玉井詩織ついにソロアルバム発表!「何者にでもなれる」個性を表現したcolorS

ももいろクローバーZの玉井詩織が、初めてのソロアルバム「colorS」を自身の誕生日である6月4日に発表した。

ほかのももクロメンバーが精力的にソロでの音楽活動を行う中、玉井の個人活動はあくまでタレントとしてのテレビ出演や雑誌モデルなどに絞られていた。それが一転したのは2022年1月。玉井はももクロのファンクラブ「ANGEL EYES」内のコンテンツとして、毎月1枚の撮り下ろし写真を公開する企画をスタートさせた。さらに翌2023年には、撮り下ろし写真12枚のビジュアルイメージに合わせた楽曲を毎月配信リリースするソロアーティストとしてのプロジェクト「SHIORI TAMAI 12Colors」へと発展させ(参照:ももクロ玉井詩織のソロプロジェクト始動、12カ月連続で新曲リリース)、今年3月には初のソロコンサートも成功に収めた(参照:玉井詩織、ついに実現した初ソロコン!さまざまなパフォーマンスで見せた「いろいろ」な色)。

ソロコン開催決定を知らせる際、「ようやくです、重い腰を上げました(笑)」とコメントしていた玉井。個人でのアーティスト活動に対し後ろ向きな姿勢だった彼女がなぜ今ソロに踏み切ったのか? 「12Colors」の一連の動きについて、玉井本人に詳しく話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 梁瀬玉実スタイリスト / 市野沢祐大(TEN10)ヘアメイク / 横山藍(KIND)

重い腰を上げた理由

──ほかのももクロメンバーがソロ活動を行う中、あくまでソロでの音楽を展開しない姿勢を見せてきた玉井さんが、このタイミングで重い腰を上げたのには何か理由があるんですか?

うーん、何か明確に理由があったというわけではなくて。メンバーがみんなソロコンサートとかを行う中で、やっぱり私を応援してくださる方からは「しおりんはソロコンをやらないの?」という声はたびたび届いていたんです。でも、自分が1人で音楽をやる意味をどうしても見出せなくて。グループでライブができているし、なんでそんなにソロでのライブを望んでいるのかもわからなかった。だって、私が歌ってる姿を観たいんだったらももクロのライブに来ていただければいいと思ってまして。

──なるほど。

それに私は、月に1回「フォーク村」(フジテレビNEXTでオンエアされている生放送の音楽番組「しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のももいろフォーク村」)をやってるから、1人で音楽に関わる機会はほかのメンバーより多いと思います。そこでソロ活動している部分もあって、ももクロ以外の音楽を追求するという興味が湧かなかったのもあるかもしれないです。ただなんとなく「ソロをやります」というのは、どうしても自分の中で腑に落ちなくて……という感覚だったんですけど、やっぱり心のどこかでは「いつかソロコンをやるんだろうな」というのはぼんやり考えていました。で、どうせやるなら、きちんと道筋を立ててやれたらいいなと思っていて。

──その“道筋”の始まりが、ファンクラブ内でスタートした毎月撮り下ろし写真を公開する企画?

はい。そのときはまだ音楽活動に結び付くなんて考えてなかったですけど。私はソロで音楽をやるつもりはないけど、自分発信で何かやるとしたら?と考えたとき、ファンクラブコンテンツとして写真の作品撮りをやってみようと思いついたんです。自分で何かを表現したいという気持ちが音楽には結び付かなかったですが、作品的なところで言うと、自分で世界観を作って写真に収めるのもいいんじゃないかなって。それをファンクラブで発表して、待ち受けとかに使える画像として発信したら、私にとってもいい経験になると思って月1回のコンテンツとして始めたんです。

玉井詩織

──作品撮りのみだったはずのプロジェクトが、なぜ音楽に?

1枚目の写真を撮ったとき、なんかジャケット写真っぽいよね?と思って、なんとなく「だったら毎月撮る写真をもとに曲を作るとか、ちょっとぜいたくかな?」ってマネージャーさんと話していたら「それ面白いじゃん!」という反応で。それでレコード会社の人にも話してみたら……っていう。

ソロは成功するのも失敗するのも自分次第、裏を返せば気楽

──そこから先は、自ら能動的に音楽のほうへと進めたんですね。

ソロ曲は増えていくんだろうな、とは思ってました(笑)。

──これまで玉井さんのソロ楽曲は2011年の「…愛ですか?」、2012年の「涙目のアリス」の2曲のみなので、そこから10年以上待つことになりました。期待はしつつ、なんとなくこのままソロはやらないんだろうなという予測もあって。玉井さんのプロフィール欄には「短所:1人じゃ行動できないところ」とありますけど……。

ねえ、まだこれ使ってるの?(笑) いつの私?って話だから、もう変えてほしい!

