寺嶋由芙のニューシングル「#ゆーふらいとⅡ」が発売される。
ソロデビューシングル「#ゆーふらいと」の発表からちょうど6年が経った2020年2月26日にリリースされる「#ゆーふらいとⅡ」。作詞を夢眠ねむ、作曲をrionos、振り付けを竹中夏海が担当し、デビュー作と同じ布陣によって完成した1枚だ。
音楽ナタリーでは「#ゆーふらいとⅡ」の発売に先駆けて、寺嶋と彼女の理解者である夢眠にインタビュー。作品が出来上がるまでの道のりをたどると共に、グループアイドル全盛の時代でありながらソロアイドルとして6年間活動してきた原動力を探っていく。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 星野耕作
由芙ちゃんの歌詞はすぐ書ける
──まず「#ゆーふらいとⅡ」がリリースされることになった経緯から聞かせてください。
寺嶋由芙 あの、私はB'zがすごく好きなんですけど。
夢眠ねむ えっ、第一声がそれ?(笑)
寺嶋 以前B'zの30周年ツアーに行ったら「LOVE PHANTOM」の続編という曲が演奏されていて「私もそういうのやりたい!」と思って(笑)。ちょうど自分が5周年のライブをやってた時期だったから「#ゆーふらいと」の続編というかアンサーソングというか、そういう曲を当時と同じ作家さんに作ってもらえたらいいなって。大人になった自分がデビュー曲を違う目線で解釈し直せたらと思ったんです。
──それでねむさんに歌詞を依頼されたんですね。
夢眠 B'zの話は今初めて聞いたけど(笑)。とりあえず「#ゆーふらいと」から5年経った節目の曲を、というお話をレーベルの方からいただいて。
寺嶋 ただ去年7月の私の生誕ライブで初披露する予定だったのに、正式にお願いできたのが6月末とかなんですよね。めっちゃ時間ない。
夢眠 なんか行き違いで話が通ってなくて、私オファー受けてから24時間くらいで書いたよね?
寺嶋 歌詞をお願いした日の夜に、たまたまねむきゅんと仕事で同じ部屋に泊まったんです。そこで「もうだいたい書けた」って言ってくれた。
夢眠 なぜか由芙ちゃんの歌詞はすぐ書けるんですよ。そもそも歌詞の依頼は由芙ちゃんからしか来ないんだけど(笑)。まずはキーワードみたいのをワーっと箇条書きにしておいて、本人に会ったときに「この表現はイヤじゃない?」とか確認する流れでしたね。
言えないけど胸に秘めてること
──デビュー曲の「#ゆーふらいと」は由芙さんにとって決意表明ともいえる曲でした。続編のテーマはすぐにイメージできましたか?
夢眠 「#ゆーふらいと」は由芙ちゃんが次の場所や目標に向かって飛んでいく話だったけど、今回は逆に由芙ちゃんがここにいて、みんなに何かを届ける曲にしたくて。5年間飛び続けてきた由芙ちゃんからみんなへの感謝の気持ち、お礼状みたいな感じで書きました。自分もそうだったけど、アイドルの曲は「本人が言いづらいことを作家が代わりに書いてくれる」みたいなところがあると思うんで、由芙ちゃんが本当に伝えたいこと、言えないけど胸に秘めてることをほじくり出す役割ができたらなと。
──由芙さんはもらった歌詞を見てどんな印象を受けました?
寺嶋 すごくしっくりきました。もしこういう感謝の気持ちを自分で書いたとしたらもっとありきたりなものになってたと思う。なんていうのかな、ライブのときもそうなんですけど、自分の言葉で「いつもありがとう」みたいなことを伝えようとすると逆に……。
夢眠 わかる。本当に思っててもMCっぽくなっちゃうというか。
寺嶋 そうそう。
夢眠 難しいよね。なまじ上手に話せるせいで嘘っぽく聞こえちゃいそうで。みんなにどれぐらい伝わってるんだろうって、話せば話すほど不安になる。
寺嶋 うん、泣きそうなくらい感謝していても、じゃあ泣きながら「ありがとう」と言えばいいかっていうとそうじゃないもんね。だからこの曲で伝えることができてよかったなと思います。
この歌はノンフィクション
──「#ゆーふらいとⅡ」には由芙さんをイメージしたフレーズがたくさん詰め込まれていますね。
夢眠 うん、由芙ちゃんを見て出てきた言葉しかない。だからあっという間に書けたというのはありますね。例えば「デジタル通しても感覚、アナログのまま」っていうところ、由芙ちゃんの公式LINEがすごいんですよ。ちゃんと恋人風で1対1で会話してるみたいなの。あと「カフェラテの好み リップの色 / 文字の癖もバレてる」は、いつもTwitterやインスタで「これを飲んだ」とか「このリップがかわいくて」とか友達に話すようなことを書いたりしてるから。全部ヲタクにバレてるの。
──なるほど。
夢眠 だからこの歌はノンフィクションなんです。「白紙にも焦らないでね / 続きがなければ書けばいいだけで」という部分は「#ゆーふらいと」のときに歌詞カードが半分ブランクだった話だし。
──歌詞カードに印刷ミスがあって、その代わりに由芙さんが手書きの歌詞を各CDショップに届けたというエピソードですね。
夢眠 その対応が本当に由芙ちゃんらしいなと思って。すごくアナログだし、すごくいい女だし、この先もし道に迷うことがあっても、あのとき手書きの紙を配り歩いた人なら絶対大丈夫。続きは自分で書けばいいだけだからって。そういう小ネタを入れてます。
寺嶋 そこに気付いた人はよりエモみが増すよね。私の活動をずっと見てくれてるねむきゅんにしか書けない歌詞だから、そういう人がいることがうれしいし、自分の活動を認めてもらえる感じがして誇らしく思う。
──「私の趣味に沢山付き合ってくれたね」という歌詞は?
寺嶋 私がゆるキャライベントに出ると、ヲタクもちゃんと追いかけて来てくれるんですよ。律儀にぬいぐるみとか買ってくれて。みんなも楽しんでくれてるとは思いつつ、私のやりたいことに付き合ってもらってる感覚があるという話ですね(笑)。
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「#ゆーふらいと」が今につながる道をくれた