TENDOUJI×ROY(THE BAWDIES)|「CRAZY」なコラボ実現!2組が考えるガレージ感の生み出し方、英語で歌うこと

ガレージ感って考えて出てくるものじゃないんだよ

──ROYさんは歌詞がギリギリに完成して、歌録りまでにコンディションが合わせられない……ということはあるんですか?

ROY 昔はありましたね。最近はどれくらい練習したら感覚をつかめるかわかるので、2日間くらいみっちり練習できれば大丈夫かなあ。

モリタ (アサノに向かって)だってよ? 歌じゃなくて演奏の話ですけど、「MONSTER」のレコーディングではケンジが全然弾けなくて。2時間練習して終わることもあったし。

モリタナオヒコ(Vo, G / TENDOUJI)

一同 (笑)。

モリタ ほんと情けない限りなんですけど(笑)。俺らは28歳のときに初心者の状態からバンドを始めたから、スキルがないことはわかっていて、なんとかセンスや努力でカバーしてきたんです。ROYくんの歌録りを見たとき、怪獣かと思いましたね。ほかのバンドがどんなふうに制作を行っているか知らなかったから、もしROYくんのやり方がスタンダードなら「俺らミュージシャンを辞めなきゃいけないんじゃないか」って。プロデューサーの片寄(明人)さんが「普通じゃない。あれはすごいよ」と言ってくれたのでホッとしましたけど(笑)、それくらいショッキングな出来事でした。

ROY でも、俺らも制作は時間がかかるほうなんだよね。同期の9mm Parabellum Bulletなんてリハしないで集まって、ドンッと速攻で録り終えちゃうらしくて。

モリタ ええっ!?

ROY 彼らに比べると、俺らはオケができあがるまでの時間がすごく長くて。「せーの」で一発録りするから、誰か1人がしくじると最初から録り直しになって、1曲録るのにすごく時間がかかるときがあるんだよね。

モリタ 一発録りなんですか! マジっすか……。

ROY 8割方はそうだね。曲によってはさらに音を重ねることもあるし。でもレコーディングはルーティンができあがってくると、だんだん慣れてきちゃって、初期のガレージ感がなくなってくるんだよね。ガレージ感ってうまさだけじゃなくて、情熱だけでやるカッコよさが大事だけど、それが出にくくなってくる。「どうすれば出るんだろう?」と考えても、考えたところで出ないんだよ。TENDOUJIはそういうガレージ感をずっと持ち続けているからカッコいいなと思う。今のレコーディングの話を聞いても、「まさにそれ!」って感じ。なので、僕のほうがむしろTENDOUJIに憧れますね。THE BAWDIESが頑なに一発録りにこだわり続けるのも、ガレージ感を失わないようにするためだし……。まあ、うちはリズム隊があんまり上達しないので、そこでギリギリガレージ感を保ち続けている部分もあるんだけど(笑)。

モリタ そうなんすか?

ROY うん。なんなら俺は歌だけやりたい。なるべくベースを持ちたくない人間だから。THE BAWDIESは小学生からの同級生で組んだバンドだから、仲がよすぎて新しいベーシストが入りづらくて。みんな辞めちゃうから、しかたなく俺が歌いながらベースを弾いてる。

アサノ そこは俺らも似てます。以前「ギターがもう1人いたらいいよね」と話したこともあったんですけど、俺ら4人も仲がいいから、ほかの人が加入するのってめちゃくちゃ難しいと思うし、そもそも俺ら自身が無理なんですよね。

ヨシダ ナオチン(オオイ)はあとから加入したんですけど、その前にめちゃくちゃうまいドラマーがいた時期もあったんですよ。でも、なぜだか全然合わなくて(笑)。

モリタ うまいし、優しいし、言うことも聞いてくれるし、申し分ない人だったんだけど……全然合わなかった(笑)。あれ、なんなんだろう? 不思議だよね。

ヨシダ そのあと1度もドラムを叩いたことのなかったナオチンが加入したら、なぜかいい感じになじんだんです。

左からヨシダタカマサ(B / TENDOUJI)、ROY(THE BAWDIES)。

──今のお話を聞くと、バンドって本当に不思議なものなんだなと思います。何よりも「人」が大事というか。

ROY TENDOUJIはフェスのバックヤードとかで孤立するでしょ? THE BAWDIESもメンバーだけで固まっちゃうから、そういうところもすごく似ているんじゃないかな。ライブだと明るいキャラだから社交的に思われがちだけど、なかなか心を開かない(笑)。実際、TENDOUJIもアー写を見たらめちゃくちゃ明るそうだから、レコーディングに行く前は「初対面で肩とか組まれたらどうしよう」とか考えていたんだけど、全然そんなことなくて安心した(笑)。

TENDOUJI (笑)。

GarageBandで遊ぶように曲作り

──「MONSTER」はシンセが効いていたり、ヒップホップ的な要素も入っていたりして、これまでのTENDOUJIとは異なるサウンドのアルバムだと思ったんですけど、変化を望んだ部分もあったのでしょうか?

