未完成な部分が残っているものほど、色あせない魅力がある
──「Timeless Imperfections」というタイトルは、どういった経緯で付けられたのでしょうか?
そもそも、DISC 1に入っている「Imperfection」という曲と、DISC 2に入っている「タイムレス」という曲があって、今年に入ってから自分が作った曲の中で特に気に入っているのがこの2曲だったんですよね。この2つの言葉をくっつけると、「色あせない未完成」っていう言葉になりますよね。意味としては矛盾しているように思われるかもしれないけど、すごくいい言葉だなと思ったんです。普通、色あせないものって、完璧なものだと思われがちじゃないですか。
──そうですよね。特に音楽は、そういうイメージがあるかもしれないです。
でも僕は、未完成な部分が残っているものほど、色あせない魅力があるんじゃないかと思うんです。例えば、今でも聴かれ続けている昔の音楽って、細かいミスがあったりするんですよね。でもそれが、その音楽が色あせない理由にもなっているような気がして。そう考えると、「Timeless Imperfections」って、すごくいい言葉だなって思ったんです。
──なるほど。
僕自身、これまでもずっと、「色あせない曲を作りたい」という気持ちと、「自分は未完成なんだ」っていう気持ちを一緒に持ち続けていたとは思うんですけど、今年に入ってから、自分の未完成さに対して「それででいいんだ」って思えるようになった気がするんです。受け入れたとも言えるし、いい意味であきらめたとも言えるんですけど、とにかく、前向きになれた気がするんですよね。「あれがない、これもない」と嘆くのではなく、自分の中にある素材で料理をする感覚が、身に付いてきたと言うか。
──なぜ、ご自身の未完成さを受け入れられるようになったのでしょう?
正直、「タイムレス」を作った頃……まあ、今年の夏なので最近なんですけど、その頃にすごく悩んでいたんです。ナタリーさんでこんなことを言うのもなんですけど、「メジャーに行って音楽シーンを変えてやる!」と言っていた人たちが、結局音楽シーンに変えられてしまうことって、よくあるじゃないですか(笑)。
──はい(笑)。
自分は、そうはなりたくないなって思ったんですよね。僕はメジャーデビューするからといって変わりたくはない。ただ、進化はしたいんですよ。そんな、すごく曖昧なところに自分の気持ちがあったんです。でも、その悩みを無理やり解決させようとして生まれてくる曲たちが、どうしても、自分の中で不自然な感じがしたんですよね。でも結局、悩んだ末にわかったのは、それが未完成な自分であっても、今の自分が写真のように写り込んでいる音楽を作るしかない、ということだったんですよ。それがきっと、色あせない曲になるんです。
──確かに写真って、瞬間を切り取ったものだから、現実の時間が経っても色あせずに残りますもんね。そうやって音楽を作っていく覚悟ができたタイミングだったんですね。
そう。なので「タイムレス」がアルバムの着火点になったんです。この曲ができてから生まれた曲は、自分にとって不自然でないものになっていきました。
“今”よりタイムレスなものはない
──DISC 1の4曲目「カルペ・ディエム」の曲名はラテン語で「その日を摘め」という意味なんですよね。この言葉も、チャームさんの人生や音楽におけるスタンスを表しているのかなと思いました。
「カルペ・ディエム(Carpe Diem)」は、映画で有名になった言葉なんですよね。ロビン・ウィリアムズ主演の「いまを生きる(原題:Dead Poets Society)」という80年代の映画があって、僕はその映画を学生時代に観て、この言葉を知ったんです。「カルペ・ディエム」は日本郵便のWeb CMで使われている曲なんですけど、いただいたテーマが「若者に勇気を与えるような曲を」というもので。そのテーマをもらったときに、ひさしぶりにこの言葉が思い浮かだんですよね。でも「今日を生きる」とか「この日をつかむ」って、決して若者だけに当てはまる言葉ではないですよね。誰しもが、1日1日を思い切り生きることは素晴らしいことだと思います。
──お話を聞いていて思ったのは、タイムレス、つまり“永遠”って、“今”ということなのかもしれないですね。
うん、そういうことだと思いますね。“今”って、常に変わっていくものじゃないですか。僕が“今”という言葉を発した、その瞬間にもうその“今”は過去になって、新しい“今”が生まれているんですよね。でも、それが“今”であるということは、ずっと変わらない。“今”よりタイムレスなものって、ないと思います。だからこそ、自分にとっての“今”が未完成なものであっても、それを受け入れることで、人生は変わっていくんだと思いますね。その人の幸せ度が変わる、と言うか。
