ナタリー PowerPush - THE COLLECTORS
ベテラン“ローカルバンド”の胸の内
青い歌詞でも別に恥ずかしくない
──歌詞は青さを感じさせるものが多いですよね。
加藤 そうですね、「青春ロック」とかね。俺も50過ぎて「校庭」とか「教室」って歌うとは思わなかったですよ、ほんっとに。
──今53歳の加藤さんがこういった歌詞を書くとき、現実の自分との距離感に戸惑うことはないですか?
加藤 若い人には僕らの気持ちはわかんないと思うんだけど、何歳になってもやっぱり19歳の自分っていうのは忘れられないんですよ。そのとき起きた出来事とか。19歳の自分は53歳の自分をまったく想像できなかったけど、53歳の自分は19歳の自分もわかる。だから「青春ロック」みたいな歌詞を歌っても別に恥ずかしくないですね。
──どの年代の感覚もすぐに引き出せると。
加藤 うーん、っていうよりも人間って小学4年生くらいに完成されてるからね。そこで好きな女のタイプとか全部決定されて自分が作られる。以降はそれをただずっと長くやるだけだから。
古市 俺は「小3説」を前から言ってるけど。そこでオリジナルができるよね。
──そんな早いうちから自分が作られるものなんですね。
古市 振り返ってみるとまさにそうだよ。
加藤 俺はそれが小学校4年だったから「小4説」。コータローくんは都内で育ったから「小3説」。
──都内は関係あるんですか?
古市 あの頃は大いにある。
加藤 大いにあるよね。埼玉県(加藤の出身地)はちょっとタイムラグがあるから。
古市 今みたいに、どこ行ってもコンビニがあって魚民があってっていう時代じゃないんですよ。実際、雑誌だって何日も遅れて発売されたりね。
加藤 関東圏にいればテレビだってタイムリーに観れるけど……。
古市 そうそう。1週間遅れて放送されたりするもんね。
ロックバンドはアイドルに勝てない?
──先ほど古市さんが「今じゃ加藤くんもアイドル聴く」と言っていましたが、加藤さんは先日ラジオで乃木坂46の「君の名は希望」を絶賛していたそうで。
加藤 超いいよね。ほんっとに、あんなにすごい詞ないよ。もう……泣いたもんね。俺コータローくんにこう言ったんですよ、「あんな乃木坂みたいな歌出されたらロックバンド負けちゃうよ」って。そしたらコータローくんが「勝ったことねえじゃん」って言って、確かにそうだよなあと。ロックバンドはずっと「シェキナベイビー」みたいなことしか言ってないもんなあと思って(笑)。負けるっていうか、最初から勝負になってねえじゃんって、ちょっと目からウロコでしたね。勝ったことないんだよ、ロックバンドはアイドルに一度も。売上では。そして、すべてにおいて。
──古市さんは、ロックバンドはアイドルに勝てないものだという認識が?
古市 アイドルっていうか、歌謡界ね。まあ勝負しようとしたら勝てないでしょうね。勝負する場所が違うと思ってるけど、単純にそういうとこの曲のクオリティに迫ろうと思ったら並大抵じゃないだろうね。プロ中のプロが会議開いて作ってるわけだから。
加藤 作曲者もすごい連中を何十人も集めて、その中からコンペして一番いいやつを決めて、さらにそれをいじくりまわして。こっちが1人で必死にカリカリやってたってこれはなかなかね……。でもそこに勝ちたいのよ。どうしたら勝てるのかはちょっとわかんないけど。
──アイドルがライバルという状況に危機感がありますか?
加藤 危機感っていうか、もちろんロックンロールと歌謡っていうのは質感が違うから楽しみ方も違うんだけど。ぶっちゃけた話、メジャーのレコード会社からCDを出す人っていうのはCDの売上がすべてなんだよ。これだけは結果を残さないと。だからCDが棚に並んだ瞬間、ライバルはAKBでもあるしThe Birthdayでもある。CDを出してるありとあらゆる人がライバルになるんですよ。そこで要は「あいつらはアイドルだからね」とは言えない。となったら勝たなきゃダメですよ、秋元さんに。……握手券の代わりにビール券封入するべきだったねこれ。
──ははは(笑)。以前は「恋するフォーチュンクッキー Rock Musician Ver.」の動画(参照:「恋チュン」動画にコレクターズ、怒髪天ら30組以上が集結)も上げていましたし、最近の加藤さんからはアイドルのフィールドにも柔軟に入っていこうとする姿勢を感じます。
加藤 単純にいいものはいいって認めようと思ってるんですよ。それがクラシックであろうと、アイドルや歌謡だろうと、音楽ジャンル関係なく。「恋するフォーチュンクッキー」、あれはよくできてる素晴らしいナンバーですよね。名曲って言われるような歌謡曲はたくさんあるけど、あれだけ全国で人を踊らせられる曲って、僕の記憶する限り初めてなんじゃないかなあ。マイケル・ジャクソンの「Thriller」みたいなさ、みんなが踊りたくなるような曲を今の時代に作れたっていうのはもう奇跡に近いし、うらやましいですよね。あれをロックバンドがやったらもっとよかったのになって思いましたね。
──「恋チュン」にしてもそうですけど、コレクターズはロックバンドが躊躇するようなことをむしろ率先してやっているイメージがあります。キャリアの長さが足を引っ張ることはないですか?
