teto「手」 PR

小池貞利(teto)×R-指定(Creepy Nuts)|ヒップホップとオルタナティブに忍ばせた言葉のナイフ

tetoが9月26日に1stフルアルバム「手」をリリースした。これを記念して音楽ナタリーでは小池貞利(Vo, G)がかねてより話をしたかったというR-指定(Creepy Nuts)との対談をセッティング。ほぼ初対面ではあったが、同世代の2人はすぐさま意気投合し、互いの最新作を聴いて感じたこと、表現をするうえで根底にある考えなど、多岐にわたってトークを繰り広げた。小池とR-指定はなぜ聴いた人をハッとさせる言葉をつむぐことができるのか、この対話から読み取ってほしい。

取材・文 / 清本千尋 撮影 / 石井小太郎

通ずるものがきっとあると思った(小池)

──お二人がじっくりお話するのは今回が初めてなんですよね。

小池貞利(teto) 初めてです。でも自分の周りの人から「Creepy Nutsはたぶん小池と話合うと思うよ」って言われて気になっていて。

R-指定(Creepy Nuts) そうだったんですね。

小池 はい。それで最初に聴いたのが「みんなちがって、みんないい。」って曲。たぶん2年ぐらい前だったかな。ほぼ初対面の状態で言うのもアレなんですけど、聴いて「すごい性格が悪いなこの人」と思って。

R-指定 (笑)。続けてください。

小池 「ヤバいな」と思ったんですよ。その「ヤバい」ものを聴いて「性格が悪い」って捉える俺はさらに性格が悪いと思うんですけど。ああいう露骨に皮肉を込めた曲を作って発表するなんて、すごく面白いなあと思ったんです。同じイベントに何度か出ていたし、エイティーフィールドの青木勉(「BAYCAMP」などを企画するロックエージェント・エイティーフィールドの代表)さんの企画で沖縄でご一緒したときもあったんですけど……。

R-指定 そのとき締切が迫っている曲が全然できてなくて、僕は打ち上げに行けなくて。

左から小池貞利(teto)、R-指定(Creepy Nuts)。

小池 そうそう。そんなこともあってなかなかタイミングが合わなかったんですよね。今回はお忙しい中お時間を作ってくださってありがとうございます。俺、初対面の人と話すのがちょっと苦手なんですよ。この歳になるともう上っ面だけの会話なんてしたって意味がないってわかってるんで。でもRさんとはどうしても話してみたかった。通ずるものがきっとあると思ったんですよ。

R-指定 ありがとうございます。

たくさんラップも聴いている人が作ったんやな(R-指定)

R-指定 僕、tetoのライブをちゃんと観たことはないんですよ。今回「手」を一足先に聴かせていただいて、歌詞が読み物としてすごく面白かったです。

小池 ありがとうございます。うれしい。

R-指定(Creepy Nuts)

R-指定 それで僕、特にこのアルバムで「奴隷の唄」「市の商人たち」「洗脳教育」の流れが気に入ったんですよ。歌詞に共感することが多くて。あとどんな音楽から影響受けたのかがすごく気になりました。僕はラッパーなので、どうしてもラッパーの耳で曲を聴いてしまうんです。ラッパーの耳からして、きっとtetoの音楽はたくさんラップも聴いている人が作ったんやなと思いまして。音符じゃない言葉としてのリズムが気持ちよくて、「あっ、このライムの持っていき方は……」みたいなことをたくさん思いました。

小池 そうですね。Rさんからしたらほんの少しだと思うんですけど、ラップも聴きます。

R-指定 そんなそんな(笑)。例えば誰のラップを聴くんですか? 「奴隷の唄」のサビの韻の踏み方で、きっと志人(降神)さん聴いてんちゃうかなって思ったんですけど……。

小池 うわーすごい! そんなことまでわかるんですね。

R-指定 いやいや(笑)。僕、降神大好きなんですよ。周りにも降神信者が多くて。“お祈りの時間”とか言って、夕焼けに向かってラッパー仲間と降神の「あの海」を掛け合う気持ち悪い遊びがあるくらい(笑)。

左から小池貞利(teto)、R-指定(Creepy Nuts)。

小池 ヤバいっすね(笑)。俺も志人さんと降神の音楽はとても影響を受けています。最近マック・ミラーが死んじゃったじゃないですか。全然にわかなんですけど、あの人の「Knock Knock」でのサンプリングの使い方がすごく好きだっていう話をしたら、うちのベース(佐藤健一郎)も「いいっすよね。あのサンプリングに俺もすごいびっくりして」と返してきて。それまでベースがヒップホップを聴くやつだなんて知らなかったから驚いたんですけど、それからはいろいろと教えてもらっていて。

R-指定 なるほどなるほど。なんかそのテイストを節々に感じますよ。僕らがラップを始めた頃に盛り上がっていたアンダーグラウンドな人たちから影響を受けているバンドの人に会うのは初めてです。だから聴いていてうれしくなっちゃったんですよね。

小池 聴いていただけただけでうれしいのにそこまでわかってもらえるとは……自分が意図している部分が説明せずとも伝わるのはすごくうれしいですね。ありがとうございます。

フェスのバックヤードでみんなと仲良くなれない俺ら(小池)

R-指定 「奴隷の唄」のサビって「ドレミファソラシド」の音階から思いつきました?