──あと、印象的だったのは、DISC 2の2曲目「くちづけ」で、「日が暮れたら 口ずさんでるメロディーは一旦 置いといてくちづけしてみようか?」と歌っている部分。音楽家の方が「口ずさんでるメロディーは一旦置いといて」と歌うのって、すごいことだと思うんですよ。でも、音楽が鳴っていないときの生活の静かな豊かさや、音楽以外でつながる人々との関係の大切さを知っていて、それが反映されるからこそ、チャームさんの作る音楽は特別なものなんだろうと思うんです。
なんと言うか……全部の曲がそうだとは言えないんですけど、今回のアルバムに入っているのは、「誰かに聴かせる」ということをすごく意識しながら書いた曲たちなんですよね。「誰か」がいなければ、ここに収められた曲たちは意味がないと言ってしまえるぐらいの気持ちで作ったので。聴く人がいなければ、ここに収められた音楽はなかったかもしれない……そういう思いは出ているかもしれないですね。
──最後に、自身のパーソナリティを表現した音楽を世に発表していくことに対して、恐れのような感情は、チャームさんの中にはないですか? 今作を聴いていると、本当にチャームさんのいろんな思いや人物像が見えてくるんですよ。そういう作品が世に出るというのは、少なからず勇気がいることでもあるのかなと思うんです。
まあ、そういう仕事ですから(笑)。
──ははは(笑)。
でも、もちろん「僕はこう思ってます」「僕はこういうことで悩んでいます」って、僕は自分自身を表現するように曲を作りましたけど、それを聴く皆さんに「これはTHE CHARM PARK自身の話だ」と、ことさら意識して聴いてほしくはないんですよね。歌詞を英語と日本語で分けている理由は、それもあって。細かく僕の話を聞くように受け止めるのではなく、もっと自然に音楽を楽しんでほしいし、その中で、英語だろうが日本語だろうが少しだけでも聴いた人それぞれの人生に刺さる言葉があれば、それでいいなと思うんですよね。
- THE CHARM PARK
「Timeless Imperfections」 - 2018年12月5日発売 / rhythm zone
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[CD2枚組] 3402円
RZCD-86709~10
- DISC 1「Side-A」収録曲
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- 三十一
- アタック
- Imperfection
- マジック
- カルペ・ディエム
- Turn It Around
- ワンダーランド
- Leap of Faith
- DISC 2「Side-B」収録曲
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- タイムレス
- くちづけ
- Mothers
- 君の声が聴こえてくるよ
- For Me
- 休日
- フォー・ユー
- Put your love in it
- Always
- 公演情報
THE CHARM PARK
Timeless Imperfections Tour 2019 -
- 2019年1月14日(月・祝) 宮城県 enn 2nd
- 2019年1月18日(金) 大阪府 BananaHall
- 2019年1月20日(日) 福岡県 ROOMS
- 2019年1月25日(金) 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2019年1月27日(日) 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- THE CHARM PARK(チャームパーク)
- シンガーソングライター、Charm(チャーム)によるソロユニット。小学校3年生から高校生までアメリカ・ロサンゼルスで過ごし、その後ボストンの音大に進学。卒業後に再びロサンゼルスで24歳まで生活する。その後、日本にて音楽活動を開始し、2015年11月にTHE CHARM PARKとしての初作品となるミニアルバム「A LETTER」を発表。叙情的で美しい楽曲とオーガニックかつダイナミックなサウンド、緻密なメロディで注目を集めた。また自身のソロ活動のほかに、ASIAN KUNG-FU GENERATION、V6、登坂広臣(三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、南波志帆らへの楽曲提供や、大橋トリオのツアーサポートでも活躍。2018年に配信シングルを3作リリースし、同年12月5日にメジャー1stアルバム「Timeless Imperfections」を発表した。