シンガーソングライター・ツチヤカレンが4thデジタルシングル「ハミングバード」を4月27日にリリースする。
高校時代にバンドのドラマーとして音楽活動をスタートさせたツチヤは、2020年からオリジナル楽曲の制作を始め、2021年に「エンドロールロール」「優しさ」の2曲を配信リリースした。今年に入ると自主レーベル「晴天音盤 Harenohi Record」を立ち上げ、2月に「純情通り」を発表。また彼女は、カネボウのメイクアップブランド「KATE」CMソングの歌唱や、アパレルモデルとしての活動、テレビ神奈川「関内デビル」内のコーナー「カレンちゃんとシンゲンくん」への出演などでも注目されている。
音楽ナタリー初登場となる今回は、ツチヤ本人と「純情通り」「ハミングバード」のアレンジ / プロデュースを手がけたsugarbeansの両名にインタビュー。楽曲制作にまつわるクロストークを通して、彼女の持つ魅力的な音楽性を紐解いていく。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 本田龍介
コンプレックスだった自分の声
──まずはツチヤさんの音楽遍歴から伺わせてください。最初はドラマーとして音楽を始めたそうですね。
ツチヤカレン はい。高校生のときに村石雅行さんという方のドラムレッスンを受けていて、そこでかなりしごいてもらったことで私の音楽人生が始まりました。高校時代からずっとバンドをやっていたんですけど、4年くらい活動した段階でバンドを脱退して。一旦は音楽から離れてバイト生活になるんですよ。でも、あまりにも暇だったので、今度は家にたまたまあった6000円くらいのアコギを触り始めて。そこからだんだんオリジナルの曲を作るようになり、シンガーソングライターとしての活動を始めました。
──音楽的なルーツはどういったアーティストになるんですか?
ツチヤ バンドをやりたいなと思ったきっかけは、小学生の頃によく聴いていたBUMP OF CHICKENですね。ずっとロックなサウンドが好きでした。ただ、シンガーソングライターとして活動するようになってからはフォークの魅力に気付くようになって。今の自分のルーツというか、もっとも好きなアーティストは森山直太朗さんとハンバート ハンバートさんです。特に森山さんは自分にとって一番尊敬する人ですね。
──2020年にシンガーソングライターとしての活動を本格的に始めて、その翌年には「エンドロールロール」「優しさ」という2曲を配信リリースするなど、精力的な活動を続けていますね。
ツチヤ 「エンドロールロール」を出してから1年弱が経ちますけど、最近はちょっとずつ気持ちの変化が芽生えてきているところもあって。当初はひたすら楽しいという感情だけで曲を作っていたんですけど、最近は「自分はどういう歌詞を書きたいのか?」みたいな自問自答をするようにもなって。シンガーソングライターっぽい悩みが出てきてますね(笑)。友達のライブを観に行くと、自分と比較して悔しさを感じることも増えているので、もっとよくなりたいという感情が、音楽をするうえでのモチベーションになってきているのかもしれないです。
──なるほど。今年2月に配信された「純情通り」と最新曲「ハミングバード」でアレンジとプロデュースをsugarbeansさんにお願いしたのは、そういったアーティストとしての気持ちの変化に起因したものだったんでしょうか。
ツチヤ そうですね。もともとは自分らしく音楽を作っていればなるようになっていくんじゃないかなという考えもあったんですけど、いいご縁によってsugarbeansさんと出会うことができて。鍵盤とドラムを演奏できるsugarbeansさんは、自分にとってすごく新鮮な存在だったんですよ。しかも、ソロでやられている楽曲はどれも個人的にめちゃくちゃ好きなタイプのサウンドだし、同時に私の曲にもマッチしそうだなと思ったんです。なので、ワクワクする気持ちでプロデュースをお願いすることにしました。
sugarbeans 僕としては、活動を始めたばかりの人をプロデュースすることが今まであまりなかったので、純粋にすごく楽しみでしたね。カレンちゃんは声が特徴的ですごく素敵。そこを生かしたアレンジ、プロデュースをしたいなという欲がすぐ湧いてきました。
ツチヤ ありがとうございます。私、もともとは自分の声がずっとコンプレックスだったんですよ。明らかに周りの子とは違う声だったので、学生時代は「もっとかわいい声に生まれたかった!」とずっと思ってました(笑)。
sugarbeans へえ! そうなんだ。
ツチヤ でも、バンドをやってるときに近しい人たちから「せっかく声がいいんだから歌えばいいのに」と言われるようになって。で、シンガーソングライターとしていざ歌ってみると、もともと歌うことがすごく好きだったのもあって、今までコンプレックスだった自分の声がだんだん長所に思えるようになってきたんです。
sugarbeans うん、そこは本当に大きな魅力だと思いますよ。
私の曲のことをちゃんと考えてくれているんだな
──制作は具体的にどのように進んだんですか?
