茂木欣一(フィッシュマンズ)×髙城晶平(cero)|20年後の闘魂伝承

身体的な限界が出てくることで、逆に身体性が見えてくる(髙城)

──では、ライブパフォーマンスについて今のフィッシュマンズが目指しているものとはどのようなものなんでしょうか?

左から髙城晶平、茂木欣一。

茂木 まずは快感ありき。ベースやドラムのリズムを身体で浴びる楽しさを1990年代以上のクオリティで伝えたいということは大前提としてあるよね。あとはやっぱり佐藤くんが作った言葉やメロディ。2018年にピンとこないものだったら自分もここまでやってないと思うし、いつ演奏しても圧倒的に響いてくるものがある。それがある限りは届け続けたいんだよね。

髙城 3、4年ぐらい前に「VIVA LA ROCK」というフェスでフィッシュマンズのライブを観たんですけど、低音がすごくて、地鳴りみたいでした(笑)。柏原さんのベースアンプがステージ上にないことにも驚きましたね。プリアンプ経由で直接PAに入れてるということだと思うんですけど、ステージ上はすごくシンプル。それなのに天変地異みたいな凄まじい音が鳴ってるんですよ。

茂木 譲のセッティングは日によって変わるんだよね。ただ、天変地異みたいな音は変わらない。いつでも天変地異(笑)。

髙城 あと、フィッシュマンズのライブで一番好きなのが、茂木さんのパッド。バックグラウンドコーラスの多くの部分があのパッドで鳴らされてると思うんですけど、ceroだったら実際に歌うところが、フィッシュマンズの場合はサンプラーをわざわざ叩く。そのことでちょっとズレが起きたりして、逆に肉体的な感覚が出てくるんですよ。あの手法ってすごく今日的だと思う。

茂木 サンプルはもともとキーボードのHAKASEが出してたんだけど、HAKASEが辞めちゃったので、僕がやるしかなくなったんです。そのタイミングとプライベートスタジオを作ったタイミングが一緒になって、あれこれサンプリングしては自分で鳴らすという実験をするようになった。まあ、マニュピレーターを使って鳴らす方法もあったんだろうけど、当時はその発想すらなかった。とにかく全部自分たちでやろう、と。

髙城 そこが男心をくすぐるんですよね(笑)。マニュピレーター任せにしないで、自分たちでやろうという発想。パッドを使うことによって、より拍の頭のシンバルがなくなっていったこともあるんでしょうね。

茂木 うん、まさにそうだね。

髙城 身体的な限界が出てくることで、逆に身体性が見えてくる。そこがすごく今っぽい感じがするんですよ。ここ最近の海外のデータベースサイトでフィッシュマンズのライブ盤が高い評価を得ているのは、そういう理由もあると思う。

茂木 いやー、そんなにうれしいことを言ってもらったら燃えるよ。まさに闘魂だよね(笑)。

今まで誰も体験したことがないことがこの日だけ起きる(茂木)

──では、最後にその「闘魂」へのお二人の意気込みをお話ししていただけますか?

髙城 フィッシュマンズを今のバンドとして捉え直しているところだったので、そのタイミングでこういう場を作ってもらえたのがすごくうれしくて。僕の周囲でも今のバンドとして聴いている流れはすごくあるし、自分で言うのもなんですけど、フィッシュマンズとceroは相性がいいと思うんですよ。すごく面白いライブになると思います。

茂木 あのね、僕の中で夢見ていることがあって……。

髙城 はい。

茂木 フィッシュマンズの曲を演奏する中でビートが変わっていって、ceroのみんなが合流していくっていうことをやってみたいんだよね。

髙城 マジですか!(笑)

茂木 そうそう。例えばさ……。

──ちょっと待ってください。その計画のこと、記事に書いちゃっていいんですか?

茂木 書いてください。有言実行なので。

髙城 これは心して臨まないとですね……(笑)。

茂木 とにかく、今まで誰も体験したことがないことがこの日だけ起きる、そういうライブになったらいいよね。

左から茂木欣一、髙城晶平。
フィッシュマンズ presents “闘魂 2019”
  • 2019年2月19日(火) 東京都 Zepp Tokyo
    OPEN 17:30 / START 18:30
    出演者 フィッシュマンズ / cero
フィッシュマンズ
フィッシュマンズ
1987年に佐藤伸治(Vo, G)を中心に結成されたロックバンド。1991年に小玉和文(ex. MUTE BEAT)のプロデュースのもと、シングル「ひこうき」でメジャーデビューを果たす。当時のメンバーは佐藤、小嶋謙介(G)、茂木欣一(Dr)、柏原譲(B)、ハカセ(Key / 後のHAKASE-SUN)。ライブではzAkがPAで加わるなどして、徐々に独自のサウンドを作り上げていく。小嶋、ハカセの脱退を経て、1996年にアルバム「空中キャンプ」をリリース。レゲエを軸に、ダブやエレクトロニカ、ロックステディ、ファンク、ヒップホップなどの要素を取り入れた、独特の世界観で好評を博す。その後も木暮晋也(G / Hicksville)、ダーツ関口(G / ex. SUPER BAD)、HONZI(Key, Violin)をサポートメンバーに迎え、音源リリースやライブ活動を展開。1998年末をもって柏原がバンドを脱退し、その後の動向が注目される中、1999年3月に佐藤が急逝。これによりバンドは活動休止を余儀なくされるが、バンドは2005年夏に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2005 in EZO」で、ゲストボーカルを迎える形で復活。その後も単独ライブやイベント、フェスなどで不定期にライブを行っている。
cero(セロ)
cero
2004年に髙城晶平(Vo, Flute, G)、荒内佑(Key, Sampler, Cho)、柳智之(Dr)の3人により結成された。2006年には橋本翼(G, Cho)が加入し4人編成となった。2007年にはその音楽性に興味を持った鈴木慶一(ムーンライダーズ)がプロデュースを手がけ、翌2008年には坂本龍一のレーベル・commmonsより発売されたコンピレーションアルバム「細野晴臣 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2-」への参加を果たす。2011年にはカクバリズムより1stアルバム「WORLD RECORD」を発表。アルバム発売後、柳が絵描きとしての活動に専念するため脱退し3人編成になった。2015年5月には3rdアルバム「Obscure Ride」、2016年12月には最新シングル「街の報せ」をリリース。2017年4月には2度目の東京・日比谷野外大音楽堂ワンマン「Outdoors」を成功に収めた。2018年5月に4thアルバム「POLY LIFE MULTI SOUL」をリリース。