ゴスペルシンガー・TiA(ティア)が6月5日に約7年半ぶりとなるオリジナルアルバム「MIRACLE」をリリースした。
16歳のときにメジャーデビューしたTiAはデビュー10周年のタイミングで単身渡米。ニューヨークのハーレムでゴスペルに出会いその音楽に魅了されると、2016年にはアメリカ最大級のゴスペル大会である「マクドナルド・ゴスペル・フェスト」で日本人として初の優勝という栄光をつかんだ。その後も全30公演の全米ツアーを成功させるなど国外で着実にステップアップした彼女は「MIRACLE」で日本での活動を本格化させる。
リリースを記念した音楽ナタリーの特集では、TiAが対面を熱望したファッションブランド「UN3D.」のデザイナー・荻原桃子との対談をセッティングした。2人は10年以上前に会ったことがあったが、TiAが今回アルバムの制作とプロモーションのために帰国したタイミングで、1着の衣装をきっかけに文字通り奇跡的な再会を果たしたという。確固たるアイデンティティを軸にそれぞれの世界で活躍する2人が共鳴しあう、自身の活動に注ぐ思いとは。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 映美
偶然の再会
TiA 桃ちゃんと初めて会ったのは、私が20歳くらいのとき?
荻原桃子 そうだね。南青山でね。
TiA 共通の知り合いがいて、そのつながりで。前からMURUA(荻原がクリエイティブディレクターを務めていたブランド)を知っていたので、そのときから桃ちゃんはカリスマ的な存在でした。私が2014年に渡米したこともあり、最後にちゃんと会ってからは10年以上間が空いたんですけど、今回、帰国したタイミングで衣装を探しに新宿の伊勢丹に行ったとき「このお店の服、めちゃくちゃかわいい!」と思ったら、それが桃ちゃんのブランドのUN3D.だったんです。
荻原 私もTiAちゃんがUN3D.の服を着てテレビに出てくれているのを偶然見つけて「あれ、リースしてくれたのかな?」と思ってお店のプレスの子に聞いたんです。そうしたら「してない」って言うから「買ってくれたんだ」とわかって、Instagramにコメントしてね。
TiA そう。「今夜くらべてみました」(日本テレビ系バラエティ)に出たときに着たんですけど、見た瞬間「これしかない!」って。桃ちゃんの新しいブランドだなんて知らずに買ったんですけど、もともと桃ちゃんのデザインする洋服が好きだったから。すごい偶然でうれしかったです。
荻原 ホントにビックリしましたね。TiAちゃんをテレビで観たのも初めてだったし。最近はライブとかでも着ていただいて、うれしいです。
TiA この間はTBSの「PLAYLIST」でも違う服を着ました!
荻原 ありがとう。
TiA Instagramにメッセージをくださったとき、今回こうして対談する相手は桃ちゃんがいいと思ったんです。
「正解」はない
──TiAさんが思う、荻原さんの作る洋服の魅力は?
TiA 自由なところかなと思います。UN3D.に行って服を選んでいるとき、「これって正解の合わせ方ですか?」って店員さんに聞いたんです。そうしたら、その方が「このブランドには『正解』はないんです」「自由に組み合わせていただいていいんですよ」とおっしゃったんですね。私がニューヨークにいたときに思っていたことなんですけど、いろんな人種の方がいて、いろんな価値観があって、そこには答えはないんです。店員さんの言葉を聞いたときにそれを思い出して「やっぱりこのブランド好きだな」と思ったんです。自分が着たいと思うものを着ればいいんだよ、と背中を押してくれるというか。
荻原 うれしい。UN3D.を作るとき、「アンスタンダード」「アンシンプル」「アンシミラー」という3つのアンチテーゼを語源にブランド名を付けたんです。日本のファッション界の“普通”とはちょっと違ったスタイルで、「誰に向けて作る」というスタンダードなアパレルの作り方にとらわれない……コーディネイトや年齢にしばられないということをコンセプトにしているので、スタッフにもそういう話をいつもしているんですよ。だから、そう言ってもらえるとすごくうれしいです。
TiA なんと言うか、今の私にピッタリだった。「自分にしかできないことを大切にしよう」と思いながら、この4年間ニューヨークで生きてきたんですけど、UN3D.の服を見て「ほかにこのスタイルはないな」と思いました。自分の気持ちにフィットしたし、「自分だけのアイテムだ」と思えるような服を作られているなってすごく思いました。
荻原 歌っているTiAちゃんがUN3D.の服を着てくれている姿を見ると、また新しい世界観に連れて行ってもらえているような感じもする。ウチの洋服は衣装映えするというか、TiAちゃんのように歌手の皆さんやタレントさんが衣装として使ってくれることも多いので、そうやっていろんな方が着こなしてくれると「こんな着こなしになってもいいんだ」と、作り手側にもうれしい発見があったりします。
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