澤野弘之がTOMORROW X TOGETHERとコラボ!世界に向けて放つダンスミュージック

澤野弘之によるボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]のニューシングル「LEveL」が1月24日にリリースされた。

「LEveL」は澤野が劇伴を担当しているテレビアニメ「俺だけレベルアップな件」のオープニングテーマ。ゲストボーカルにTOMORROW X TOGETHERを迎えたダークな雰囲気のダンスナンバーで、澤野がBenjaminとの共作という形でひさしぶりに歌詞を手がけている。

音楽ナタリーでは澤野にインタビューを行い、楽曲のイメージやTOMORROW X TOGETHERの歌声の印象について話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝撮影 / 須田卓馬

韓国のボーイズグループは、声の出し方や英語の歌詞に対するアプローチがカッコいい

──ニューシングルの表題曲「LEveL」はTOMORROW X TOGETHERとのコラボということで、びっくりしました。

韓国のマンガを原作にしたアニメ「俺だけレベルアップな件」のオープニングテーマだからこそ、こういうコラボが実現したんだと思っています。TOMORROW X TOGETHERは、ミュージックビデオとかを観ていて洋楽的なアプローチの楽曲をやられている方たちだというイメージを持っていて。そういうアプローチは僕自身も常に意識していることでもあるし、この言い方は語弊があるかもしれないんですけど、TOMORROW X TOGETHERに限らず韓国のボーイズグループは声の出し方や英語の歌詞に対するアプローチの仕方がカッコいい印象です。

澤野弘之

──澤野さんは基本的に、特定のボーカリストが歌うことを想定して曲を作るのではなく、曲を作ってから誰に歌ってもらうのが面白いか考えるタイプだとおっしゃっていましたが、今回は?

曲を作るときにTOMORROW X TOGETHERに歌ってもらうということが決まっていました。そもそも「俺レベ」というアニメ作品自体が、日本だけじゃなくて世界に向けて展開していくコンテンツだということもあり、自分なりに海外のリスナーを意識してリズムやメロディを作っていたところはあって。それをTOMORROW X TOGETHERが歌ってくれるのであれば、ファンの人たちにもカッコいいと思ってもらえるようなサウンドになればいいなと、多少は考えていたと思います。

TOMORROW X TOGETHER (P)&(C) BIGHIT MUSIC

TOMORROW X TOGETHER (P)&(C) BIGHIT MUSIC

──「LEveL」はトライバルなビートが特徴的なダンスナンバーですね。方向性としては、「OUTSIDERS」(2022年5月発売の11thシングル表題曲)に近いでしょうか。

リズムを立てて作っているという点で、近いところはあるかもしれないですね。「OUTSIDERS」のときもある程度テンポ感があるものを目指したんですけど、「LEveL」はアニメのオープニングテーマなので、よりリズムを、特にパーカッションを強調したくて。あと、何年か経ったあとでもカッコよく聞こえる曲って、リズムがカッコよく立っている曲が多いなと、海外の音楽を聴いていても感じるんですよ。例えばDestiny's Childの「Lose My Breath」はイントロからパーカッションを効果的に使っていて、もう20年近く前の曲なのに今聴いてもカッコいいんですよね。そういう雰囲気を、今のトレンドを見つつ、自分なりの解釈で広げてみました。

──方向性は「OUTSIDERS」と近いと言いましたが、「LEveL」のほうがよりアグレッシブでヘビーですね。5thアルバム「V」(2023年1月発売)ではエレクトロニカやEDMに寄ったアレンジをなさっていましたが、今回はロック的なアプローチが戻ってきたのかなと。

あ、そうですね。ギターにめちゃくちゃディストーションをかけたりしているわけではないんですけど、リズムを立たせるためにカッティングを入れてみたり。「俺レベ」はアクションファンタジーなので、勢いのあるオープニングでより物語に入り込んでもらいたかったし、あとTOMORROW X TOGETHERの曲は、ポップなものが多い印象があるんです。だからこういうロック的でダークなノリも、1つの要素としてファンの方たちに楽しんでもらえたらいいなと思いました。

──「LEveL」はソロやデュオではなく5人で歌う曲ですが、作り方としては普段と変わらないですか?

基本的には変わらないです。ただ、ラップパートに関しては僕が勝手に……という言い方はよくないかもしれませんけど、TOMORROW X TOGETHERにもヨンジュンさんという、ラップの上手な方がいるので、そういう意味ではラップパートは5人グループだから入れたと言えます。その結果、今までの自分の曲とはちょっと違うサウンドになったんじゃないかな。

伝わりやすい言葉をチョイスしていた気がします

──「LEveL」の歌詞は澤野さんとBenjaminさんの共作という形で、澤野さんが作詞を手がけるのはひさしぶりですね。以前「僕はサウンドに力を入れて、それを歌詞でより広げてくれる人に作詞をお願いするというスタイルが今は楽しい」とおっしゃっていましたが(参照:SawanoHiroyuki[nZk]「Avid / Hands Up to the Sky」インタビュー)、今回はなぜご自身で作詞を?

いや、レーベルの人と話していて「澤野さん、作詞お願いします」「あ、じゃあ書きます」という流れで(笑)。だから特別な理由があったわけじゃないし、たぶん普段だったら、こういうダンサブルで、日本語の歌詞も英語っぽく響かせたいような曲であれば、そういう歌詞を書くのに慣れているcAnON.さんとかにお願いしたと思うんですよね。でも、最近は自分で歌詞を書いていなかったというか、書かないようにしていたところもあったので、このタイミングで「作詞お願いします」と言ってもらえたのは、自分にとってはよかったですね。

澤野弘之

──従来の澤野さんの歌詞よりも、比較的わかりやすいように思いました。

そうですね。比較的、わかりやすいことを書いています。当然、歌詞は「俺レベ」の内容とも関係しているので、いつもみたいに何を言っているんだかよくわからないパターンに走るよりは、物語に対して想像を膨らませられる余地を残しながら、伝わりやすい言葉をチョイスしていた気がします。ただ、なんだかんだで言葉の“響き”を重視している部分は変わっていないんですけど。

──英詞のパートはBenjaminさんが?

そうです。もちろんベン(Benjamin)も「俺だけレベルアップな件」の原作を読んで、それを踏まえたうえで書いてくれたと思うんですけど、もともとこの曲には僕がデタラメな英語で歌ったガイドボーカルがあったんですよ。それをベンに投げたところ、その響きに則した言葉を選んでくれて。だから自分のイメージしたものとズレがなくて、ありがたかったですね。

──デタラメ英語のガイドボーカル、聴いてみたいです。

本当に、聴かせられないです。ベンにも「ガイドのデータは、聴いたら必ず消去してください」と頼みましたから(笑)。