THE YELLOW MONKEYのライブスタッフチームは日本一
──「GREATFUL SPOONFUL」ツアーは全27公演、20万人を動員した大ツアーでした。動く人数が違うし予算も違うし、すごい規模感だな、という感じはありましたか?
山田 ありましたね。まずスタッフはみんな一流です。これはよく話すんですけど、THE YELLOW MONKEYのライブスタッフチームはマジで最強です。日本一だと思う。PA、照明、舞台監督さんから何から、全員です。僕がそんなことを言うのはおこがましいか。でも照明の上島正昭さんは、僕は断言できますけど、日本で一番素晴らしい照明スタッフだと思います。すごくキャリアのある、最高の人なんですけど、僕とすごく相性がよかった。彼もそんなようなことを言ってくれました。僕みたいな人は今までライブ畑にはいなかったって。
横山 そうなんだ。
山田 ミュージックビデオ上がりで、アーティストとそういう接点を持っている人が、バック映像というものを切り口にライブに関わってくるということはなかったらしいんですね。映像を作るとなると、照明との絡み、カメラの画、アーティストの立ち位置とか、全体設計に関わってくるんですよ。そこでいろんな話をさせてもらったんですけど、僕みたいな人がいきなりぴょんと出てきて、いわゆる“ザ・ライブ映像”っぽくない映像を出してきたことを、すごく楽しんでくれている。上島さんをはじめ、そういう素敵な方々がスタッフには多いですし、すごく信頼し合えている感じがしますね。
──素晴らしいですね。
山田 単純に、相性がいいというのはあると思います。好きな画の感覚値が似ているのかな、というものがありました。ライブ前日とか前々日のスタッフの忙しさは徹夜級のエグさなんですけど、そこでの映像と照明のすり合わせとかも、最初はそれこそ探り合いで……というか、たぶん向こうが合わせてくれていたんだと思います。この間のドームツアーは「まあ大丈夫ですよね。私たちなら」というムードを出してくれました。
横山 確かに、ドームは感動した。特に「球根」がすごかった。
山田 映像を作っている段階で、パソコン上もそうですけど、現場に入ってリハーサルを経ていく過程の中で「これは絶対にヤバいライブになる」という感覚に到達できる瞬間があるんです。特にドームツアーの、初日のナゴヤドームがそうだったけど。
横山 ナゴヤドームはすごかったよね。本番2日前ぐらいにゲネをやったときに「これはとてつもない写真が撮れるぞ」と思った。オープニングから、かなり胸を打たれたから。
山田 プランニングしてきたものを実際に現場の規模感で見たときに「これはすごいライブになるわ」と。ここに本人たちが来て、最高のパフォーマンスをすることを想像したら、もう絶対ヤバいというところに行ける。それは、どのアーティストもそうなんですけど、THE YELLOW MONKEYの場合は、そこに早く行けるんですよ。限界ギリギリまで追い込みまくる前から「絶対大丈夫」という感じになっているから、さらに細かく追い込んでいけるというか。
横山 なるほどね。
山田 ああでもないこうでもないと迷う時間がそんなになくて、「こうですよね」という方向性に、スコーンと向かえる感じがある。それは周りのスタッフさんみんなが、プロフェッショナルであるということに尽きると思います。「うわ、やべえぞ絶対」という、ワクワクと高揚感がすごくある。
うれしかった言葉は「もっと早く出会いたかった」「横山くんの写真が一番」
──ちなみに、メンバーから直接言葉をもらったことってありますか?「映像いいね」とか。
山田 何かあった気がするけど……これ、忘れちゃダメですよね(笑)。でも、リアクションはくださいます。企画のプレゼンのときとか「頭いいね」って吉井さんにいつも言われます。「頭いいなあ、ホントに」って。そんなことないですよ、っていつも言うけど。あ、言われて一番うれしかった言葉、思い出した。「DANDAN」のミュージックビデオの撮影中に吉井さんに、「もっと早く出会いたかった」と言われました。
横山 その言葉、YouTubeの映像か何かで使われてる気がする。「なんでもっと昔からいなかったんだ」みたいなことを言ってた。
山田 俺らがもっと早く生まれてくれていたら、その頃から一緒にやりたかった、みたいなことを言ってくれて。それはめちゃめちゃうれしかった。
──最高の賛辞ですね。横山さんはそういうのはあります?
