T.N.T初フルアルバム「DETONATION」全曲解説|卓越したスキルとセンスで音楽シーンの“新たな起爆剤”目指す

手越祐也(Vo)、Furutatsu(B)、kyohey(Dr)、Ryu.(G)からなるロックバンド・T.N.Tが初のフルアルバム「DETONATION」をリリースした。

昨年2月の結成から1年を経たT.N.Tが満を持してリリースしたこの1stアルバムには、日本語で“爆轟”を意味するタイトルにふさわしいパワフルな楽曲12曲が収録されている。T.N.Tのポテンシャルと、ここから突き進んでいこうとする彼らの意志を存分に感じられる楽曲ばかりだ。

音楽ナタリーでは本作のリリースにあたり、音楽ライターの西廣智一によるアルバム全曲解説をお届けする。各曲で表現されたT.N.Tの現在地、そして4人が目指す未来とは。

文 / 西廣智一

T.N.T待望の1stアルバム「DETONATION」が3月25日にリリースされた。

T.N.Tは手越祐也(Vo)、kyohey(Dr)、Furutatsu(B)がスタジオセッションを重ねる中で、お互いに手応えを感じたことから結成に至ったロックバンド。2025年2月に結成が発表されると、同月の「バズリズム02」(日本テレビ系)出演を経て、4月の神奈川・ぴあアリーナMMでのイベント出演で本格的なライブデビューを飾った。その後もフェスやイベントへの参加、デジタルEP「ZERO」やシングルCD「未来へ / I Don't Care」などのリリースと着実にキャリアを積み重ねていき、昨年12月にはそれまでサポートメンバーとして参加していたRyu.(G)が正式加入。現在の布陣が完成し、今年1月から2月にかけて5会場6公演を回る1stツアー「THE NEXT TRIGGER」を行ったばかりだ。

T.N.T

T.N.T

出身地や年齢、キャリアもまったく異なる4人だが、それぞれ確かな実力やソングライティング能力、ステージ上で光り輝くカリスマ性を備えており、“The Next Trigger=T.N.T”というバンド名が示すように、彼らがここから現在の音楽シーンにおける“新たな起爆剤”として活躍する未来が切望されている。

そんな彼らが満を持して発表した1stフルアルバム「DETONATION」を聴けば、爆轟や爆発を意味するタイトルのように結成から1年で彼らが蓄えたエネルギーが強烈な熱量で発散されていることにお気付きいただけると思う。時にラウドロックさながらのヘヴィサウンドを轟かせ、時にポップでキャッチーなメロディで聴き手を優しく包み込む変幻自在なバンドアンサンブルは、卓越した技術を身に付けたこのメンバーならではと言える。そして、百戦錬磨のキャリアを持つ手越のボーカルワークが、そういった楽曲たちに華を与えており、彼らが凡百のロックバンドとは一線を画する存在であることに気付くことだろう。そんなT.N.Tの勢いが凝縮されたアルバム「DETONATION」の魅力を、以下の全曲解説を通して感じていただきたい。

1. Evanescence

「DETONATION」という物語の幕開けを飾るのは、爽快感あふれるストレートなロックチューン。キャッチーなメロディに乗せて、消失やはかなさを意味するタイトルにちなんだ歌詞がつづられており、失ったものを嘆き苦しむ主人公の背中を優しく押してあげるような、そんなポジティブさの伝わる楽曲に仕上がっている。派手なプレイに頼ることなく、堅実さが伝わるアンサンブルで艶やかな手越のボーカルを支えることで、この曲の魅力をより強いものへと昇華。リスナーの心をしっかりつかみ取ることに成功している。また、作詞作曲を手がけたkyoheyのソングライティング能力も、この1曲だけでも十分に伝わることだろう。

手越祐也(Vo)

手越祐也(Vo)

kyohey(Dr)

kyohey(Dr)

