The Floor|フロントマン&コンポーザーが語る ちょっと大人になった4人の「ウェザー」

つらくなってる人に手を差し伸べたくなる

──ハヤトさんが感じるこの半年の変化は?

ササキ 歌詞ですかね。作品として長く聴けて、自分にも沁み込んでくるものにしたかったし。限定的にしないでもっと広い想像ができる、いろんな人に伝わるような歌詞を書きたくて。「Cheers With You」で言うなら、曲自体は明るいパーティソングだけど、そういうイメージだけで歌詞を書くのはなんか浅い気がしたんですよね。だったら、明るい要素を入れつつ、憂鬱を抱えた人にも伝わるように暗い部分も出してみようと。それが僕らしい感情でもあったりするので。横ノリのアレンジもうまくハマって、直接的な応援歌よりは聴きやすくなったのかなと思います。

──サビ以外の部分は、意外とシリアスな言葉が並んでるんですよね。

ササキ 実はそうです。もし落ち込んでた人が聴いてくれたとして、何かしら響くものがあったらうれしいなっていう気持ちなんですよね。明るいだけの歌詞を書きたいと考えたこともありますよ。でも、書いてるうちにどうしてもバカバカしくなっちゃって(笑)。ライブの打ち上げで先輩のバンドに「歌詞って、思ってないことも書きます?」なんて聞いたときも、「俺は書かないなあ。いやー、書いたとしてもさ……ねえ?」みたいな答えで、「やっぱりそうだよな。本当に思ってないことを無理やり歌詞にしたところで何も伝わらないだろうし、歌ってても楽しくないや」って再確認したり。僕は根が明るいタイプじゃないので、つらくなってる人に手を差し伸べたくなるのかな。そういう側面が今作にはたくさん出てることに、完成してから気付きました。けっこう男前なんですよ、曲の主人公が。

──確かに前作「Re Kids」までのキッズ感のある歌詞から一歩踏み出した気がしました。

ササキハヤト(Vo, G)

ササキ ですよね。主人公が僕の理想と言うか、なりたい自分像で。聴き手を引っぱっていくような曲が多いなと感じます。ナガタが悩んでたのと同じく、僕も納得がいくまで歌詞を試行錯誤して。この半年で感じたことが反映されているんじゃないかな。

──今作のハヤトさんの歌詞は、悪い状況から浮上するイメージをしやすいですよね。

ササキ ああ、そう思ってもらえるのはうれしいです。

ナガタ 浮上するイメージっていうのは、バコーンと腑に落ちた感じですね。ハヤトの変化をなんとなくはわかってたんですけど、今の話を聞いていろいろクリアになってきました。ツアーで見たお客さんの表情とかも絶対に影響あるよね?

ササキ うん。ライブ中に笑顔のお客さんを見ると、僕はすごくうれしくなって。そこから、お客さんを引っぱっていきたい、笑っててほしいって伝える歌詞を書くように変わってきたんだと思いますね。今は曲を作る段階で、なんとなく聴いた人の顔が見えるんです。The Floorの曲を聴いてどんな気持ちになって、どんな顔になるか、みたいな。「灯台」ではどん底にいる人の闇を晴らす画をイメージして、力強さをより前面に出しました。思った以上に広い景色が浮かぶ歌詞になったので、アレンジも壮大に化けた感じがするなあ。

ナガタ 歌詞に引っぱられて、アレンジが壮大になったのは新しかったね。間奏の後半では、荒波に立ち向かっていく感じを精一杯のギターソロで表現したつもりです(笑)。

生きてれば晴れの日も雨の日もあるよね

──アルバムのタイトルを「ウェザー」としたのは?

コウタロウ(Dr, Cho)

ナガタ 曲が出そろってから、最後の段階でコウちゃんに付けてもらったんですけど、今回は人生の部分部分を切り取った歌詞が多いんです。それを受けて、生きてれば晴れの日も雨の日もあるよねと。人生を天気に例えた結果「ウェザー」になりました。

──ライフと言い換えられそうですね。

ナガタ 実際、「ライフ」っていう案もありました(笑)。

──でも1曲目の「灯台」から嵐のシチュエーションを歌ってるし、ほかの曲にも「雲」「空」といったワードが出てきますもんね。

ササキ そうなんですよ。「さすがコウちゃん!」って感じで、満場一致で「ウェザー」でした。

──そのコウタロウさんが作詞した「はたらく兵隊さん」は、サウンドや歌詞がインパクト抜群です。

ナガタ そうですね。イントロだけかなり昔にあって。おバカというか、ちょっと抜けたサウンドを作るのに当時ハマってたんですよ。最初はギターのフレーズから作ってて、そこにヨウジがあのベースラインを持ってきて面白くなった感じで。これも遊び心が詰まった曲になりました。

ササキ なんか最近になって、僕とコウちゃんの選ぶワードが少し似てきてるんですよね(笑)。「ウェザー」でも、まるで意識を共有してるみたいに重なる部分が多い。なんでだろう?

