音楽ナタリー Power Push - The Mirraz
EDM傾倒の理由
こんなに激しくて攻撃的なサウンドがあるんだ
──そういう自己分析や葛藤を経て、今作のサウンドにたどり着いたと。
そうなんですよ。EDMって言ったら、一般的にイメージがチャラいじゃないですか。だけど、今作でThe Mirrazが取り入れた音は全然チャラいとは思ってなくて。すげえ新しい音を作ったという自負があるんですよ。ただ、EDMというキーワードを使うと「そっちに行くの?」って思われると思うんですけど。今はJ-POPでも散々EDM的なアプローチが取り入れられているから表面的に誤解される向きもあると思うけど、俺からしたらこんなに激しくて攻撃的なサウンドがあるんだという感じなんですよ。
──あくまでロックバンドとしての発想で取り入れてると。
そう。例えばヘヴィロックとかを聴いて、攻撃的なギターのディストーションやファズを刺激的な音だと捉えてるリスナーに、今作のシンセの音を聴かせたら「こんなヤバい音があるんだ!?」って思わせる自信があるんですよ。それくらい攻撃的な音を作れたと思ってる。こんなサウンドはほかにないし、だけどこれはEDMかと言ったらそうじゃなくて、ロックとして攻撃的な音を出してるから。
──それは作品を聴いてすごく理解できるんですよ。だから、別にEDMってうたわなくていいんじゃないかなって思ったんです。
そうですよね。わかりやすいキーワードを出すと誤解する人もいるとは思うし、EDMというのはあくまで要素であって、「全面的にシンセを取り入れたロックを鳴らしてます」ということをちゃんと理解してもらうのが一番だとは思うんですけど。でも、一方で「EDMならEDM、ロックならロックにしてください」ってジャンルをはっきりさせたがるリスナーもいて。そういうのを見てると、それが日本人の感覚なのかなって思っちゃう。パッと見てわかる象徴的なキーワードが重視されるし。The Mirrazのサウンドって常にギリギリのところを攻めてるんだけど、その姿勢が伝わってないのかなとは思いますね。
──今までギターをメインにサウンドを構築してThe Mirrazのロック像を打ち出していたところから一転して、全面的にシンセを導入することにためらいはなかったんですか?
それは全然なくて。むしろ「OPPORTUNITY」のときもシンセを導入したかったし、作品を作っていく中でシンセやキーボードを足していきたいとは思ってたんです。でも、ライブで再現することを考えると、あんまり同期は使いたくないって思ってて。サポートメンバーを入れるのもめんどくさいし。でもEDMを取り入れることで、大胆にシンセを入れられるようになったというか。
──なるほど、EDMというキーワードがあったからこそ振り切ることもできたと。
そうそう。それはありますね。
リスナーに納得してもらえる自信はある
──今作を聴いて思ったのは、結局、畠山さんの歌詞も含めたThe Mirrazの音楽性の攻撃性や過剰さを今一番出せるのがシンセの音なんだという。
うん、そうですね。今までも頭の中でこういう音が鳴ってたんだけど、それがギターじゃなくてシンセだったんだということもわかって。そこで感情表現の幅もグッと広がって、メロディや歌詞をより前に押し出してくれるサウンドを作れた。明らかに表現の豊かさは増してると思うし、そこをちゃんと感じてもらえたらリスナーに納得してもらえる自信はすごくあります。
──歌詞の筆致においては、改めてたがが外れたという意識はあるんですか?
そこはニュアンスがちょっと違って。メジャーに行くまでは、言いたいことを言いまくるというより、「誰もいないところに行きたかった」という意識だったんですよ。「これは誰も歌詞にしてないでしょ?」というところを狙っていて。
──なるほど。
だけど、メジャーに行ったらNGな表現も出てきちゃって。レーベル的にというより、社会的にNGでしょみたいな空気があったので。でも、そうなると「The Mirrazって何をやりたかったの?」という話になっちゃった。作詞に関してもメジャーのやり方に慣れちゃってたから、今作はそこから離れるのがすごく大変だったんですよ。その上で、例えば「土曜の原宿マジでクソ」とかは、タイトルをそのままTwitterに投稿したら炎上するかもしれないけど、なんでそういう気持ちになったのかという裏付けをちゃんと自分の中で用意してから歌詞を完成させたんです。それは音に関してもそうで、イントロを聴いただけで「土曜の原宿マジでクソ」というムードを伝えるサウンドにしようと思った。だから、今作の歌詞は初期のように「こんなこと誰も歌詞にしないよね」「攻撃性や勢いがものすごくあるよね」で終わらせるのではなくて、そこからさらに作品として昇華させることを意識しましたね。
最低2年はこのアプローチを続けたい
──この方法を今後さらに突き詰めたいと思ってるんですか?
