東京にはなかなかいないフレッシュな可能性を持ってる

──初めての対面の後、須藤さんはライブもご覧になったそうですね。

須藤　東京でのイベントライブに出ると聞いたから観に行きました。そこでも「I LOVE YOU」を演ってましたね。

──2人が歌う姿を生で観て、いかがでしたか？

須藤　ギターを弾きながら歌ってるやっぴ～くんに、人を惹きつけるオーラのようなものを感じましたね。普段はただの明るいあんちゃんみたいな感じだけど、また違った表情が見えたというか。サービス精神もあるしね。で、たまくんにはそういったサービス精神はない。

たま　あははは（笑）。

須藤　でも、彼はピアノを弾くせいもあって、かなりアーティスティックに見えるんですよ。心底、自分に酔って歌ってますしね。そういったタイプの違う2人のバランスがまず面白かったんですよね。しかも、自分のファンじゃない人たちともしっかりつながるライブができていましたから、これはやっぱりすごいなと。

やっぴ～　あの日もめっちゃ緊張してましたけどね。みんなで一緒に手を振る曲とか、コール＆レスポンスをする曲とかをやったんですけど、そのときに僕、須藤さんのことを客席に発見しちゃって（笑）。気持ちがかなりキュッとなってました。

須藤　わりと目立つところにいたからね、僕は（笑）。

やっぴ～　でも、後で楽屋に来てくださったときに「よかったよ」って笑顔で言ってくださったんで、そこで緊張の糸が一気にほどけたんですけど（笑）。

須藤　普段はあまり人を褒めないんだけどね。そこで僕はホントに東京にはなかなかいないようなフレッシュな可能性を持った2人だっていうことを改めて確信したんです。だから、そのタイミングで、カバー集でデビューするんだっていう話を聞いたときに、絶対2人それぞれのオリジナル曲を入れるべきだっていう提案をしたんですよ。

ここにたどり着くまではかなり迷走しましたね（笑）

──なるほど。そういった経緯で、デビューアルバムに収録されるオリジナル楽曲のプロデュースに関わることになったわけですね。

須藤　そう。2人ともオリジナル曲を作れることは知っていたので、僕がプロデュースするから新たに1曲ずつ書いてみてよっていう。やっぱり僕がプロデュースするからには、ほかのアーティスト──例えば玉置浩二とかと同じレベルでやらざるを得ないわけですよ。今までに作った曲でいいよとは言えないですからね。

やっぴ～　デビューアルバムにオリジナルを入れてみたいなっていう気持ちはあるにはあったんですけど、実際は迷っていたところもあって。なので須藤さんに背中をバーンと押していただけた感じでした。

須藤　ただ、そこからがかなり苦戦しましたけどね。

──どういった部分で苦戦したんですか？

須藤　特にやっぴ～くんなんだけど、全然いい曲が上がってこなかった。彼はすでに上京して東京に住んでいるから、カラオケ屋でデモテープを録ってくるんですよ。それがもうよく聞こえないんですよ。

やっぴ～　あははは（苦笑）。家で大きな声が出せないんで、カラオケ屋さんで録音してたんですよね。

須藤　しかも、緊張してんだか知らないけど、メロディもひどくて。ちょっと小難しい感じの曲ばっかり持ってくるんですよね。僕が尾崎豊のプロデュースをしていたからといって、無理をして生き様系の曲を書いてきてもやっぴ～には合わないわけですよ。だから僕は、「もっとポップなものを書けよ」って言ったんです。そうしたら、本来の彼が持っているよい部分が出た曲をやっと書いてきたので、それで行くことにしたんですけど。

──それが「魔法のレシピ」という曲ですね。

やっぴ～　はい。人物や風景、言葉のさまざまな組み合わせによって人の心情っていうのはどんどん変化していくんだよっていうことを歌った、日常をテーマにした些細な歌なんですけど。ここにたどり着くまではかなり迷走しましたね（笑）。

須藤　でもやっぱり彼はすごく才能を持っているんですよ。歌入れをする直前に、間奏にあたる部分に歌詞とメロディをつけろっていう命令をしたんです。全体を見たときに、まだ言い足りてないところがあると思ったから。そうしたら30分くらいだったかな、素晴らしいものを上げてきたんですよね。

やっぴ～　わ、ありがとうございます！ でもその後、歌入れのときにはまた苦戦したんですけどね（笑）。気持ちがアップアップしていたから、リズミカルに歌おうと思ってるのにのぺっとした歌い方になってしまって。そこで須藤さんには「もっとノレよ！」って言われて。

須藤　そう。なんか他人の曲を歌詞カード見ながら歌ってるみたいだったんですよ。だから「アホか！」と。でも最終的にやっぴ～くんらしい、いい歌が録れましたけどね。