ナガタ ツアーを回って時間を共にする中で、ハヤトのシニカルな心情まで汲み取ってたりして(笑)。

──「ウィークエンド」はどうですか? ビターでメロウなサウンドも、優しさと寂しさを感じる詞世界もめちゃくちゃ素敵だし、全体のいいアクセントになってる曲だと思います。

The Floor

ササキ ありがとうございます! ナガタもお気に入りだもんね、「ウィークエンド」。これはナガタが曲を作ってきた段階で、狂気をはらんでたような感じだったんですよ。

ナガタ きれいな曲にもできたんですが、日常に潜む狂気的なものを表現したくなってしまって、こういうメロディにしました。2番のAメロ後のギターのツインリードはデモのときにもうあって、そこもファズで思いっきり歪ませた音色にしたり。なんて言うのかな……「今日笑ってた人が明日誰かを殺しちゃう」みたいな。言葉は悪いですけど、サイコパス感が出てるイメージってのを、ハヤトに伝えて歌詞を書いてもらって。

ササキ なんにでも“慣れ”ってあるじゃないですか。当たり前じゃなかったことをどんどん当たり前として受け入れてしまう自分だとか、悲しいことも悲しくなくなっていくとか。そういうのが嫌だし、恐いなと思って。“当たり前みたいで当たり前じゃない日常”のようなものを書きたかったんですよね。引っぱっていくのとはまた違う、淡々とした曲をちょうどやりたいと思ってたときにナガタが作ってきてくれたので、「ウィークエンド」では、すごく楽しんで歌詞を書けました。

ナガタ アコギとエレキを重ねて、(エフェクターの)コーラスをふわっとした感じにして、日常感と非日常感が共存するような雰囲気をうまく作ることができたかなと思います。歌とバンドの音の境界線をぼやけさせるというか、それこそ歌詞に出てくる、幽霊が潜んでるみたいな。だから、ミックスのときにリバーブも多めにかけたし。

──お話を聞いていて、The Floorらしい素直さはそのままに、歌詞やサウンドのアプローチがしっかり進化しているのがよくわかりました。

ナガタ うれしいです。全体的に、前よりキッズ感は少し抜けたかもしれません(笑)。

ササキ 少しだけ大人になれたね。以前はもっと自分勝手なことを歌ってて、何かを投げかけると言うよりは投げつける感じだったと思います。それに比べたら、今は聴いてくれる人とキャッチボールができるような曲が作れているんじゃないかな。

The Floor
The Floor「ウェザー」
2017年6月21日発売 / lilc
The Floor「ウェザー」

[CD]
1728円 / LILC-1001

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収録曲
  1. 灯台
  2. ノンフィクション
  3. Cheers With You
  4. ウィークエンド
  5. はたらく兵隊さん
  6. ラブソング
  7. DRIVE
The Floor Presents「天井知らずワンマンツアー」
  • 2017年7月7日(金)
    東京都 下北沢SHELTER
  • 2017年7月21日(金)
    北海道 COLONY
  • 2017年7月30日(日)
    大阪府 LIVE HOUSE Pangea
「ウェザー」発売記念インストアライブ ミニライブ+特典引換会
  • 2017年6月25日(日)
    北海道 タワーレコード札幌ピヴォ店
    START 15:00
  • 2017年7月2日(日)
    大阪府 タワーレコード難波店
    START 15:00
  • 2017年7月3日(月)
    東京都 タワーレコード新宿店
    START 19:00
The Floor(フロア)
The Floor
2012年10月に結成された北海道札幌市在住のギターロックバンド。メンバーはササキハヤト(Vo, G)、ナガタリョウジ(G, Cho)、ミヤシタヨウジ(B, Cho)、コウタロウ(Dr, Cho)の4人。札幌を中心にライブ活動を展開し、2016年5月に初の全国流通作品となるミニアルバム「ライトアップ」を発表する。同年8月、一般公募枠「RISING☆STAR」の1組に選出されロックフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO」に初出演する。12月に4曲入りCD「Re Kids」をリリース。2017年6月に2ndミニアルバム「ウェザー」を発表する。