東京スカパラダイスオーケストラデビュー35周年記念|インタビュー&「スカパラ甲子園」ゲストによるプレイリスト (2/3)

ずっと変化し続けるのがスカパラ

──ベストアルバムの選曲は茂木さんが担当したそうですね。

茂木 前回のベスト盤も選曲させてもらってたんだけど、今回はそれとは違うものにしなきゃいけないから、新しい曲から順に歴史をさかのぼっていこうと思ってね。タイトル(「NO BORDER HITS 2025→2001」)が最初に浮かびました。

加藤 歌モノのシングルが中心になってるけど、スカパラの歌モノって独特なんですよ。まずホーンのテーマがあって歌の合間にしっかりソロもあって、サビも歌と同じメロディをホーンで吹いてたりする。実はホーンが主役になってるというか。

加藤隆志(G)

加藤隆志(G)

──確かにどの曲もホーンのフレーズが耳に残ります。

加藤 今の世の中は音楽の聴き方が歌中心になってきてると思うんです。そんな中で楽器の音の楽しさを伝えていくのはスカパラの役目なのかなって。

──時代をさかのぼっていって、最後に歌モノの新曲「まだ、諦めてないだろ?」が入る構成もいいですよね。

茂木 「36年目からどうすんの?」ってタイミングで「まだ、諦めてないだろ?」だもんね(笑)。この曲はNARGOがリードボーカル。35年やってるバンドの中で新たなボーカリストが登場したわけで、これも新しいチャレンジだと思う。

NARGO 「急に歌い出してあいつどうした?」ってなりますよね(笑)。でもスカパラは初期からずっとそういうバンドだったと思うんです。例えば、パーカッションをやってた人がサックスに変わったり(冷牟田竜之)、トランペットを吹いてた人がフロントマンになったり(クリーンヘッド・ギムラ)。そういう模索を繰り返してきた集団だと思うんで、僕の中にも自分を型にはめちゃいけないなって気持ちがあった。それで「歌っていいですか?」って手を挙げてボイトレも始めたりして。それによってまたバンドが違う形になるかもしれない。じゃあちょっと本気でやってみようかなって。

──そのチャレンジ精神がスカパラですよね。

NARGO 35年経ってもずっと変化し続けて、そのときベストだと思うものを探し続ける。スカパラはそうじゃなきゃいけないって思うんですよね。

茂木 俺も最初に「銀河と迷路」を歌ったときには「え、あいつ? ドラムが歌うの?」となってたわけで。バンドをやってて1つの形を見つけたとしても、そこにとどまってちゃいけない。それだと遠くの未来が見えなくなるからね。

茂木欣一(Dr)

茂木欣一(Dr)

笑顔に満ちた「スカパラ甲子園」

──そして今回のベストアルバムには昨年11月のライブ「スカパラ甲子園」の映像も収録されます(CD+Blu-ray盤 / CD+DVD盤)。あの日の甲子園球場は本当にいい空間でしたね(参照:スカパラ初のスタジアムライブ「スカパラ甲子園」豪華ゲストと4万人が“ベストナイン”の35周年祝った日)。

茂木 だよね! いまだに現実感が薄いんだけど。

NARGO まだ引きずってますよね。

──ライブ序盤から谷中さんが感極まっているのが伝わってきました。

谷中 あんな状況で冷静でいられる人間は普通じゃないですよ(笑)。

加藤 MVPはやっぱり谷中さんだよね。総合司会じゃないですけど、あのメンバーをまとめてムードを作ってくれた。4万人を前にしてあのMCができるのはホントにすごい。空気もめっちゃ和んだし。

谷中 「35年」を「25年」と言っちゃって大失敗した!と思ったけど、あとから映像を観たらスカパラのメンバーがそこでめっちゃ笑顔になってたんだよね。

NARGO あの瞬間、一気に普段の感じに戻りましたよね。

──わかります。客席の雰囲気もすごくよかったですしね。

NARGO うん。もっと緊張すると思ってたけど、お客さんの笑顔がホントに温かくて。包み込むような“気”が会場に充満してた。ステージ出た瞬間にすごく気持ちいいな!って感じました。