2. 数センチの、その先へ

「Evanescence」からの流れを汲む、キャッチーさと前のめり感が強調されたアップチューン。ただ、1曲目と大きく違うのは手越の歌を前面に押し出しつつも、バンドメンバー個々の魅力や個性が要所要所でフィーチャーされていること。バンドの屋台骨を支えながらも、そのパワフルなヒットで存在感を発揮するkyohey、ゴリゴリのベースサウンドで聴き手にインパクトを与えるFurutatsu、そしてエフェクトを多用したサウンド&プレイで非凡さをアピールするRyu.と、約4分間の中に4人の魅力がぎっしりと凝縮されている。

3. Starting Over

メジャーキーの“開けた”ロックチューンが2曲続いたあとは、オープニングのシンガロングが印象的なこの曲でアルバムの雰囲気に早くも変化が生じる。トライバルでダンサブルなビートに乗せて手越が情熱的な歌声を響かせていくことで、このバンドが持つエモーショナルさが強く浮き彫りになっていく。歌詞におけるメッセージも、T.N.Tからの所信表明であると同時に、ここから先へ進むにあたってのファンとの約束のようでもあり、先のシンガロングパート含め、ライブで一体感を作るうえでも重要な楽曲ではないだろうか。

4. Extreme Emotion

ヘビーなギターリフやゴリゴリとした低音と重さを強調したアレンジが強烈な、T.N.T流モダンラウドロック。歌い出しで、ディストーションがかけられた手越のボーカルにドキッとさせられるが、先に示したバンドアンサンブル同様これも「Extreme Emotion」という楽曲タイトルと紐付いた味付けなのだろう。こうした要素や歌詞で示された刹那的な世界観といい、T.N.Tというロックバンドがなんたるか、そしてどこを目指すのかを理解するうえで、実はもっともわかりやすい1曲なのかもしれない。

5. Ro"kyun"roll

ロックンロールならぬロッ“キュン”ロールという響きのタイトルに思わずクスッとしてしまうが、歌詞では独特のワードセンスでT.N.Tの生き様や姿勢が示されている。というのも、作詞にはメンバー全員が参加しており(どこを誰が書いた、アイデアを出したかまでは不明)、4人の個性が言語化されているという点でも今のT.N.Tには必要不可欠なのかもしれない。また、サウンドにおいてもラウドロックのひと言で片付けられない変幻自在さがあり、演奏面でもラウドやメタルの要素が随所に垣間見える。そんな楽曲を歌う手越も、一筋縄ではいかないボーカルワークでリスナーを魅了。4人のキャラクターを存分に味わえるキラーチューンだ。

6. 背徳

ここまでアップテンポの楽曲が続いたが、ミドルテンポで重心の低い演奏が楽しめるこの曲はアルバムの折り返しにぴったりと言える。ラップをフィーチャーしつつも随所にウィスパーを挿入、サビでは伸びやかなメロディで聴き手を惹き付けるボーカルと、ニューメタル的なサウンドとバンドアンサンブルで楽曲を支配する楽器陣。3分に満たない短い尺の中で、それぞれの底力が遺憾なく発揮されており、全12曲としっかりとしたボリュームのフルアルバムにおいてもいいフックとなっている。

Furutatsu(B)

Furutatsu(B)

Ryu.(G)

Ryu.(G)

7. SHINE

ヘビーさが際立つ本作の中でも、T.N.Tのポップサイドを象徴する1曲。ミディアムテンポの四つ打ちのビートに乗せて、広がりのあるサウンドと耳馴染みのよいキャッチーなメロディが展開されるアンサンブルは、これぞアンセムと言いたくなるような極上の仕上がりだ。アルバムの大半の楽曲を手がけるkyoheyだが、ソングライターとして彼がいかに優れているかをこの曲から実感してもらえることだろう。そして、手越祐也というシンガーの魅力や底力も余すところなく味わうことができるという点でも、今の彼らには欠かせない1曲だ。

8. My Beautiful Moment

「SHINE」の空気感を引き継ぐ、ポップでメロウなナンバー。ただ、「SHINE」がロックバンドとしての矜持を伝えるような仕上がりだったのに対し、この「My Beautiful Moment」はシンセなどエフェクティブな音色を多用しつつ、シンガロングを導入することでより“みんなの歌”感が強調されている。それは歌詞においても同様で、「君が勇気をくれたんだ / 手を繋いでいれば何も怖くないよ」といった歌詞からはファンへの感謝も感じ取れるのではないだろうか。同系統の色合いを持ちながらも、ベクトルが異なることによって聴き手にこうも違った印象を与えるあたりにも、このバンドの懐の深さを感じずにはいられない。

