的にはバンド編成の曲も、3人で演奏できるようにはしてあるので、4月後半から始まる全国ツアーでは、まずは今までの自分たちのスタイルでやっていくつもりです。いつかバンド編成でもライブができたらいいなと思っています。
──3人以外の世界が開けた今、これからは、ほかのアーティストとのコラボレーションの機会も増えそうですね。
TAIRIKU そうですね、僕ら今まで鎖国していましたから(笑)。
SUGURU ほぼ9年間、鎖国してた(笑)。
TAIRIKU ちょいちょいペリーが来るんだけど、まったくその船に乗らず、海岸から「いつかー!」って叫んでましたからね。
──ひとたび開国したらすごそう(笑)。
SUGURU これからは、どんどんコラボしていきたいです。やっぱり自分と違う考えの人と一緒に何かやってみるのは、すごく得るものが大きいですよね。
TAIRIKU 人とのコラボレーションで生まれる化学反応みたいなものが、やっぱり一番面白いですね。
SUGURU めっちゃ疲れますけどね。「なんじゃこりゃ?」みたいな、「果たしてこれ、今うまくいってるんだろうか?」みたいなコラボもありますが、あとで振り返ったときに、何かしらちょっとでも結果が残っていればいいと思うので。
KENTA 去年初めてギタリストの押尾コータローさんをゲストにお迎えして共演したり、今年の1月には三味線奏者の上妻宏光さんと共演したり、少しずつ形になってきてはいます。今回のアルバムでも、初めてお願いするアレンジャーさんやバンドのメンバーもいて、新しい出会いを日々体験していく中で、いろいろなことを吸収していきたいです。
──ボーカルが入るのもアリですか?
TAIRIKU 全然アリですね。歌詞を付けたらぴったりハマるようなメロディの曲もあるので、いい出会いがあったら!
──来年の今ごろ、皆さんがどのようなステージに立っているか、楽しみにしています。
一同 がんばります!
- TSUKEMEN「X」
- 2018年4月18日発売 / KING RECORDS
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[CD]
3000円 / KICC-1454
- 収録曲
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- WINNING RUN
- 雨ノチ晴レ。
- 虹を見上げて
- Volcano
- YUZARI
- Shine!
- Continue Forever
- 金木犀~追憶のカケラ~
- Sparking!!
- SHINGEKI
- KYOSAKU
- 世界で一番遠い君へ
ライブ情報
- TSUKEMEN LIVE 2018 "X"
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- 2018年4月21日(土)長野県 軽井沢大賀ホール
- 2018年4月22日(日)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
- 2018年5月3日(木・祝)神奈川県 鎌倉芸術館 大ホール
- 2018年5月26日(土)福井県 福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくい 小ホール
- 2018年5月27日(日)石川県 北國新聞赤羽ホール
- 2018年6月2日(土)千葉県 青葉の森公園芸術文化ホール
- 2018年6月3日(日)埼玉県 和光市民文化センター サンアゼリア 大ホール
- 2018年6月30日(土)東京都 東京オペラシティ コンサートホール
- 2018年7月7日(土)長野県 松代文化ホール
- 2018年7月8日(日)長野県 松代文化ホール
- 2018年7月14日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
- 2018年7月15日(日)宮城県 日立システムズホール仙台 コンサートホール
- 2018年7月29日(日)兵庫県 神戸新聞 松方ホール
- 2018年8月25日(土)静岡県 アクトシティ浜松 中ホール
- 2018年9月1日(土)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2018年9月2日(日)山口県 DREAM SHIP(下関市生涯学習プラザ)海のホール
- 2018年9月29日(土)岡山県 岡山市民会館
- 2018年9月30日(日)島根県 島根県民会館 中ホール
- TSUKEMEN(ツケメン)
- TAIRIKU(Violin)、KENTA(Violin)、SUGURU(Piano)の3人によって結成されたインストゥルメンタルユニット。2008年12月開催の東京・サントリーホール ブルーローズ公演でコンサートデビューし、2010年3月にはキングレコードよりアルバム「BASARA」でメジャーデビューを果たした。メンバー全員が音楽大学出身で、それぞれが作曲を手がけている。コンサートではマイクやスピーカーなどの音響装置を通さない、生音にこだわった演奏を展開。日本のみならずアメリカ、韓国、ドイツ、オーストリアなど世界各国でも公演を行っている。結成10周年を迎えた2018年の4月には、J:COM TVでグループ初のレギュラー番組「TSUKEMEN TV」 の放送が開始。同月18日にはニューアルバム「X」をリリースする。