豊崎愛生|こんな世界だからこそ届けたい、幸せいっぱいのアルバム

「幸せ歌」の第2弾

──作詞が田淵智也さん、作編曲がミトさんというタッグによる1曲目の「それでも願ってしまうんだ」は、もともとリードトラック前提でオファーした楽曲なんですか?

いえ、オファーする段階ではどの曲をリードにするかは決めてなかったです。でも去年の夏にこの曲をレコーディングしたとき、「この曲をリードにしよう!」とスタッフさんを含めて満場一致で決まりました。

──ではどういうオーダーのもと、この曲が作られたんでしょうか?

「ハッピーを集める」というテーマでアルバムを作ろうと思ったとき、過去にミトさんが作ってくださった「music」(2012年1月発売の5thシングル)も、そういうテーマの曲だったなと思い出したんです。「music」は私が個人的にすごく凹んでいたときに、ミトさん、つじ(あやの)さん、コトリンゴさんがプレゼントしてくれた曲で。歌詞に「幸せ歌」という言葉が入っていて、まさにハッピーな曲だったんです。そういう「幸せ歌」の2021年バージョンを作りたいというところから始まり、またミトさんに作っていただけたらうれしいなと思ってお願いして。歌詞はこれまでもお世話になってきた田淵さんにお願いしたいねという話になり、ミトさんが作ってくれたメロディに田淵イズムがいっぱい詰まった歌詞が乗っています(笑)。

──なるほど。豊崎さんと縁が深い方といえば、今回たむらぱんさんも新曲「TONE」を提供しています。この曲はどういう経緯でできあがったんですか?

「caravan!」初回限定盤ジャケット

この曲、実は2、3年前にはあって、仮歌も録って温めていたんです。でも、その段階では最後の「誰かと聞いた荒野の中で あなたを感じていた」というマーチみたいなパートはなかったんですよ。今回アルバムに楽曲を入れるにあたって、この部分を付け足そうということになり。「世界が砂漠であろうと誰かを思っている」という状況は、私自身すごく共感できるなと思ったんですね。それで去年レコーディングしたんですけど、実はそのときはまだ「caravan!」というアルバムタイトルは私の中でまったく思い浮かんでいなかったし、ジャケットを砂漠にするという案も出ていなかったんです。タイトルを付けてから改めてこの曲を聴き直して、当時はまだ言葉にできていなかっただけで、作ろうとしていたものは根本的に変わってなかったんだなと気付きました。

私のルーツオブルーツ

──7曲目の「ライフコレオグラファー」はボカロっぽいサウンドが取り入れられていて、とても新鮮でした。

この曲は歌うのがすごく難しかったです。「どういう仕上がりになるんだろう?」と思いながらレコーディングしていたんですけど、できあがったものを聴いてびっくりしました。“バーチャルな私”といいますか。ボカロサウンドといってもメロディラインがしっかりあるものにしようという話は最初からあったので、すごく気持ちのいいメロディになっていると思います。難しいのでライブで歌えるかどうかわからないんですけど、どうなるのか楽しみです(笑)。

豊崎愛生

──「ライフコレオグラファー」ってパンチのある造語ですね。

あはは。歌詞の内容的に一番はちょっとシニカルに世の中を見てる感じなんですけど、最終的には「今のみんなと同じでいいの? 新しいことにもっとチャレンジすればいいんじゃないの? 好きなように生きなよ」とポジティブに解決して終わる歌なので、そういう意味ではほかの曲とは違うアプローチの“ハッピー”だなって。この曲は仮歌の段階からほぼほぼ歌詞が決まっていて、共感できるところがいっぱいあるなと思って選曲しました。

──そしてアルバムのラストを飾る「March for Peace」はダンストラックですが、サビを歌わずに盛り上がるというドロップ構造になっていて、もはやEDMとも言えますね。

そうですね。ウイイレ(「ウイニングイレブン」)がやりたくなる感じ(笑)。この曲は最後にレコーディングしまして、アルバムを総括するような内容の曲になったんじゃないかなと思います。私のディスコグラフィにこういうEDMの楽曲はなかったので、「この人、新しいことをやりたいんだ」と思ってもらえるような意思表明にもなるし。でも、自分の表現として新しさがありつつ、「私の根幹にこの感じはあるな」とも思って、これはなんなんだ?と自分の記憶の中で旅をして、たどり着いたのが……阿波踊りだったんですよね(笑)。

豊崎愛生

──思わぬ角度からの原点回帰(笑)。

そうです(笑)。阿波踊りは地元の徳島で幼少期から叩き込まれてきて、私の成分になっている音楽なんですよね。EDMは、小さいときからずっと聴いていたループする囃子の感じを彷彿とさせます。あと、阿波踊りって踊っているときに「踊る阿呆にみる阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」って言うんですけど、それってめっちゃパリピだなと思っていて(笑)。「さあ、踊ろう」と言って、「チャチャチャチャチャ♪」とサビにいくあの感じが、もうずっと私のルーツオブルーツだなということを感じました(笑)。

──EDMは遠い世界の話ではなかったと。僕も熊本出身で「おてもやん」とサンバアレンジの「サンバおてもやん」を刷り込まれているので、その感覚はすごくわかります。

このアルバムで新しいチャレンジをいっぱいしたんですけど、まったく自分の要素になかったものは1つもなくて。サウンド的に新しい世界を楽しんでいただけるとは思いますが、昔から私を知ってくださっている方に「なるほどな」と思ってもらえる部分もたくさんあると思います。

──7月には2年半ぶりの有観客ライブ「LAWSON presents 豊崎愛生 コンサート2021~Camel Back hall~」が神奈川県民ホールと中野サンプラザホールで計4公演行われます。

ラクダにハマっているので、「Camel Back」=「ラクダのこぶ」というタイトルになりました(笑)。今は世の中を見渡すと砂漠みたいで、地図も道もなく、「どこに向かえばいいんだろう?」と未来に不安を感じている方もたくさんいらっしゃると思います。私自身もそうだし、「これから未来はどうなっていくんだろう?」と思いながら日々過ごしているんですが、「caravan!」というアルバムやこのライブが、みんなにとって毎日を生きていくための心の栄養分になったらうれしいです。この大変な時期にわざわざ来てくれるわけだし、絶対に楽しい思い出を作って帰ってほしい。グッズにラクダのクッションもあります(笑)。

※記事初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

ライブ情報

LAWSON presents 豊崎愛生 コンサート2021~Camel Back hall~
  • 2021年7月17日(土)神奈川県 神奈川県民ホールOPEN 17:00 / START 18:00
  • 2021年7月24日(土)東京都 中野サンプラザホールOPEN 17:00 / START 18:00
  • 2021年7月25日(日)東京都 中野サンプラザホールOPEN 12:00 / START 13:00
  • 2021年7月25日(日)東京都 中野サンプラザホールOPEN 16:30 / START 17:30

2021年6月30日更新