TAKU INOUEインタビュー|ひさびさソロ作品「ハートビートボックス」のテーマは恋愛 (2/2)

世の中に訴えたいこともそんなにない

──イノタクさんが「ハートビートボックス」を制作するうえで、気を付けたこと、意識したことはありますか?

ヒューマンビートボックスならではの声のえぐみを消さないようにするというか、ドラムマシンのビートっぽくなりすぎても面白くないなと思っていました。なので、最初のほうに効果音的な感じで「プシュー」って音を入れてもらったり、わかりやすさみたいなものを意識してヒューマンビートボックスの魅力を伝えようと意識しました。

TAKU INOUE

──制作過程で苦労したことはありますか?

作詞ですかね。どういうテーマにするか悩んだんですけど、40歳を過ぎてそんなに世の中に訴えたいこともなく……もともとそんなにないんですけど(笑)。音楽を作るのが楽しいタイプなので、世に残したいメッセージも特になくて。前回のEPはクラブというテーマがあって(参照:TAKU INOUEがMori Calliope、星街すいせい、ONJUICYと描く一夜の物語)、今回はどうしようかなと思ったときに、普段は作らない曲にしようと思ってラブソングにしました。

──確かに、イノタクさんの楽曲にラブソングのイメージはあまりないですね。

仕事で必要になって制作したことはあったと思います。それでも「好きです!」みたいなストレートな曲は書いたことがなくて。別に「ハートビートボックス」がそういう歌というわけではないんですけど、がっつり恋愛をテーマにした楽曲は初めてかもしれないです。

──ほかに苦労したことはありますか?

タイトルもちょっと悩んだかな。あからさまに「ビートボックス」ってタイトルに入れるのは最初どうなのかなと思ったんですけど、デモを作ったときに仮タイトルで出したら馴染んじゃいました。

TAKU INOUE
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普段やらないことをやる

──そもそも、約2年半ぶりにソロプロジェクトを始動させたきっかけはなんだったんですか?

ここ数年ずーっとやっていたMidnight Grand Orchestraがひと段落したし、ソロ作を全然リリースしてないからそろそろ出すか、みたいな感じでしたね。

──有観客ライブが1つの区切りになったんでしょうか(参照:Midnight Grand Orchestraデビュー3年目で初の有観客ライブ、サポートメンバー9人と彩った豊洲の夜)。

それはありますね。ミドグラは今後の構想もいろいろあったりはするんですけど、同時にずっと前から「ソロも出しましょうね」とレーベルから言われていて(笑)。実際はライブもやりつつ、ミドグラもやりつつ、クライアントワークもやりつつみたいな状態だったので、なかなか時間がなくて単純にソロに手が付けられないという事情もありました。

──ソロプロジェクトのコンセプトというか、活動方針はあるんですか?

ミドグラもそうなんですけど、例えば依頼があって作った曲だとしても、わりとエゴを出していくタイプなので、表現欲は常に満たされてはいるんです。その中でもソロプロジェクトで心がけているのは、普段やらないことをやるということですね。

──ソロのときに好きなことをやるアーティストが多い気がしますが。

そうですよね。ミドグラの活動や楽曲提供をしていく中で、やりたいことがやれないみたいなストレスはまったくなくて。だからレーベルに言われないとソロはやらないかもしれない(笑)。

TAKU INOUE
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アーティストっぽい発言ではないけど「現状維持」

──新しいことをやるのは刺激になりますよね。

そうなんですけど、キャリアを積み重ねてくると、ネタ切れになることもあるので、最近は普段からちゃんと音楽を聴いてインプットしようと意識するようになりましたね。若いときは放っておいてもずーっと音楽を聴いてましたけど、大人になるとある程度体力が必要なので。

──日常の中で音楽を聴くルーティンを作っているんですか?

そうですね。皿を洗いながら聴いたり、普段ならYouTubeのどうでもいい動画を観るところを、今はSpotifyにしよう、みたいな。昔はクラブで新しいものに触れることが多かったんですけど、最近は遊びに行ける時間も少なくなっていて、日常生活の中で吸収できるようにしてます。

──今後についてお聞きしたいんですけど、ソロもユニットも含めどのような活動をしていきたいですか?

それぞれの活動でやりたいことをやれているし、それがクライアントワークにも反映されていていい相乗効果を生み出しているので、しばらくはこの状態を保ちたいですね。あんまりアーティストっぽい発言ではないとは思うんですけど「現状維持」というか。ただ、新しいグループにも興味はありますし、面白いことがあれば常にやりたいなとは思っています。一緒に何かやりたいなと思ったら、声をかけていこうというマインドはずっとありますし。ユニット活動も継続しつつ、いろんな人と一緒に音楽を作ってみたいです。

──直近で何か大きな動きはあったりしますか?

「ハートビートボックス」のリリースパーティをasiaでやるんですけど、ボイラールーム形式なんですよ。お客さんに囲まれてDJをしたことはないんで、今から緊張してます(笑)。でも、新しい挑戦として楽しみでもありますね。ステージとフロアで分かれている普段通りのスタイルとは別の感覚になるんだろうなと想像しています。来ていただくいただく方には楽しみにしていてほしいですね。普段クラブに行かない人も「イノタクのリリパなら行くか」と新しい一歩を踏み出してもらえたら。

TAKU INOUE

ライブ情報

TAKU INOUE「ハートビートボックス」リリースパーティ

2024年8月1日(木)東京都 clubasia
<出演者>
TAKU INOUE / ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ) / DJ WILDPARTY

プロフィール

TAKU INOUE(タクイノウエ)

サウンドプロデューサー / コンポーザー / DJ。「アイドルマスター」シリーズや任天堂とCygamesによるアクションRPGアプリ「ドラガリアロスト」などゲームの楽曲をはじめ、DAOKO、Eve、ナナヲアカリ、STU48、月ノ美兎、HOWL BE QUIETといったアーティストのサウンドプロデュースや楽曲提供を担当する。2021年にTOY'S FACTORY内のレーベル・VIAより「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でメジャーデビュー。2022年に星街すいせいとのプロジェクト・Midnight Grand Orchestraを始動させ、7月に1stミニアルバム「Overture」を発表した。2024年7月にはソロ名義で新曲「ハートビートボックス」を配信リリース。