ケツメイシの「さくら」のコーラスで意識が変わった

──Tiaraさんはデビュー前、さまざまなアーティストの楽曲にコーラスで参加されていたそうですが。

はい。いろいろなご縁があったり、人と人とのつながりで呼んでもらったりして、コーラスにはたくさん参加させていただきました。なかでも、ケツメイシさんの「さくら」は自分の中ですごく印象に残っていて、「ヒット曲っていうのは街中でこんなに聴こえるものなんだ！」って衝撃を受けたんです。

──確かに当時、コンビニやいろいろな場所でかなり耳にしましたよね。

そうなんです。もちろん私はコーラスだし、リスナーの方も私の声なんて全然気にしてないのはわかってるんですけど……でも私には自分の声がわかるし、こういう現象ってなんかすごいなって思って。

──それが何か大きな転機になったとか？

はい。そこから、自分の歌もこんなふうにいろんな場所で聴いてもらえたらうれしいなとか、ソロで歌っていきたいなって強く意識するようになったんです。

──もともと小さい頃から歌手志望だった、というわけではないんですか？

歌うこと自体は好きだったんですが、実は自分の声があまり好きではなくて。18歳で東京に出てきて「自分には何が一番合うんだろう？」って模索している時期がしばらくあったんですよ。

──それは意外です。

本当は「3歳からピアノやってました」とか言いたいんですけどね（笑）。昔から楽器も全然やったことがなかったし、上京してからダンスや演技などいろいろなことを体験する中で、とりあえずボーカルレッスンもやっていたという感じなんです。

歌の世界になら自分の居場所があるかもしれない

──そこから歌の道へ本格的に歩み始めたのはいつなんですか？

つい7年前のことなんですけど。ある発表会があったときに、私の歌声をすごくほめてくださった方がいて。それまでは「自分の声には個性がない」と否定的に考えていたんですけど、そのとき「その声は個性的で武器になるよ」って言ってもらえたのがすごく印象的だったんです。それから自分の声に向き合うことが増えて「歌の世界になら自分の居場所があるかもしれない……」って思って。そこからコーラスの仕事を始めましたね。

──そうだったんですね。ちなみに先ほどおっしゃった、自分の声を好きになれなかった一番の理由ってなんだったんでしょう？

単純に自分の思ってる声とギャップがあって。中学生のとき放送委員会に入ってたんですが、自分の録音テープを聴いたときに予想以上に声が高くて、「私ってこんな声だったんだ！」って思ってから、声に苦手意識を持つようになっちゃったんです（笑）。

──でもコーラスのお仕事をしていると、自分の声をしょっちゅう聴くわけで。そのあたりで意識は変わっていったんですか？

もう、その時期はすごく研究しましたね。最初はド素人だしレコーディング現場にも慣れていなかったので、まず録音機材をイチから買い揃えて。マイクに対してどこに（声を）出すのが一番入るか？ とか、声の出し方を研究するうちに、自分の声がだんだん好きになっていきました。

──“研究”って、なんだかすごいですね。

研究っていうと大げさですけど、私は極度の不安症なので準備しとかないとダメなタイプなんです（笑）。でも当時やっていた研究は、今に生きてる部分がかなり多いと思いますね。

日本の女性に対して投げかけたいことがたくさんある

──インディーズでの活動を経て、昨年の9月にメジャーデビュー。そこからわずか約9カ月で今回の1stアルバム「Message for you」を完成させたわけですが、その間にはシングルも4枚出していて、すごく勢いのあるペースだなって思います。

確かにそうですよね。シングルの反応も含め、すごく良い流れで来させていただいたので、ちょっと急ぎめでアルバムを聴いてもらいたいという気持ちがあったんです。その代わり制作は急ピッチで、なんだか二倍速で毎日を生きてる感じでしたね（笑）。

──レコーディングは3月にまとめて行ったとか？

はい。毎日がスタジオだったので、何をしてたか正直あまり覚えてない（笑）。でもやっぱり、シングルを出し続けた先にアルバムを出せるということは単純にうれしいです。アルバムは名刺代わりというか、いろんな私を見ていただける機会ですので。

──オープニングとラストには、Tiaraさんのコーラスワークの魅力が大いに堪能できる楽曲が。また「Message for you」というタイトルどおり、メッセージ性の強い楽曲も多くて、何度でも繰り返し聴きたい1枚になりそうです。

ありがとうございます。タイトルについては、私が音楽を通して伝えたいことや、日本の女性に対して投げかけたいことがたくさんあるので、そういう気持ちをアルバムにいっぱい詰め込みたいなあと。最初から“メッセージ”というキーワードは頭の中にありましたね。