そうですね。お客さんが今のThe Mirrazを受け入れるのも時間がかかると思うし、ライブでも普通のロックバンドとは違うノリを作りたいので。だから、最低2年はこのアプローチを続けたいと思ってます。
──ひと口にEDMと言っても、エレクトロサウンドという言葉に置き換えればいろんなアプローチがあると思うし。例えばスクリレックスだってEDMの枠に入れられることもあるわけで。
ああ、確かにそうっすよね。
──そういう意味でもいろんな探求ができるのかなと。現にハッピーなエレクトロサウンドの「葬式をしよう」は歌としてもシンプルにいい曲だなと思えるし、「いつでも死ねる」はDisclosureなどにも通じるような洗練されたダンスサウンドだなと思う。「もしも過去に行けたなら」のダブ、レゲエ的なアプローチも新鮮だし。
そう、どちらかと言うと、ずっとシンセでやりたかったのは「葬式~」とか「いつでも死ねる」とか「もし過去」みたいな曲だったんですよ。だから、自分でもすごく満足していて。
──ここからまたバンドは新たなフェーズに入るわけですね。
そう思ってます。今回、一番強くイメージしていたのはThe Mirrazの1stアルバムをもう一度作るということで。1stアルバムにあった勢いをもう一度取り戻そうと。さっきも言ったようにバンドを続けるとどうしても落ち着いてきちゃうし、俺が好きなバンドもそういう人たちが多いんだけど。それはそれでいいじゃんという考え方もあると思うけど、俺はそこに抵抗したかったんですよね。こうやって新しい要素を取り入れたことで、音楽的に純粋になれたし、勢いも出すことができた。だから、これは新たな1stアルバムだと思ってますね。
──PAや照明なども含めて、ライブの作り方もかなり変化していくでしょうし。
ライブもちゃんと時間をかけてエンタテインメントとして確立したいなと思ってます。パフォーマンスも演出もまだ完成してないし、EDMを取り入れたのも最近なので。EDMのフェスを参考するわけにもいかないし、ロックバンドのアティチュードでライブを作るのも違うわけで。まずはアルバムのツアーで試して、ここからどんどん進化させていけたらと思ってます。時間をかけて自分たちなりの正解を探っていきたいですね。
- ニューアルバム「しるぶぷれっ!!!」2016年2月10日発売 / DEATH PYRAMID RECORDS
- 「しるぶぷれっ!!!」
- 初回限定盤 [CD+DVD+グッズ]5555円 / DQC-9045
- 通常盤[CD]3000円 / DQC-1514
CD収録曲
- マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。
- まざーふぁっかー!!!
- え?それはアレですか?
- イヤーワームラブソング
- パンドラの箱、ツンデレっすね
- つーか、っつーか
- いきなり告白とかしない方がいいと思う
- 葬式をしよう
- なぁ?なぁ?なぁ?
- 土曜の原宿マジでクソ
- いつでも死ねる
- もしも過去に行けたなら
- MA・ZI・CA!(IKINARI Remix)
- TUuuuuuuKA!(DOOPE Remix)
- PA・N・DO・LA!(SUPER Remix)
- SO・U・SHI・KI!(BLACK Remix)
- SHI・NE・LU!(HOUSE Remix)
- MO・SHI・CA・CO!(MAIAMI Remix)
初回限定盤DVD収録内容
- ライブ映像
2015「PYRAMID DE 427 part8-BATMON-」@ShibuyaWWW
初回限定盤付属グッズ
腕時計、絵本、ステッカー、缶バッジ
ツアー情報
The Mirraz 2016SS TOUR「汁不符列!!!」
- 2016年2月24日(水)千葉県 千葉LOOK
- 2016年3月4日(金)長崎県 Studio Do!
- 2016年3月5日(土)福岡県 LIVE HOUSE CB
- 2016年3月11日(金)香川県 DIME
- 2016年3月12日(土)岡山県 PEPPERLAND
- 2016年3月25日(金)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2016年3月27日(日)北海道 BESSIE HALL
- 2016年4月1日(金)石川県 vanvan V4
- 2016年4月2日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2016年4月9日(土)愛知県 ElectricLadyLand
- 2016年4月14日(木)広島県 HIROSHIMA 4.14
- 2016年4月15日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2016年4月17日(日)東京都 LIQUIDROOM
The Mirraz(ミイラズ)
2006年9月に畠山承平(Vo, G)を中心に結成されたロックバンド。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」を発表。UKロックの影響を感じさせるサウンドや攻撃的なパフォーマンスで注目を集める。2011年に自主レーベルKINOI RECORDSの立ち上げと同時に、佐藤真彦(G)と中島ケイゾー(B)が正式加入。2012年7月にEMI Music Japan(現Virgin Music)へ移籍し、10月にメジャー第1弾シングル「僕らは / 気持ち悪りぃ」を、2013年2月にメジャー1stアルバム「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」を発表。2013年10月に新ドラマー新谷元輝の正式加入をアナウンスし、2014年5月に新谷加入後初音源となるシングル「この惑星のすべて」を発売する。2015年にメジャーレーベルを離れ、主宰レーベルDEATH PYRAMID RECORDSを設立。2016年2月にアルバム「しるぶぷれっ!!!」をリリースした。