ツチヤ 現状、殴り書きみたいなものも含めると、ストックが70曲くらいあるんですよ。そこから今回は、以前に出した「優しさ」に近い雰囲気のあるバラード「純情通り」と、私のフォーク好きな部分が見える「ハミングバード」の2曲を選んで。sugarbeansさんらしい雰囲気に仕上げてもらったら絶対にいい曲になるだろうなと思ったんですよね。
sugarbeans 最初に2曲のデモをいただいたんですけど、アレンジの方向性に関してはあまり細かく話したりしなかったですね。基本、僕にお任せしていただけたので、自分なりのイメージでアレンジを作っていきました。
ツチヤ sugarbeansさんは私好みの音楽を作られている方なので、そこへの信頼感、安心感がありましたからね。だから音のオーダーなどは、ほぼ何もお伝えしなかったです。歌詞と弾き語りの音源をお渡ししたぐらいで。
sugarbeans 歌詞から受け取るイメージはもちろんあったんですけど、具体的なヒントがこれといってなかったのでけっこう難しかったです(笑)。ただ、あまりいろいろな色を付けるというよりは、カレンちゃんのそのままのよさが出るといいなとは思っていたんです。なので、どちらも比較的ナチュラルな雰囲気を大事にしたつもりです。
ツチヤ 仕上がったアレンジをいただいたときは感動しましたよ、めちゃめちゃよくて。私の曲のことをちゃんと考えてくれているんだなって、音からしっかり伝わってきました。
優しい気持ちになれる曲を作りたい
──「純情通り」は音数も少なくすごくシンプルなアレンジになっていて。だからこそツチヤさんの歌詞や歌の魅力がより鮮明に伝わってくる仕上がりです。
sugarbeans 「純情通り」は歌詞が本当にいいんですよね。今現在のカレンちゃんならではというか。そんな言葉選びの魅力のような部分を、それぞれの楽器の音につなげてアレンジしていきました。あまりきらびやかにはせず、訥々と思いを語っているように聞こえればいいな、という。それにしても「誰か殺してくれればいいのに」という歌詞はすごいよね(笑)。
ツチヤ あははは、そうですね(笑)。
sugarbeans そのフレーズに強いインパクトがあったので、音的にもそこでハッとさせるようにしたところがありましたね。
ツチヤ 私はけっこう気分の浮き沈みが激しいタイプなんですけど、基本的には気持ちが落ちているときには曲を書かないようにしているんです。聴いて元気になれる、優しい気持ちになれる曲を作ろうというのが自分なりのコンセプトではあるので。ただ、この「純情通り」ではあえて自分のネガティブな部分を書いてみようと思ったんですよね。人がいない時間帯の商店街を歩いているときに思ったことを素直に書いていって。
sugarbeans すごくいい歌詞だと思いますよ。あと僕が感じたのは、曲の構成がけっこう特徴的ですね。“A→B→C、A→B→C”という一般的な流れになっていないのが面白いなと思って。それはきっとセオリーみたいなことをあまり考えず、自由に曲を作っているからだと思うので、アレンジでもそういう部分を生かすことは考えました。
ツチヤ ほかの曲でもそうなんですけど、基本的に1曲の中で構成が大きく変わることが多いんですよ。“A→B→サビ”という構成の曲を作るときもありますけど、どうしても違う展開が欲しくなっちゃって。急に変なメロディを入れてみたりするっていう(笑)。
──1曲の中で飽きさせないための工夫なんですかね?
ツチヤ そうだと思います。ドラムをやっているときもつい展開を変えたくなっちゃいますからね。「ずっと8ビートじゃつまんないから、ここはハーフにしちゃえ」とか。普段、音楽を聴いているときも、「あ、ここでサビに行かないんだ」とか、変な裏切りのある曲にグッとくることが多いので、自分の曲でもそういうポイントを作れるようにがんばってますね。
──ピアノと歌だけで始まるイントロもいいですよね。曲の世界にグッと引き込まれる感じがあって。
sugarbeans そういえば、「ピアノと歌で始まる曲にしたい」というのは最初に言われたんですよ。カレンちゃんはギターを弾きながら歌っているイメージだったので、「へえ、ピアノなんだ」と思った記憶があります。
ツチヤ ピアノの音が好きなんですよ。自分ではまったく弾けないんだけど、実はピアノで弾き語りしたいと思ってるくらい好き(笑)。「純情通り」は“冷たさ”がメインテーマになっている曲なので、歌い出しはピアノの音がよかったんですよね。アコギの音だとちょっと温かみがあるけど、ピアノはどこかクールなイメージがあるので。そこは自分の感覚的なところなんですけど。
sugarbeans その感覚は面白いなあ。
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