ナタリー PowerPush - 小室哲哉、20年目の再プロデュースtrfを語る

祝20周年!今明かされる革新的ユニットの歩み

どちらでも大丈夫なように「ベル」

小室哲哉

──小室さんの作詞法もすごく気になります。歌詞は、例えば1行1行ひねり出していくという感じなんですか?

違いますね。もう文節というか、Bメロまるまる1つの塊として。

──パラグラフで出てくるんですね。

字面もありますけど。全部ペンを持って手で書きます。キーボード打つのはやっぱりダメなんですよね。あと、これは詞と曲をどっちも作ってる人間だからやっていいことなんですけど、僕の場合はいい言葉が塊で出てきたときに、それを優先できるんですよ。降って湧いてきた言葉に対してメロディラインを変えることも自由だし、後ろにあるトラックも「そうなったらじゃあこっちはやめて、こっちの音に」と操作できる。この三位一体を1人で処理できてしまうので「これを使いたいんだけど譜割りが」とか「音程が上がってるからこの単語は使えない」っていう苦労はないですね。そこは非常に助かる。

──なるほど。詞の内容は、その時代の空気をうまく切り取っているという印象があるんですがご自身では意識されてますか?

うーん……。その時代やブームを感じさせるところと、時代に関係ない普遍的なところか。よく例に出てくる、湯川(れい子)先生が書いた「恋におちて -Fall in love-」の「ダイヤル回して 手を止めた」っていう表現は、いい点と悪い点の両方ありますよね。その時代を象徴している言葉でもあるし、ダイヤルどころかプッシュでさえ番号を入れない今の時代では通じないことにもなる。僕の場合はこれがたまたまどっちでもないというか、どっちにしなきゃって考えたことがあまりないかもしれないです。

──そうなんですか。

今パッと浮かんで、そういえば「どちらでも大丈夫なように」って考えたなっていうのは、安室(奈美恵)さんになっちゃいますけど「SWEET 19 BLUES」の「ベルを鳴らして」っていうフレーズ。あのとき、ちょうどポケベルと携帯電話と固定電話の3つがあった時期で。「ベル」なら、ケータイでも大丈夫だろう、ポケベルでも大丈夫だろうと。だからその前に何も付けず「ベル」だけにしたんです。

──そうなんだ! あそこは考えて「ベル」だったんですね。

あくまでも例ですけど、そのときは考えましたね。あとは自然と湧いてくるものです。口語体だったりするのもそう。普通に話す場合、そんなにいきなり本題に入らないとか、何か必ず「えーと」なり「あのさ」なり「だから」なり。

──ええ、クッションワードを入れますよね。

それはため息でもなんでもいいんですけど。生身の人間ですから、当然機械のように続けざまに等間隔でしゃべれるわけがないので、それは詞にも表れてると思います。

本当に感謝したい存在

30thシングル「Live Your Days」(CD+DVD盤)

──trfのことも小室さん個人のことも貴重なお話をたくさん聞けた気がします。最後に、今の小室さんにとってtrfはどんな存在ですか?

僕の頭で考えていることを、体を使って表現して、エンタテインメントに昇華してくれる人たちが5人揃っていてくれる。これは本当、ちょっと神がかっているというのに近いと思いますね。本当に感謝したい存在です。

──長い付き合いの中で感じる、彼ら5人の魅力というのは?

いい音を聴かせたときに、無理なく素直に「いい」って言ってくれる5人なんですよね。どちらかと言えば全員シャイなはずなんですけれども(笑)、音が出た瞬間のあの素直さ、喜び方、笑顔には、ダンサーでもないしシンガーでもないしDJでもなく、1人の人間としてのパーソナリティを感じるんです。僕も聴いてもらうときはドキドキしてるので。今回もみんなに「音源届いたかな」っていう電話を入れてるんですけど、そのときの開口一発のトーンが、一番僕を喜ばせてくれるというかホッとさせてくれるんです。そういう才能がある人たちです。

trfミニアルバム「WATCH THE MUSIC」2013年2月25日発売 / avex trax
「WATCH THE MUSIC」CD+DVD盤 [CD+DVD] 2940円 / AVCD-38579/B
「WATCH THE MUSIC」CD盤 [CD] 2415円 / AVCD-38580
CD収録曲
  1. ShowTime(4 Executive Seats)
  2. PUSH YOUR BACK
  3. arigatow
  4. Because of U
  5. LOVE is like a candle light
  6. Watch the Music
  7. EVERYDAY
DVD収録内容
  • PUSH YOUR BACK Original Version(ビデオクリップ)
  • PUSH YOUR BACK Dancer's Edition(ビデオクリップ)
  • PUSH YOUR BACK Promercial Version(ビデオクリップ)
  • Because of U(ビデオクリップ)
V.A.「「TRF TRIBUTE ALBUM BEST」2013/03/13発売 avex trax / [CD2枚組] 3150円 / AVCD-38676~7
V.A.「VOCALOID3 meets TRF」2013年3月27日発売 / avex trax / [CD] 2625円 / AVCD-38678
小室哲哉ソロアルバム「DEBF3(Digitalian is eating breakfast 3)」
2013年3月6日発売 / avex trax / [CD2枚組] 3500円 AVCD-38667~8
TRF(てぃーあーるえふ)

YU-KI(Vo)、DJ KOO(DJ、サウンドクリエイター)、SAM(ダンサー)、CHIHARU(ダンサー)、ETSU(ダンサー)の5人からなる音楽ユニット。1993年に小室哲哉のプロデュースにより、trf名義でシングル「GOING 2 DANCE」、アルバム「trf ~THIS IS THE TRUTH~」にてデビューを果たす。90年代中盤には「survival dAnce ~no no cry more~」「BOY MEETS GIRL」「CRAZY GONNA CRAZY」「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」など、数々のミリオンヒットを生み出す。1996年からユニット名を現在のTRFに変更。また1998年より小室プロデュースを離れ、独自のスタンスで活動。各メンバーはソロ活動や、他アーティストの振り付けなども行っている。2012年11月にはベストアルバム「trf 20TH Anniversary COMPLETE SINGLE BEST」をリリース。これを皮切りに連続リリース企画をスタートさせ、2013年2月にデビュー20周年を迎えた。

小室哲哉(こむろてつや)

1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。83年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、84年に「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花。93年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイクした。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒット。2010年、作曲家としての活動を再開。AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供している。