「DANDAN」は何かやろうとしている若い方たちに響いてほしい
──そのドームツアーの話に行く前に、新曲の話をしましょう。10月30日に突如配信リリースされた、ピカピカの新曲「DANDAN」。これ、いつ作っていたんですか?
吉井 ツアーファイナルの熊本のライブが終わってすぐです。
──え。そんな最近?
吉井 そんな最近なんです。準備はツアー中にしてましたけど、みんなで集まってバーッと作りました。だからライブの延長で作れたし、ブリティッシュグラムロックがベースになっている、いわゆるTHE YELLOW MONKEYの王道の楽曲パターンなんで、そこに30周年の年月を凝縮したような詞を乗せて、お祝いソングを作ろうと思ってました。THE YELLOW MONKEYに対しても、ファンの皆さんに対しても「おめでとう」という、シンプルに喜びの歌ですね。歌詞はみんなとの他愛ない会話からできてる部分もあるんですよ。ヒーセが子供の頃、海で漂流した話とか。
──あー、「浅瀬で遊んでたつもりが深いとこまで持ってかれた」って、実話でしたか。
吉井 そう。エマが「それは離岸流だね」と言って、そのまま2番の詞にしたり。そこはヒーセは弾いてないんで、「助けてー」とか叫んでもらおうと思ったんだけど(笑)、「助けて」は前もやったんで。でもライブでは何かやってくれると思いますよ。
──そういう作詞の仕方は珍しいんじゃないですか?
吉井 いや、でも昔はそういうのも多かったんですよ。くだらない話からできたフレーズとかよくあったんで。そういうのも含めてアットホームな曲なんだと思います。1人の世界じゃないというか。
──この曲、どことなくThe Beatlesの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」の面影を感じますね。
吉井 そうですね(笑)。作ってるときは思わなかったんですけど。
ヒーセ いい感じの日曜日感というか、祝日の感じが出てますよね。
──歌詞の舞台も同じマーケットだし。「Ob-La-Di, Ob-La-Da」にはデズモンドとモリーが出てくるけど、「DANDAN」にはビリーが出てくるし(笑)。
吉井 ビリーというのは、うちのファンクラブの名前が「BELIEVER.」なんですけど、それをもじって。それと、ツアーのうち熊本と福島でやったチャリティ企画にファンが集まってくれてる描写も入っていて。だから本当にファンの皆さんへのお礼ソングです。まあ、ヒーセの歌でもあるんですけどね。朝から古着を買いにマーケットに行くというのもそうだし、この曲の主人公はヒーセかもしれない。
アニー 「派手な着物のチンドン屋さん」も出てくるし。
吉井 それはヒーセがお父さんからよく言われていたことなんですよ。
ヒーセ 僕の実家は洋品屋なんですけど、商店街のオヤジ同士で会話するときに、言われてたらしいんですよ。「お前んちのセガレ、チンドン屋みたいな恰好してるな」という、そういう描写です(笑)。
吉井 廣瀬さんは足立区で、僕は北区で、僕らが共通で知ってる商店街があって、そのへんへの思いも入ってます。
──いいですねえ。めっちゃローカル。
吉井 めっちゃローカルですよ。
──でもこれ、すごくいいメッセージですよ。「どんな夢も叶えるバンドができたよ」って。「始まったばかりで、そんな気にしないでいいよ」とか。
吉井 これから何かやろうとしている若い方たちにも、響く部分はあるかもしれない。
ツアーを回ってきた今のグルーヴで仕上げられた
──この曲、プレイヤーとしてはどのあたりがポイントですか?
アニー 最初に曲をもらったときに「70年代のグラムロックだな」と思って、ドラム的にも頭の中でそういう音が鳴るには鳴るんですよ。でもそれをそのまま当てはめるのも違うと思ったんで、今までのTHE YELLOW MONKEYにとってありそうでなかったアプローチをしてるんですね。普通の8ビートだけど、ハイハットはほとんど叩かない。そういうアプローチはインディーズ時代にちょっとありましたけど、デビューしてからは全然やったことがなかったので、それがすごく新鮮でしたね。グラムロック風に聴こえるけどそうじゃないという。
エマ アマチュア時代とかデビュー当時にやっていたようなグラム色の強い世界観と、メジャーコードの明るいポップな感じがあって、懐かしさを感じました。これだけ年月を重ねてきた自分たちがそれを鳴らせたら楽しいだろうなって、率直に思いましたね。当時はお金がなかったら機材も安いのしかなかったし、ビンテージのエフェクターとかも使えなかったけど、今回はそういうものを使うこともできたし。でも全部ビンテージだと面白くないからアンプは最新のもので鳴らすとか、そういう楽しみ方も含めていろんなことができましたね。
ヒーセ 僕らが最初に集まったときに「こういう音楽をやろう」と言った音楽性が、いわゆるブリティッシュグラムロックで、30年経ってまたそこに立ち返れたというタイミングもすごくよかった。それをそのままやるのではなく、アニーのドラムにループ感があったり、現代のアーティストがサンプリングするようなものを人力で叩いてるカッコよさがあるのがいいなと思いますね。鼓笛隊とか行進曲、マーチングの要素もあって、そういうものを大々的に表に出したものは今まであんまりなかったですしね。それをずっとツアーを回ってきた今のグルーヴで、今のバンドサウンドでうまく仕上げられたなと思ってます。
──そして12月4日、「9999」の“完結版”と銘打ってリリースされるのが、「『9999+1』-GRATEFUL SPOONFUL EDITION-」。豪華写真ブックレットやライブ映像もパッケージされた中に、ツアーでずっとSEとして流れていた「ボナペティ」が、アルバムの一部として収録されるという仕掛けになっています。
吉井 「ボナペティ」は「9999」に入れる予定だったんですよ。アメリカで録ってくる予定だったんですけど、間に合わなくて、あとから日本で録って、ツアーのSEに使ったものを今回入れました。後出しですね。
アニー まあでも、アルバムに入れたかったという意味ではこれが完全版ですね。「9999」の本来のイメージはこれに近い。でもツアーをやったからこそ、「ボナペティ」が入ることによってライブに来た人は回想してくれると思うし、来てない人はライブをイメージしやすくなってると思います。
エマ そうだね。
吉井 言い訳だけど「9999」に入ってたらSEにはなってなかったから。だからこれでよかった。
──かなりメッセージ性の強い歌詞ですよね。「砂漠にガソリンまき散らし」って、ツアーへの予告めいたフレーズから、「しゃーない、転がり続けるか」という決意めいた言葉もあって。
吉井 まさにツアーが始まるときの自分の気持ちだったんですよね。意思表明というか、それは入ってると思います。
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「9999+1」はツアーを経てコンプリートした作品