古市 それは人それぞれだよね。自分を守りたい人もいるだろうし。俺らだって、例えば「加藤くんはあんなのやんないで自分のモッズのイメージを守ってほしい」って思う人もいっぱいいると思う。やりたくても我慢しちゃうアーティストも多いと思うよ。だから自分はそれを破ってでもやりたいことをやるのか、それはもう自分で決めるしかないんじゃない。そこで事務所なりメーカーなりに縛られるとかわいそうだけどね。
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- ニューアルバム「鳴り止まないラブソング」/ 2014年7月23日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4320円 / COZP-935~6
- 通常盤 [CD] 3000円 / COCP-38591
CD収録曲
- Da!Da!!Da!!!
- ミノホドシラズ
- 鳴り止まないラブソング
- 青春ロック
- 勘違い転じて恋となす
- 飛び込む男
- スルー
- カラカラベイビー
- 君が思うより
- 踊る運命線
- 夜明けのフェリー
- ボクらの未来を信じる理由
初回限定盤DVD収録内容
- RECORDING SESSION 1
- MILLION CROSSROADS ROCK(LIVE1)
- RECORDING SESSION 2
- ごめんよリサ(LIVE2)
- RECORDING SESSION 3
- TOO MUCH ROMANTIC!(LIVE3)
- RECORDING SESSION 4
- NICK! NICK! NICK!(LIVE4)
- RECORDING SESSION 5
- Da!Da!!Da!!!(LIVE5)
- プロポーズソング(LIVE6)
- 春鳥の羽ばたく空(LIVE7)
- GROOVE GLOBE(LIVE8)
- SONG FOR FATHER (DEMO TRACK)
- スルー(エンドロール)
- Da!Da!!Da!!!(MUSIC VIDEO)
THE COLLECTORS TOUR 2014 "DA! DA!! DA!!!"
- 2014年7月21日(月・祝)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2014年7月27日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 2014年8月2日(土)京都府 KYOTO MUSE
- 2014年8月3日(日)兵庫県 神戸VARIT.
- 2014年8月9日(土)鹿児島県 SR HALL
- 2014年8月10日(日)熊本県 DRUM Be-9 V2
- 2014年8月23日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2014年8月30日(土)福島県 club SONIC iwaki
- 2014年8月31日(日)岩手県 Club Change WAVE
- 2014年9月5日(金)石川県 vanvan V4
- 2014年9月13日(土)香川県 高松MONSTER
- 2014年9月15日(月・祝)鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2014年9月20日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2014年9月21日(日)広島県 ナミキジャンクション
- 2014年9月23日(火・祝)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
- 2014年9月27日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2014年10月11日(土)群馬県 高崎club FLEEZ
- 2014年10月13日(月・祝)静岡県 Shizuoka UMBER
- 2014年10月19日(日)北海道 cube garden
- 2014年10月26日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2014年11月1日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2014年11月3日(月・祝)長野県 LIVE HOUSE J
- 2014年11月8日(土)大阪府 BIGCAT
- 2014年11月9日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2014年11月15日(土)沖縄県 桜坂セントラル
- 2014年11月22日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
THE COLLECTOR(コレクターズ)
1986年に加藤ひさし(Vo)を中心に結成。1987年に「僕はコレクター」でデビューすると同時に、ブリティッシュロック、サイケデリック等のエッセンスを取り入れたサウンドが話題を集め、日本のモッズシーンを代表するバンドとして認知される。2014年3月に小里誠(B)が脱退し、加藤、古市コータロー(G)、阿部耕作(Dr)にサポートベーシストの山森 JEFF 正之を加えた体制となる。同年7月に20枚目のオリジナルアルバム「鳴り止まないラブソング」をリリース。ポップなメロディと洗練されたアレンジ、激しいライブパフォーマンスはモッズの枠を超えて多くのロックファンの支持を集め、結成から28年経つ今もシーンの第一線で活躍し続けている。