横山 「GREATFUL SPOONFUL」ツアーの最終日の熊本の打ち上げで、吉井さんが僕の前に来て、「いやあ、ハマったね」って言ってくれて。「これからもどんどん、好きに撮ってくれていいから。どんどん新しいの頼むよ」って言われたのを覚えてます。あと、エマ(菊地英昭)さんが「僕は、横山くんの写真が一番いいと思う」と言ってくれました。世に出るTHE YELLOW MONKEYの写真は、横山くんがいいと思うって。アニー(菊地英二)さんにも、言葉をもらいました。でもヒーセ(廣瀬洋一)さんにだけは褒められたことがない(笑)。
山田 ヒーセさん、最高ですよ(笑)。俺は大好きです。ライブの編集とかしてると、ヒーセさんにめっちゃ助けられることがある。
横山 ほおー。
山田 彼のパフォーマンス、動きはすごく重要だと思います。人間的にもそうだし、ヒーセさんが存在していることが、THE YELLOW MONKEYにとってかなり重要なポイントだと思う。
横山 それ、俺もあるかも。吉井さんを撮ってて「今はあんまり動きがないかも」と思うとき、ヒーセさんのほうに行けば、とりあえず何か違うことをやってるとか、絶対に観客に対してしっかりとアピールするパフォーマンスをしてるんで、いい写真が必ず撮れる。
山田 ちょっとコミカルさのある、あの感じね。もしヒーセさんがめっちゃクールなたたずまいのプレイヤーだったら、バンドのバランスはまた違ったと思う。ヒーセさんがいろんな幅を持ってるから、ほかの3人がさらに引き立つ、というふうには思います。……すみません、これも“おこがましトーク”ですけど。
自分の進化をメンバーやファンに見せたい
──そういえば「Horizon」の映像は山田さんのアイデアで花火のシーンを急きょ加えるために、徹夜して翌日のライブに間に合わせたそうですね。ライブで使用する映像はそうやってツアーを回りながらブラッシュアップしていって、最後に完成形を迎えるというものなんですか?
山田 いえ、それはあんまりないです。花火のときは、たまたま自分の中で思い付いたというだけで、基本は変えないです。ツアーが初日からだんだんよくなっていく、ということには僕はあまり賛同はしていないので。なるべくであれば、最初から完璧に計算されてあるべきだと思うし、アーティストの演奏とかムードとかは違うと思いますけど、映像としては基本的にはそう思います。ブラッシュアップしようと思うときは、ちゃんと疑ったうえで手を加えますね。例えば色ひとつ取っても、何かちょっと変えることで得るものもあれば、失うものもあると思うので。ちゃんと冷静にならないと、一番いいものにはたどり着けない気がします。
──横山さんの写真は、まず横山さん自身の目と、スタッフとメンバーの目を通して、最終的にファンの目に届くものですよね。そこで完成形を迎える、という感覚はありますか?
横山 それはありますね。特にTHE YELLOW MONKEYの場合は、目が肥えているファンの方にジャッジされる感が強いので。最初はけっこうプレッシャーはあったかもしれない。だんだん慣れてきてやりやすくはなりましたけど。でもちょっとブレてる写真とかにも「これ、ブレてないですか?」というコメントがあったりするので。
山田 そんなリアリティのあるコメント、来るんだ。
横山 それは本当にブレてる写真で、俺はそこがいいと思って出してるんだけど。そしたら、そのコメントに対するリプで「これはそういう意図で撮ってるんだと思います」とか、俺をフォローしてくれる人が現れて(笑)。「これはこれで、私はありだと思います」「この曲のときは、こういう感じでした」とか、感想合戦になったりもして(笑)。でも、しっかりときれいに顔が見える写真と、僕が思ってるカッコいい写真の狭間をチョイスしていくのは、これからも難しいところなのかもしれないけど。
──それは永遠のテーマじゃないですか。でも、すごく前向きなテーマだと思います。
山田 THE YELLOW MONKEYのメンバーもそうなんじゃないですか? どこまでを見せるのか、計算して作るのか、常に考えてるでしょう、絶対に。THE YELLOW MONKEYが背負っているものに対する責任感を、果たすべくして果たしてきたと思います。
横山 そこが本当にカッコいいんですよね。
──またいつかやりたいですよね、同じ現場で。
山田 そうですね。
横山 仕事が来たら、ですけど(笑)。でも、もしそういうときが来れば、また違ったものを見せたいですね。「僕もこれだけ進化したんですよ」というものを、メンバーの皆さんにも、ファンの皆さんにも見せたいし、自分自身が体験したいと思います。