ボーカルの意識作り

──「3 times」は激しい曲調のナンバーですが、秋元康さんが手がけた歌詞はすごく切なくて恋愛に発展するかしないかの微妙な心情が表現されています。TSUBASAさんはどのような気持ちでこの曲を歌いましたか？

TSUBASA　主人公になりきりました。主人公の男性が車を運転して、助手席に女性を乗せてるっていうドライブデートのような風景を頭の中でイメージして。

──具体的ですね。他者が書いた歌詞の世界観に入り込む作業には集中力が求められそうです。

TSUBASA　秋元先生の書いた詞は、ストレートなメッセージもあれば「2人の恋の水面静かで美しく小石 投げる勇気がなかった」という比喩表現もあるんですけど、情景を思い浮かべやすいものなんです。難しいのは詞の世界に入り込むメンタルを作り上げるまでかなって。入ってしまったあとはスッといけるんです。

──その“入り口探し”はどのように？

TSUBASA　事前に歌詞を見て、家で1人でいるときとかに……絵を浮かべるようにイメージします。何時間もかけて聴き込んだので、前作以上に深くその世界に入れたんじゃないかと思ってます。

念願の養蜂場で演奏

──この曲といえば「南極料理人」などを手がけた沖田修一監督によるミュージックビデオにはびっくりしました。なんでこれ養蜂場で撮ったんですかね？（笑）

大輝　まあ、そこですよね（笑）。

──あれ、何をテーマにしたんだっていう。

TSUBASA　Junの夢ですね。

Jun　僕、ミツバチが大好きなんですよ。ホントに死ぬほど愛してて、実家でもハチを飼ってるんです。なので今回の話を聞いたときに「夢って叶うんだな」って（笑）。でも、その日早朝から現場入りだったんですけどウキウキしながら行って、防護服を着てちょっと撮ってみましょうって撮影したら「なんだこの光景……」っていう不思議な感覚になって。

TSUBASA　養蜂場でミツバチの巣箱がバーッて並んでる中に楽器がセッティングされていたんです。最初はなかなか状況を飲み込めなかったです（笑）。

──そりゃあキョトンとしますよね（笑）。

TSUBASA　ええ。あとやっぱり最初は怖かったですね、ミツバチが飛んでるのは。防護服を着てても目の前を飛んでるんですよ。10匹とかじゃなくてもう何百匹とかっていうレベルだったんで、最初の15～20分ぐらいは本当に怖かったですね。でも最初はカットがかかった瞬間に走って逃げたりしてたんですけど、だんだんみんな慣れてきて。そうなると逆に今度は防具服を被るのを忘れたり。最終的にメンバーは刺されなかったのでよかったです。

Jun　ホント、MVは今まで観たことがないような絵になりました。

わちゅ～　でも作品自体はハチが出てくるから第一印象としてインパクトはあるかもしれないですけど、ストーリー全体で見ると沖田修一監督ならではの魅力がにじみ出てるというか。全然怖い印象はなくて、心温まる内容になってるんで、ストーリーや世界観に注目して観ていただければと思います。

抜本的な曲調の変化

──カップリングの「もしもあなたが…」は表題曲とは全然タイプの違う仕上がりで、面白い構成になってるなと感じました。ホラー映画「女優霊」のタイアップということで、オープニングはミステリアスな感じになっていて。

わちゅ～　実はデモが来た段階ではもっと明るい、全然違う雰囲気の曲だったんです。それが映画のタイアップのお話をいただいて、アレンジがすごく変わって。

──そうなんですね。当初は全体的に明るい曲調だったんですか？

わちゅ～　あ、そうです。そこにアレンジを加えていただいたあとの形が今のものなんです。イントロからすごく独特の世界観になっていて。映画の世界観とマッチした、ゾワッとくるような静かなイントロ……ピアノ、ストリングスの色が強いんですよね。それに静かな入り方というのがまた今までにない雰囲気で。

──この独特な雰囲気にはそんな背景があったんですね。両バージョンを聴いた当人としては相当びっくりしたんじゃないですか？

大輝　イントロを聴いて「あ、ホラーっぽくなってる」って（笑）。大きく変わりましたね。