小池 そうですね。

R-指定 やっぱり! そこから韻を踏んでいったみたいな。最後の「ドレミファソラシド」っていう歌詞を聴いたときにラッパーとしての勘で「あ、こっからいったんかな」って気付いて。“ドレミファソラシド”で韻を踏める言葉がまだあるんやって驚いたんです。

小池貞利(teto)

小池 もともとある言葉のイントネーションと歌のメロディはやっぱり違うので、メロディに乗せたときに違和感があったらイヤだなと思ったんですけど、うまくハマりました。

R-指定 僕はかなりこの曲に感動してしまったんですよ。そういうメロディと歌詞のハマった感じはもちろん、歌詞も僕ら世代が抱えているモヤモヤしたものが詰まっていて。

小池 フェスのバックヤードでみんなと仲良くなれない俺らみたいな(笑)。Rさんもきっとそうですよね?

R-指定 ホンマにそうですよ。僕は喫煙所と自分の楽屋しか行かないですし、相方の松永(DJ松永)は楽屋から一切出てこない(笑)。

小池 でもみんなは外で酒を飲んで楽しそうなんですよね。

R-指定 そう。フェスで大御所の人とか先輩たちがめちゃ仲良くしてるじゃないですか。特に僕はヒップホップ界隈からバンドのフィールドに足を踏み入れてるので外様の意識があって、ちょっと怖くて。フェスのバックヤードに「おはようございます」って挨拶しながら入っていくんですけど、もしかしたら僕が今普通に挨拶して通り過ぎた人はヒップホップ界隈で言うとZeebraさんぐらいの人なんじゃないかとか、いつも不安に思っています(笑)。

左から小池貞利(teto)、R-指定(Creepy Nuts)。

小池 今でこそロックフェスと言えど、ロックバンド以外のアーティストもたくさん出ていますけど、違う畑に入っていくのはやっぱり怖いですよね。俺だってクラブで演奏なんて絶対できないですもん(笑)。自分の畑と違うところで戦うにはやっぱりそれ相応の武器が必要じゃないですか。ヒップホップ界隈の人がロックリスナーと戦うためにいろんな武器を身に着けて戦っている姿を見るとグッと来ますし、気圧されますよ。

R-指定 フェスにたくさん出ているTHA BLUE HERBさんとかRHYMESTERさんみたいな先輩はいますけど、ラッパーはなかなかほかのジャンルのイベントに出ないんですよね。僕らももともとはそうだし。バンドさんはゲストを招いて全国ツアーとかするけど、ラッパーは受け身なことが多くて、新作をリリースすると各地で定期開催されているパーティにスペシャルゲストとして出て10分、15分やるだけ。ラッパーたちがもっといろんなイベントに出たり、自主的にイベントを開いて違うジャンルの人を招いたりしたらもっとヒップホップは面白くなっていくと思うんですけどね。だから僕らだってtetoとも対バンしたいと思うし。