──(笑)。玉井さんはもともと1人じゃ行動できないというより、1人での行動にそれほど興味がないタイプなのかなと思うんですね。誰かと一緒に何かをやることに意義を見出すタイプというか。

それはあるかもしれないです。

──さらに言うと、今も昔もタレントとしてのエゴがあまり感じられない。

よく言われます(笑)。

──タレント、ましてやアイドルは「私が、私が」というエゴがあって当たり前で、客側もそれを楽しむものだと思うんですけど、玉井さんからはそこへの執着があまり感じられず、子供の頃から一貫して「みんなと一緒のほうが楽しい」という生き方をしているように見えるんですね。絵日記に自分ではなく自分から見たほかの誰かを描くような。

ホントにそうかもしれないです。昔は1人がさびしいとか1人じゃ行動できないという面がありましたけど、最近は1人で旅行だって行けるし、1人の楽しさもわかってきました。でもやっぱり誰かと過ごしている時間のほうが自分にとっては大事で、「すごいね」「きれいだね」という気持ちは誰かと分かち合いたい。1人で行動できないわけじゃないんです(笑)。でも「誰かと分かち合ったほうがより豊かになる」という考え方が基本にあるんだと思います。だからソロ活動に結び付かなかったというのは確かにあるかもしれない。ずっと活動してきて、目標に掲げたこと、達成したかった夢も、メンバーやスタッフさん、ファンのみんなと叶えてきました。ソロコンサートをやらなかったのも、ライブの会場がどんどん大きくなっていくような体験はみんなと一緒だったからこそ喜べたことで、そこに自分が1人で立つというイメージが全然湧かなかったんです。

玉井詩織
玉井詩織

──ソロコンはダンサーやバンドがいたとはいえ、基本的には自分1人を見てもらうステージですよね。実際にやってみてどうでした?

うーん、どうだったんだろう……。

──ももクロのライブとはもちろん違いましたよね?

違いました。それは気持ちというよりは、物理的な違いが大きくて。普段はパートを分けて歌うけど、ソロだと1人でフルコーラスを歌うことになるし、物理的に大変(笑)。体力がいるなあと思ったし、MCも1人でつながなくちゃいけないし……バンドさんやダンサーさんという仲間はいれど、1人にのしかかる責任の重圧はソロのほうが大きかったですね。そういう大変さは感じましたけど、裏を返せば自分次第だから気楽な部分もあって。グループだと「ももクロだから」という責任感もあるけど、ソロは成功するのも失敗するのも自分次第。変に肩に力が入らずできたところもあったかなと思います。

──普段より多い衣装チェンジや場面ごとの見せ場の変化など、ソロコンでは演出的な部分も玉井さん自身の意見が中心になったのではないかと思います。自分で作り上げることへの充実感もあったのでは?

私はあまり自分からアイデアが湧き上がってくるタイプではないと思ってたんですけど、人と話していく中で「あ、じゃあこういうことやったら面白そうだな」とか「企画のテーマが『12colors』だから、コロコロ色が変わるように場面が変化したらいいんじゃないか」とか、自分の引き出しが知らない間にどんどん開いてアイデアとして出せたことは、自分自身にとっても新しい発見になりました。そういう充実感はありましたね。

「なんでも平均点」を長所と捉えて「何者にでもなれる」に

──ここからは具体的に曲作りについてお聞きします。ついにソロプロジェクトが動き出したと思ったら12カ月連続で、ずいぶん極端だなとも思いましたけど(笑)。

んふふふふ。

──いざソロで楽曲を作るにあたって、「こういう曲がやりたい」あるいは「こういう曲はやりたくない」など、“玉井詩織ソロ”を作り上げていくうえでのビジョンやルールは最初どのように考えましたか?

ももクロのメンバーそれぞれにソロでは個性がありますよね。あーりん(佐々木彩夏)は「あーりん」って名前がいっぱい入っている曲だったりとか(笑)、あーりんらしい世界がたくさんあって。(高城)れにちゃんはファンの方との距離の近さを感じさせるような楽曲が多くて、かなこ(百田夏菜子)は自分で作詞をして自分の気持ちを曲に乗せたりする。そうやって並べたときに、自分の個性ってなんだろう?と思ったら、いい意味でも悪い意味でも、いろんなものになれることかな、と思ったんです。「玉井詩織にソロ曲を作ってください」とお願いすると、どうしても色がある程度決まっていっちゃうと思うんですけど、12カ月連続で撮影したバラバラの写真のイメージ、登場人物に寄せた曲を作ってもらったら、いろんなジャンルの曲が生まれるかなと思って。

玉井詩織

──「玉井詩織のソロ曲」の発注ではあるけど、毎月さまざまな“色”を演じた写真に合う曲を作ってほしいと。「型を持たない」ことが自分の型だと考えた?

そう考えましたし、それが性に合ってるなと思いました。これを極める!というのも大事なことだし憧れるけど、いろんなことを平均点でやれるタイプの自分は、そこを長所と捉えて「何者にでもなれる」が自分の個性かなって。

──そんな個性を持っている自分は好きですか?

うーん……専門分野のところにいくと「中途半端だな」という気持ちで自分が嫌になることもあるけど、何事にも興味を持てるタイプだし、「今はここに力を注ぐ」と決めたらたぶん集中力を発揮できるタイプだと思うので(笑)、だんだん好きにはなってきているかもしれないです。

──アルバムとして1枚の作品になると、音楽の方向性は多彩だけど、それによって玉井詩織というソロアーティストの人となりがちゃんと表現されているなと感じました。そう思いません?

あっ、うれしいです。でもそれはこの12カ月、季節や色のイメージを1年の流れに沿って考えたからできたことなのかなと思います。