音楽ナタリー Power Push - The Birthday

“聴いたことのない曲”を求めて 8thアルバムに滲むバンドの現状

The Birthdayが10月21日に8thアルバム「BLOOD AND LOVE CIRCUS」を発表した。

9月にリリースされた彼らの10周年記念ベストアルバム「GOLD TRASH」のインタビューで(参照:The Birthday「GOLD TRASH」インタビュー)、「BLOOD AND LOVE CIRCUS」について「渾身のアルバムです」と語っていたチバユウスケ(Vo, G)。ニューアルバムには新曲9曲に、シングルリリースされた「I KNOW」「MOTHER」のアルバムバージョンを加えた全11曲が収められた。

このアルバムのリリースを記念して音楽ナタリーではチバとヒライハルキ(B)へのインタビューを行い、アルバム制作やバンドの現状について語ってもらった。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 小原泰広

聴いたことのないような新しい曲を作りたい

──今作は今までのThe Birthdayの作品の中でどういうふうに位置付けられますか。

左からヒライハルキ(B)、チバユウスケ(Vo, G)。

チバユウスケ(Vo, G) うーん……。今までの中では一番好きかな。最新作が一番好きじゃないとダメだなと俺は思ってるので。

──そうじゃなきゃ新作を作る甲斐がないですからね。

チバ そうそう。

──新しいアルバムを作るとき、何を求めていますか? 新しい自分に出会いたいのか、それともより自分を高めたいのか。

チバ 聴いたことのないような新しい曲を作りたいと思うけどね。「自分」がどうの、というよりも「曲」かな。

──「新しい曲」ってどういう曲ですか。

チバ オーソドックスでオーセンティックな曲であっても、俺たちの中で新しく聴こえるもの。同じ3コードでも、新しく聴こえる。そういうものを作っていきたいね。

──何が変わると新しく聴こえるんですか。

チバユウスケ(Vo, G)

チバ なんか変わるんだわ(笑)。何かが違う。同じコード進行でも。メロディの違いは大きいだろうけどね。

ヒライハルキ(B) なんだろうな……。演奏ですかね。いつも自分の思い描いたそのままの音を100%出してるつもりではあるんだけど、でも「そうでない部分」も絶対あるんですよ。もちろん満足はしているんですよ、完成したときは。

──「そうでない部分」とは?

ヒライ 俺の場合は「もっとできたのになあ」とか「こうしとけばよかったなあ」と感じる部分ですかね。あとで聴き返すと出てくるんですよ。でもレコーディングを重ねていくごとに、より自分の思い描いている理想の演奏に近付けている気はするんですよね。今までの自分からは出てこなかったフレーズを思いついたり。

──それはやっぱり、演奏する人でないとわからない感覚なんですかね。

ヒライ うん、すごく個人的なことですけどね。何年も前の音源を聴くと、全然違うから。

──何が違うんです?

ヒライ 全部違います(笑)。まず演奏してる気持ちが違うなってわかるし。ベースに対する考え方が今と全然違う。聴いてすぐわかります。

──具体的には?

ヒライ 具体的には……目立とうとしてる(笑)。

──あ、昔のほうが?

ヒライ うん(笑)。

──今はもっと溶け込もうとしてる。

ヒライハルキ(B)

ヒライ そうですね。最初からその曲にあったかのようなフレーズを目指してるから、今は。

──自分の作為が見えるようなプレイじゃなく、その曲を自然に生かすようなプレイ。そういうものを目指してきた。

ヒライ 目指してきた……というよりは、途中で考えが変わった。毎回録り終えて聴いて、録り終えて聴いて……を繰り返して時間が経つにつれ、自然とそうなっていった。

──なるほど。我々もそういうのはあるんですよ。作為が勝った文章は、あとで読み返すとけっこう恥ずかしい。

チバ ははははは!(笑)

──自然に書いたもののほうが、時間が経っても再読に耐えうるというか。

ヒライ うん。そういうことだと思います。すごくよくわかります(笑)。

今のほうが目立ってるんじゃない?

──チバさんはヒライさんと一緒に演奏していて、そういった変化は感じます?

チバ いや、全然わかんない(笑)。

ヒライ 俺もほかのメンバーに対しては、そういうことはあまり思わないですからね。

チバ 今のほうが目立ってるんじゃない?

ヒライ そうすか?(笑)

──自然にやっていると、結果的にそうなる。

チバ そういうことだと思うよ。

ヒライ そうか……。

チバ  “スカーン”と音が出てくるというか。

ヒライ ああ。(自分のプレイを)際立たせる術っていうのを知る時間だったんですかね……今までは。

──技術的な向上は大きいんですか。

ヒライ それは、自分ではわからないです。上達して今があるのかって言われると、そうでもない気がするし。

チバ 上達っていうか、熱がちょっと違うっていうか。そういう感覚なんじゃないかなあ。

ヒライ うん。

左からヒライハルキ(B)、チバユウスケ(Vo, G)。

チバ うまいのは最初からうまかったしね。ただその、歌に対する考え方っていうか……なぞる感じじゃなくて、たとえワンフレーズでも「それをどうやって弾くか」って考えることっていうか。もうちょいなんかこう……いろんな温度があるっていうかさ。ワンフレーズの中に。そういう感覚なんじゃないかな。

ヒライ うんうん。

チバ それを上達って言うんだろうけどね。

ヒライ そうかそうか。

──気持ちの込め方だったり。

ヒライ そうね。

チバ まさにその通り。

──気持ちの入れどころがわかってきた。

ヒライ きっとわかってない部分のほうがまだ全然多いんだろうけど。

──そのへんは正解があるわけじゃないから、試行錯誤ですね。

ヒライ うん。そうですね、きっと。

ニューアルバム「BLOOD AND LOVE CIRCUS」2015年10月21日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / UMCK-9774 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / UMCK-1523 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. FULLBODYのBLOOD
  2. MOTHER(BLC ver.)
  3. ROCK YOUR ANIMAL
  4. TWENTY FOUR
  5. LOVE SHOT
  6. SOMBREROSE
  7. DOOR
  8. Shan Shan
  9. BILLY BLACK
  10. I KNOW(BLC ver.)
初回限定盤DVD収録内容
  • レコーディング風景も交えた、メンバーによる全曲のセルフライナーノーツムービー
The Birthday(ザ・バースディ)

The Birthday

元THEE MICHELLE GUN ELEPHANT / ROSSOのチバユウスケ(Vo, G)を中心に結成されたロックバンド。2005年にイマイアキノブ(G)、ヒライハルキ(B)、クハラカズユキ(Dr)の4人体制で始動。2006年8月にデビューシングル「stupid」をリリースして以降精力的なリリースを重ね、2008年には初の東京・日本武道館公演を成功に収める。2010年8月に出演した「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010」を最後にイマイが脱退。2011年からは新ギタリストにフジイケンジを迎え、同年4月にシングル「なぜか今日は」、6月に5thアルバム「I'M JUST A DOG」を発表した。その後も精力的に活動を続け、バンド結成10周年となる2015年には5月と6月にシングル「I KNOW」「MOTHER」を2カ月連続リリースし、9月に初のベストアルバム「GOLD TRASH」を発表。10月には8枚目のオリジナルアルバム「BLOOD AND LOVE CIRCUS」をリリースした。