teto「手」
2018年9月26日発売 / UK.PROJECT
teto「手」

[CD]
2808円 / UKCD-1173

Amazon.co.jp

収録曲
  1. hadaka no osama
  2. 高層ビルと人工衛星
  3. トリーバーチの靴
  4. 奴隷の唄
  5. 市の商人たち
  6. 洗脳教育
  7. 種まく人
  8. 散々愛燦燦
  9. マーブルケイブの中へ
  10. Pain Pain Pain
  11. 拝啓
  12. 溶けた銃口
  13. 夢見心地で
  14. 忘れた
teto ツアー2018「結んで開いて」
  • 2018年9月30日(日) 千葉県 千葉LOOK※ワンマンライブ、開催延期
  • 2018年10月3日(水) 埼玉県 Livehouse KYARA出演者 teto / tricot
  • 2018年10月4日(木) 神奈川県 横浜BAYSIS出演者 teto / POLYSICS
  • 2018年10月10日(水) 岡山県 IMAGE出演者 teto / MONO NO AWARE
  • 2018年10月11日(木) 福岡県 LIVE SPOT WOW!出演者 teto / MONO NO AWARE
  • 2018年10月13日(土) 熊本県 Django出演者 teto / 四星球
  • 2018年10月14日(日) 長崎県 Studio Do!出演者 teto / 四星球
  • 2018年10月16日(火) 京都府 磔磔出演者 teto / ザ50回転ズ
  • 2018年10月20日(土) 福島県 Out Line出演者 teto / paionia
  • 2018年10月21日(日) 岩手県 盛岡Club Change出演者 teto / paionia
  • 2018年10月25日(木) 長野県 ALECX出演者 teto / 八十八ヶ所巡礼
  • 2018年10月27日(土) 新潟県 CLUB RIVERST出演者 teto / Helsinki Lambda Club
  • 2018年10月28日(日) 石川県 vanvanV4出演者 teto / Helsinki Lambda Club
  • 2018年11月8日(木) 群馬県 GUNMA SUNBURST※ワンマンライブ
  • 2018年11月10日(土) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO※ワンマンライブ
  • 2018年11月11日(日) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO※ワンマンライブ
  • 2018年11月15日(木) 宮城県 enn 2nd※ワンマンライブ
  • 2018年11月17日(土) 北海道 BESSIE HALL※ワンマンライブ
  • 2018年11月29日(木) 香川県 高松TOONICE※ワンマンライブ
  • 2018年12月1日(土) 福岡県 DRUM SON※ワンマンライブ
  • 2018年12月2日(日) 広島県 HIROSHIMA 4.14※ワンマンライブ
  • 2018年12月7日(金) 東京都 LIQUIDROOM※ワンマンライブ
  • 2018年12月27日(木) 千葉県 千葉LOOK※ワンマンライブ

※記事初出時、福岡公演の会場をLIVE HOUSE CBと記載しておりましたが、DRUM SONの誤りです。訂正してお詫びいたします。

Creepy Nutsワンマンツアー
「クリープ・ショー 2018」(※追加公演)
  • 2018年10月12日(金) 石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2018年10月13日(土) 新潟県 NEXS Niigata
  • 2018年10月17日(水) 宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2018年10月19日(金) 北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2018年10月24日(水) 東京都 Zepp Tokyo
  • 2018年10月26日(金) 大阪府 ユニバース
  • 2018年10月27日(土) 香川県 高松MONSTER
  • 2018年11月7日(水) 広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2018年11月9日(金) 福岡県 DRUM LOGOS
  • 2018年11月13日(火) 愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2018年11月16日(金) 沖縄県 Output
teto(テト)
teto
2016年1月に小池貞利(Vo, G)を中心に山崎陸(G)、佐藤健一郎(B)らが結成したロックバンド。小池がつむぐ焦燥感や葛藤を詩的に昇華した歌詞とキャッチーなメロディ、熱量の高いライブパフォーマンスで話題を集め、2016年10月にリリースした自主制作盤「Pain Pain Pain」は再プレスを繰り返すも完売し、現在は廃盤となっている。同年12月に福田裕介(Dr)が正式加入し、現体制に。2017年6月にHelsinki Lambda Clubとのスプリットシングル「split」、8月に1stミニアルバム「dystopia」をリリースした。「dystopia」のレコ発ツアーのチケットは全日程完売。同年末の「COUNTDOWN JAPAN 17/18」を皮切りに大型のイベントにも出演するようになり、2018年は「VIVA LA ROCK 2018」「YON FES 2018」「RUSH BALL 2018」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」など多数のロックフェスにも出場した。同年3月に1stシングル「忘れた」、9月に1stフルアルバム「手」をリリース。9月末より全22本のライブからなる全国ツアー「結んで開いて」を開催中。
Creepy Nuts(クリーピーナッツ)
Creepy Nuts
MCバトル「ULTIMATE MC BATTLE」大阪大会で5連覇、「UMB GRAND CHAMPIONSHIP」で3連覇を成し遂げた経歴を持つ大阪出身のラッパー・R-指定と、「DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS」国内2位でTOC(Hilcrhyme)のバックDJなどでも活躍する新潟出身のDJ 松永によるユニット。観客が投げたお題でR-指定がフリースタイルを披露する“聖徳太子フリースタイル”などを織り交ぜた、オーディエンスを巻き込む形のライブパフォーマンスで人気を集めている。2016年1月に1stミニアルバム「たりないふたり」を、2017年2月に2ndミニアルバム「助演男優賞」を発表。2017年11月8日にはソニー・ミュージックエンタテインメントよりメジャーデビューシングル「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」をリリースした。大の深夜ラジオ好きでも知られ、2018年4月からは自身の冠番組「オールナイトニッポン0(ZERO)」が毎週火曜日に放送中。同月、初のフルアルバム「クリープ・ショー」が発売された。