モリタ 「変化させたい」ということはあんまり考えなかったんですけど、人柄が出ている音楽、自分たちにナチュラルにフィットしている音楽が好きだし、それがいいものだと思うんですよね。無理して作っている音楽を聴くと「これはウソっぽいな」とすぐにわかるんですよ。その反面、いいミュージシャンの音楽を聴くと「ウソがないな」と感じるし、その人にとって音楽はそばにあるものなんだなってわかる。その距離感って、自分にとってはすごく重要なことなんです。この話に関連して言うと、これまでパソコンにトラックを1個1個入れて曲を作っていたけど、最近「めんどくせえな」と思うようになってきて。一番ナチュラルな状態で音楽を作れないか考えて、「MONSTER」のトラックはほとんどiPhoneのGarageBand(※iPhoneやMacBookにインストールされている音楽制作ソフトウェア)で制作したんです。

ROY すげえ。マジで?

モリタ はい。そうすることで音楽が生活の一部になった感じがして、「これならいくらでも曲が作れるかも」となったんですよね。俺らはパンクが好きなんですけど、誰でも速攻で始められるのがパンクの魅力だと思うんです。そんなふうに日常的にガンガン曲を作れたらいいし、The InternetやThe 1975とか、海外のバンドも同じスタイルで作曲しているみたいで、俺らもやってみたくなって。iPhoneはメンバー全員持っているから、みんなで遊びながら曲を作るようになったんです。やっぱり便利っすよ、iPhone(笑)。

ヨシダタカマサ(B / TENDOUJI)

──これまでの作品ではモリタさんとアサノさんが中心となって曲を作っていましたが、「MY SOFT BONES」はヨシダさんが作詞と作曲を手がけていますね。

ヨシダ 「MY SOFT BONES」は昔からよく聴いていたT. Rexとか、自分が好きなものを凝縮した曲が作れたらいいなと思って。制作していたときは「ロッキーのテーマ」を何度も聴いてました。

ROY ねえ、「ロッキーのテーマ」を何度も聴く機会ってある?(笑)

アサノ ヤバいっすよね(笑)。

ヨシダ ちょうど友達と「ロッキー」の話をしたり、夕方になると近所の学校の吹奏楽部が「ロッキーのテーマ」を練習しているのが聞こえてきたり、強烈な印象が残っていたんですよ。今回初めて曲を作ってみて、すごく大きな喜びがありましたね。今まで曲を作ろうと思っても、完成できたことがなかったんです。「MY SOFT BONES」は歌詞が短いし、3分もないんですけど、やっと1曲形にすることができて、めちゃくちゃうれしかったです。

オオイ 俺も短いフレーズはいくらでも思い浮かぶけど、それを曲にすることができなくて。この間初めて形にできたので、早く聴いてもらいたいです。

──オオイさんが作詞・作曲した曲は、次のアルバム「Smoke!!」に収録される予定ですか?

オオイ そうですね。リズムから作っていて、エイサーみたいな跳ねるリズムにいいメロディを乗せたら面白いんじゃないかと思って、それを試してます。まだ制作中ですけど、いいものができそうです。

左からオオイナオユキ(Dr / TENDOUJI)、ROY(THE BAWDIES)。

曲作りの背景にある感情って「喜び」だと思う

──ROYさんはGarageBandを使って曲を作ることはありますか?

ROY ないです、ないです。iPhoneは持っていますけど、パソコンも全然使いこなせないんですよ。弾き語りで歌ったものをiPhoneのボイスメモで録るのが限界。「CRAZY」のデモもいただいた音源をCD-Rに焼いてもらって、それをスピーカーで流しつつ、ボイスメモを使って歌を重ね録りしたんです。

モリタ ROYくんから送られてきたデモ、正直びっくりしたんですけど、あれ後ろで音源を流していたんですか?

ROY うん。だってiPhoneで曲を流しちゃうと、ボイスメモが使えなくて……(笑)。俺は本当にアナログ人間で、こないだも制作中に「CD-Rで音源をください」とお願いしたら、「そういうやり方してる人、もうROYさんくらいしかいないですよ」って言われたんだけど(笑)。

モリタ すげえなあ……。でも、それがTHE BAWDIESやROYくんにとって、音楽とのナチュラルな距離感につながっているんですよね。カッコいいなと思う。

ROY メンバーにも「GarageBandの使い方を覚えてみろ」と言われるんだよ。「iPhoneなら触れるでしょ?」って。でもめんどくさくなっちゃって、なかなか進化しないんです(笑)。

──それでもTHE BAWDIESの音楽には、常にその時代のモダンな感覚も取り入れられていますよね。自分たちのサウンドの中に、絶妙なバランスで現代性を咀嚼しているというか。

ROY 僕らが音楽を始めたのは、大好きなロックンロールを現代の人たちに伝えたかったからなんです。時代によってロックンロールの伝わり方が違うからこそ、自分たちも変化しなければいけなくて。例えば今の10代の子がリトル・リチャードのレコードを聴いて「カッコいい」と感じるのは難しいと思うんですよ。そこで自分たちがクッションになって、今通用する形に変えながらも、当時の熱量を届けられるロックンロールを生み出せば、リトル・リチャードの魅力もわかってもらえるんじゃないかと。現代の空気感を意識しつつ、それを自分たちのロックンロールに混ぜることはすごく考えていますね。

──今回のTENDOUJIの制作スタイルを聞いて、いかがですか?