手越祐也(Vo)

手越祐也(Vo)

kyohey(Dr)

kyohey(Dr)

9. 朧

変化球の楽曲が続いた中盤を経て、この曲からアルバムは終盤戦へ突入。再びラウドでヘビーな音像がリスナーを高揚させていく。が、単に重々しいアンサンブルで楽曲を表現するのではなく、曲冒頭でのキラキラしたシンセの音色や、笛の音を思わせるサウンドを取り入れることで、曲全体に和テイストのしなやかさを与えている。その傾向は「朧」と題したタイトルや、英語を一切用いない潔い歌詞からも顕著で、これを手がけた手越のこだわりを感じずにはいられない。アルバムにおいて最もヘビー、最もキャッチーというわけではないが、実は最も印象に残る1曲ではないだろうか。

10. Leap Of Faith

1st EP「ZERO」のオープニングを飾った、ある意味ではT.N.Tにとって“はじまり”の1曲。ラウドロック的な手法を用いながらもポップさ、キャッチーさも決して忘れないという、その後のT.N.Tの音楽性において1つの指針となった重要なナンバーだ。時にエフェクトを多用するなど存在感の強い手越のボーカル、躍動感あふれるkyoheyのドラム、そのリズムに乗って重さと跳ね感を表現するFurutatsuのベース、グルーヴィなプレイで大きなノリを作るRyu.のギターと、個々の魅力もわかりやすい形で示されている。また、Furutatsuのバイオリンがフィーチャーされているのも、この曲における忘れてはならない聴きどころだ。

Furutatsu(B)

Furutatsu(B)

Ryu.(G)

Ryu.(G)

11. Remember

アルバムもついに佳境へ。序盤に収録された「Evanescence」や「数センチの、その先へ」の流れを汲むこの曲では、メロディラインや歌の譜割りも影響してか、先の2曲よりも大きなノリが伝わる。歌詞においても、聴いていただけばおわかりの通りストレートなラブソングなのだが、聴いていく中で実は「愛」や「Love」といったわかりやすい表現が1つも使われていないことに気付く。これには作詞を担当したkyoheyのセンスを感じずにはいられない。そして、こういう曲を手越に歌わせたら右に出る者はいない……そう強く思ってしまうほどに納得の仕上がりだ。

12. Fake

アルバムの最後に用意されたのは、ある種バラードとも言える抒情的で壮大なミディアムチューン。「背徳」や「朧」同様にFurutatsuが作曲しているのだが、この曲では作詞も単独で担当しており、彼もkyoheyと同じく着実にソングライターとしての実力を向上させていることに気付かされる。そして何より、この曲ではシンガーとしての手越の実力をここぞとばかりにアピールしながら、楽器隊が堅実なプレイでこの曲を光り輝かせるという、T.N.Tのバンドとしてのあり方が強く打ち出されていることに注目していただきたい。そういった楽曲で初のフルアルバムを締めくくるあたりにも、彼らが今何を伝えたいのか、何を見せたいのかが感じ取れるはずだ。

T.N.T

T.N.T

公演情報

T.N.T LIVE TOUR 2026 -DETONATION-

  • 2026年4月3日(金)宮城県 Rensa
  • 2026年4月11日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2026年4月18日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2026年4月27日(月)大阪府 なんばHatch
  • 2026年4月28日(火)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2026年5月1日(金)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)

プロフィール

T.N.T(ティエヌティ)

手越祐也(Vo)、Furutatsu(B)、kyohey(Dr)、Ryu.(G)からなる4人組ロックバンド。2025年2月に結成され、4月に神奈川・ぴあアリーナMMで開催されたイベントでデビューを果たした。バンド名は“The Next Trigger”の略称で、現在の音楽シーンにとっての“新たな起爆剤”になるというメンバーの思いが込められている。2025年12月にサポートメンバーのRyu.が加入し現体制に。2026年3月に初のフルアルバム「DETONATION」をリリースし、4月より本作を携えたライブツアーを開催する。