NARGO(Tp)

NARGO(Tp)

──内容的にはスカパラ35年間の集大成というか、集まったいろんなタイプのお客さんを全員楽しませるぞという心意気を感じました。

谷中 ライブ本編は35周年になぞらえて35曲。体力的にもよくやったよね。

NARGO セットリストは加藤くんが考えてくれて。

加藤 とにかくベストなものを見せたくて、どの曲を入れるかフェスや自分たちのライブで少しずつ試しながら。オープニングから4曲目くらいまでの流れは「もうこれしかないな」ってすぐ決まったけど、「天空橋」とかが急に育ってきたのは予想外だったかな。

NARGO みんなで手を振ったりしたら面白いんじゃない?と言って沖さんや大森(はじめ)さんが煽る形になってから、眠っていた曲が急に動き始めたんですよね。

加藤 あとは「Burning Scale」とか「Sweet G」みたいな1990年代中期の楽曲も外せなかったし、NARGOさんボーカルの「ウタカタラッタラ」も聴いてほしかった。あれもこれも削れないって思いながらこの1年間ずっと考えてました。

47都道府県ツアーは“お礼参り”

──35周年で大規模なライブをやって新録入りのベスト盤も出して、これだけやったら普通はしばらく休むと思うんですが。

茂木 そうだよね、俺もそう思う(笑)。

NARGO 「ちょっと1カ月くらいハワイに行こうか」みたいな、普通はそういうモードに入るのかもしれないけど。

──でもスカパラは長期休暇を取らず、ずっと動き続けているんですね。

加藤 一応この正月に1週間くらいの休みはあったけどね。

NARGO それも数年ぶりだよ。こんなに楽器に触らなかったのはデビューしてから初めてだったかも。

加藤 俺は犬の散歩くらいしかやることなくてだんだんムズムズしてきて(笑)、演奏してたほうがいいやって。

谷中 やっぱりみんな音楽が好きなんだよね。

谷中敦(Baritone Sax)

谷中敦(Baritone Sax)

──そして5月には47都道府県を巡る全国ツアーが始まります。

加藤 そう、ライブ以外にやることがないんですよ(笑)。

──でもスカパラくらいキャリアのあるバンドが全国をここまで細かく回るツアーをやるのは珍しいですよね。ビジネス的なことを考えれば大都市の大きい会場だけでやるほうが効率はいいわけで。

一同 あはははは。

NARGO だからこれは“お礼参り”なんですよ。甲子園にみんな集まってくれたから、今度は僕らがみんなのところに行きますってことで。

茂木 アミューズメントパークはその場に行かないと楽しめないけど、僕らは移動できるからね。

加藤 今年のツアーは絶対楽しいですよ。NARGOさんが歌い始めたり、去年からSUPER EIGHTの曲を9人で歌い分けてやってたり、新しくできることがうんと増えていってるんで。それに最近は親子で来てくれる方が多くなってて、そういうのもすごくうれしいんです。とにかくスカパラの音楽を生で浴びに来てほしい。ホーンの音色を聴くと絶対元気になるはずなので。

左から谷中敦(Baritone Sax)、NARGO(Tp)、茂木欣一(Dr)、加藤隆志(G)。

左から谷中敦(Baritone Sax)、NARGO(Tp)、茂木欣一(Dr)、加藤隆志(G)。

──全公演ホール会場になってるのは親子で来るファンへの配慮もあるんですね。

茂木 うん、2世代3世代で来てほしいからね。

──35周年の余韻に浸る間もなく、36年目も忙しくなりそうですね。

加藤 目の前のことを一生懸命やってるだけで、5年後のこととかあんまり考えてないからね。まずは今年をがんばります。

谷中 今をがんばることが未来だなと思ってやってます。自分たちを型にはめない、限界を決めないってことがすごく大事だと思うんですよね。