ROY うらやましいです。1人で作っていると、どうしても曲が似てくるから。メンバーにも「アイデアが出たら作ってね」とは言ってて、ギタリストのTAXMANは用意してくれるんですけど、ほかの2人はなかなかやってくれない(笑)。メンバー全員で曲が作れるのは最高だと思います。ただ、俺の場合はデータが開けないから、CD-Rで渡してくれないと聴けない(笑)。

アサノケンジ(Vo, G / TENDOUJI)

アサノ (笑)。そもそもTENDOUJIは結成から現在まで、誰が曲を作って誰が歌うか、ちゃんと決めなかったんですよ。たまたま俺とナオが曲を作るから2人がメインになっていたけど、今はその割合が変わってきました。

モリタ 俺らはThe Beatlesが好きで、特に「ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)」が好みだから、ああいうごちゃごちゃとした、メンバー全員で曲を作っているアルバムが理想だったんですよね。だから全員で曲を作るのは自然なことでした。自粛期間で時間もあったし、ナオチンとヨッシー(ヨシダ)も言っていましたけど、曲作りってすごく大きな喜びが感じられるから。

ROY そうだね。俺もテンションが上がっているときとか、喜びが沸いてきたときに曲が書きたくなるから。そういう意味で言うと、曲作りの背景にある感情って「喜び」だと思う。もちろん作り上げていく苦しさもあるけどね。俺は1曲作るのに時間がかかるし、自粛期間はライブがなくて外からの刺激がなかった分、曲作りがはかどらなくて。ライブがあると曲を書きたい欲も高まるし、迷いなく書けるんだけど、最近は書いては考え、書いては考え……の繰り返しになっちゃって。

モリタ なるほど。そう考えると、ケンジはROYくんと近いタイプかもしれないよね。曲作りのペースはどちらかというと時間がかかるほうだから。

アサノ そうだね。俺、曲を作るの好きじゃないから。

ROY いや、俺は「好きじゃない」とは言ってないよ(笑)。

相手の顔色を伺いながら作っても、自分の音楽にはならない

──TENDOUJIは「MONSTER」「Smoke!!」と2枚のアルバムのリリースがすでに決まっているくらいなので、ある種持ち前のパンク精神が功を奏したというか、このコロナ禍でも曲をたくさん作れたんですよね。

モリタ 俺らの場合、ヒマすぎたっていうのもありますね(笑)。本当は「MONSTER」だけリリースする予定だったんですけど、自粛期間でリリースが延期になって、「じゃあ、もっとこのアルバムをよくしよう」ということで曲を作りまくったら、どんどん増えていって……。

アサノ 1枚に詰め込むには収拾がつかなくなって。

──年内リリースされる予定の「Smoke!!」は「MONSTER」とはカラーの違うアルバムになりそうですか?

モリタ そうかもしれないです。どちらかというと「Smoke!!」のほうがもっとパンク寄りかな。

──ROYさんから、この先のTENDOUJIに期待することはありますか?

ROY このまま自分たちの好きなことだけをやり続けてほしいですね。本人たちが一番わかっていると思うけど、相手の顔色を伺いながら作っても、結局自分の音楽にはならないので。自分たちがテンションの上がるものだけ作り続けていけば、おのずと素晴らしい作品ができるんじゃないかな。

TENDOUJI ありがとうございます!

TENDOUJI

──「MONSTER」冒頭の「CRAZY」でROYさんの歌声が聞こえてきたら、リスナーもきっと驚きますよね。

モリタ うん。驚いてほしい気持ちはあったし、何より「CRAZY」はアルバムの内容を一番体現している曲だなって思ったんです。歌詞で「We are monster」と歌ってるから、表題曲と言っていいかもしれない。でも、こうやってROYくんに参加してもらって、レコ発ツアーはどうしようかな……と悩んでいて。毎回ROYくんに来てもらうわけにもいかないし。

ROY 行くよ! 行く行く!

モリタ さすがにそれは申し訳ないです(笑)。俺らだけで「CRAZY」を披露するのは怖いですけど、ROYくんの部分はケンジに歌ってもらおうかなって。

アサノ 絶対敵わないからイヤだ。なんで負け戦をやらなきゃいけねえんだよ!(笑)

公演情報

TENDOUJI TOUR 2021 "MONSTER"
  • 2021年5月8日(土)大阪府 umeda TRAD
  • 2021年5月9日(日)福岡県 BEAT STATION
  • 2021年5月14日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2021年5月21日(金)宮城県 Rensa
  • 2021年5月23日(日)北海道 PLANT
  • 2021年6月4日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST

※新型コロナウイルス感染拡大を受けての緊急事態宣言により、日程変更・延期の可能性あり。