ナタリー PowerPush - TRUNK
結成12周年のすべてを絞り出した 勝負の新作「SQUEEZE」
「誰もが人生という旅の旅人であり、その旅人のトランクとなって歌を届けていきたい」という思いから命名されたアコースティックデュオ・TRUNK。2001年の結成後、大阪や広島の路上ライブで実力を身に付け上京してきた彼らが、3年3カ月ぶりのニューアルバム「SQUEEZE」を10月にリリースした。ナタリー初登場となる今回は、2人の出会いから路上ライブでのエピソード、新作に込めた思いまでたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 大谷隆之 写真 / 小原泰広
出会いは高校の野球部
──まずは3年3カ月ぶりのニューアルバム「SQUEEZE」のリリース、おめでとうございます。
一同 ありがとうございます!
──新しいレーベルに移籍して心機一転。アレンジから歌詞の内容まで、いろんな意味でチャレンジが伝わってくる内容ですね。
新井寿光(G, Vo) そう感じてもらえるとうれしいです。この3年は僕らにとって本当に大きかったんですね。活動拠点を大阪から東京に移して、いろんな出会いもあって。
小山貴彰(Vo) 今回のアルバム発売とほぼ同じタイミングで結成12周年を迎えたんですけど、今現在のTRUNKが詰まった作品になったかなと。
──確かにどの収録曲にも、新たな一歩を踏み出そうという気概があふれていますね。今回はナタリー初登場でもあるので、まずはこれまでの活動を振り返ってみたいと思います。そもそも2人はどこで出会ったんですか?
新井 同じ高校の野球部やったんですよ。公立だったんですけど、スポーツが盛んで野球もかなり強かった。で、入部して最初にケンカしたのが小山です(笑)。
小山 入って数カ月後の合宿でね。消灯時間を過ぎても、新井が友達とトランプしながらワーワー騒いでて。僕が「うるさいで!」って怒ったら、つかみ合いの大ゲンカになった(笑)。
──15歳っぽいですね(笑)。でも最初にケンカした相手って、不思議と仲良くなりません?
小山 はい、結果的に一番仲良くなりました。
──ステージ上では、小山さんの気のいいトークに新井さんがガンガンツッコミを入れて笑いを取っていますが、2人の関係性は高校時代からあまり変わってない?
新井 そうですね。僕は昔から、思ったことをどんどん言っていくタイプで。よく言えば行動力があるし、悪く言えば後先をほとんど考えない。極端な話、思い立ったら「決めた、明日から東京で活動するで!」みたいな感じなんで。
小山 高校に入るまでは僕も、自分ではけっこう我の強い人間やと思ってたんですよ。でも新井と出会って、「アカン、こいつはレベルが違うわ」と感じて(笑)。それで多少聞き役というか、ツッコまれる側に回った部分はあるかもしれませんね。
──ちなみに高校時代の野球部でのポジションは?
新井 2人ともピッチャーでした。
小山 僕は小学校時代からずっと。新井は高1のとき、内野手からピッチャーに転向したんです。こいつ、入学直後は小柄でめっちゃ非力やったのが、背が伸びると同時にどんどん球が速くなって。びっくりしました。部員100名以上の大所帯やったけど、最後はチームで一番速かったもんな。
新井 うん。あの頃は137キロで放ってた。負けず嫌いというか、闘争本能だけは強いんで性格的に向いてたのかもしれませんね。球種はストレートしかなかったけど(笑)。
高校3年の文化祭で初ライブ
──2人とも野球一色の高校生活だったと。その頃は2人でアコースティックデュオを結成するとは……?
小山 まったく! 夢にも思ってなかったです。
新井 ただ僕らがいた野球部って、みんな歌が好きで。マンガみたいなんですけど、誰かが部室で歌い出すと、すぐに100人くらいで大合唱になってたんですよ。当時流行っていたMr.Childrenさんとか、ゆずさんとか。
小山 そうやった。
新井 初めて小山の歌をちゃんと聴いたのは、部活を引退した高3の夏。GLAYさんの「Winter,again」やったんですけど、そのとき「こいつ、ホンマにうまいな」と思って。
小山 それ、僕もよく覚えてます。初めて新井が歌うのを聴いて、「特徴あって、すごく耳に残る歌声やな」と思いました。当時僕は趣味でアコースティックギターを弾いていたので、「一緒に文化祭に出えへんか?」と誘ったんです。
新井 僕はギターなんて触ったこともなかったので、最初はCのコードも押さえられませんでした(笑)。でもなんとか練習して、Mr.Childrenさんの「Tomorrow never knows」を演奏したんですね。
小山 そしたらまた、そのステージがメチャメチャ受けたんですよ。何組か出演したんですけど、僕らだけ嘘みたいに評判がよかった。正直言うと、僕は野球では新井みたいに結果を出せていませんでした。中学までは生まれ持った能力だけでそれほど努力しなくてもレギュラーになってたんですけど、高校ではそうはいかなくて。初めて挫折を味わったんです。それが文化祭で、単なる思い出作りのつもりで新井を誘ったら、思いがけず周囲から認められて……。
新井 僕のほうも、変に火が付いてしまったんでしょうね。そこからはギターを猛練習するようになりました。毎日、家に帰ったらすぐ近所の河川敷に行って、朝までいろんな曲をコピーして。ただそのときは音楽で食べていこうとは微塵も思ってませんでした。
──その時点ではまだ、新井さんは野球の道に進もうと?
新井 はい。実際、大学にも野球推薦で入りましたし。英語も勉強して、将来的には海外で野球を続けられたらいいなっていう夢を見ていました。メジャーとは言わないまでも、なんらかの形でね。そしたら大学2年の秋頃にひさしぶりに小山が連絡をくれて。また2人で歌わないかって誘われまして。
小山 僕は大学では野球もせず、空っぽになっちゃった感じがしていたんです。高3の文化祭の感動も忘れられなかったし、ぜひまた一緒に歌いたいなと思い、強引に口説きました。
新井 僕も面白いかなと思って。それで野球をしながら、週に1回くらい遊びで路上ライブを始めたんです。
収録曲
- キラキラ
- 同じ月を見つめてる
- スニーカー(squeeze mix)
- Flying to you
- ガーンとやってみよう
- 一歩
- シアワセノカギ
「SQUEEZE」発売記念ワンマン
- 2014年2月23日(日)大阪府 knave
OPEN 16:30 / START 17:00 - 2014年3月1日(土)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
OPEN 17:30 / START 18:00 - ※チケットの一般発売は12月14日(土)スタート
TRUNK(とらんく)
小山貴彰(Vo)と新井寿光(G, Vo)による関西ストリート出身のアコースティックデュオ。2001年11月13日に結成し、大阪や広島での路上をライブ中心に活動を行う。2010年自主制作の1stアルバム「Another future」を発売。2011年に上京後、原宿アストロホール、Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE、渋谷duo MUSIC EXCHANGEなどでワンマンライブを行う一方で、ストリートライブも精力的に行う。2013年10月にFILよりアルバム「SQUEEZE」をリリース。