音楽ナタリー Power Push - 瀧川ありさ

運命を感じた「ノーサイド」、今だから歌える「ONE FOR YOU」

「仲間」「絆」に対するコンプレックス

──もう1つの表題曲「ONE FOR YOU」は、進研ゼミ高校講座の「進級応援ソング」として書き下ろされた楽曲です。

「受験生に向けて仲間との絆や旅立ちを歌う」というテーマはありつつ、「ノーサイド」の対になる曲なので、ここでどう自分らしさを出していくかは意識しました。ユーミンさん対私なので…(笑)。曲自体はわりとさくっとできたんですけど、歌詞には苦労しました。

──そうなんですね。シンプルで耳なじみのいい歌詞なので、すっと出てきたものかと思いました。

「これしかない」と思える歌詞にたどり着くまでに、ものすごく悩んで。ユーミンさんがいつもお茶をしていると噂の喫茶店にディレクターさんと行って、願掛けのようにケーキをつまみながら缶詰状態で書きました(笑)。今だからこそ書けた歌詞だと思います。

──以前なら書けなかった?

瀧川ありさ

はい。私も高校を卒業して一度1人ぼっちになった身なので、当時はすごく孤独だったし、別れなんて悲しいことでしかなかった。でも今は、あの別れはそれぞれが幸せになるための一歩だったんだなと思えるので。

──確かに、同級生が「受験だ」「就活だ」といった大きな波の中にいたとき、瀧川さんはすでに音楽の道に進むことを決めてバンド活動をスタートさせていて。その波の中にはいなかったわけですよね。

そうなんですよ。今もソロでやっている分、仲間とか絆というものに対するコンプレックスというか、「本当にわかりあえるのだろうか」みたいな思いも正直あったので。だけどツアーを回って、バンドメンバーやサポートしてくれるファンの皆さんと過ごす中で「やっぱり仲間って素晴らしいな」って素直に思えたんですよね。たくさんの人に支えられていることもわかったし。今まさに渦中にいる10代の子にとっては、別れってやっぱり悲しいものだと思うんです。でも端から見ていると、羽ばたいてる、前に進んでる最中なんだとわかる。自分の中にそういう俯瞰目線が生まれたから書けたんじゃないかな。

──ほかにもこの曲には瀧川さんらしさが随所に表れていると思います。特に「僕は僕なりに頑張るから」という歌詞は、見方によっては適当な言い方にも見えますが、自分なりのがんばり方や進むべき道が見えている人だからこそ言える言葉だなと。

我ながらこの言い回しは絶妙だなって思います。常々言ってるんですけど、一方的に「がんばれ」って言う曲は自分が歌う曲じゃないなと思っていて。例えば甲本ヒロトさんが「がんばれ」って言ってくれたら超がんばれますけど(笑)、私はそっち側の人間じゃない。だからいつでも「一緒にがんばろう」のスタンスなんです、私は。自分自身、ファンの皆さんから力をもらうことでがんばれているから。うん、ここは個性が出てますよね。

──メロディラインはこれまでの瀧川さんの楽曲に比べるととてもストレートですよね。

うん、ド直球ですね。やっぱり1人でも多くの方に受け取ってもらうためには、自分自身が変わらなきゃいけないとひしひしと感じていて。ひねくれた部分はカップリングとかで好き勝手に出せばいいかなって(笑)。表題曲としてバーンと打ち出す楽曲は、説明しなくてもきちんと伝わる曲じゃなきゃだめだと思うんですよ。「多くの人に届く曲を作りたい」という思いはアルバムをリリースしてからより強くなったので、自分でもこういう曲ができたことはすごくうれしかったです。

──ライブでも盛り上がりそうですね。

すでにツアーでは披露しているんですけど、アットホームな雰囲気というか、みんなで一緒に思いを共有できている感じがあって。皆さんの笑顔を見ながら「あ、きっとこの曲は大きくなっていくな」と実感しているところです。

SMAPみたいな商店街ソング

──表題の2曲がドラマチックな仕上がりな分、カップリングの「SUNDAY」の肩の力が抜けた感じは心地よいですね。この曲はいつ頃書いたものなんですか?

これはつい最近、一番新しい曲ですね。「SUNDAY」は私の中の商店街ソングなんです。

──商店街ソング?

瀧川ありさ

私、曲を書くうえで一番すごいことは「いかにどうでもいいことを書けるか」だと思っていて。大きなことなんていくらでも言えると思うんですけど、日常的なことを人とは違った視点で切り取って、ギリギリのラインで歌にする能力というか。星野源さんの楽曲とかって、あらゆる人の日常に寄り添えるじゃないですか。

──なるほど。

SMAPとかもそう。「どんないいこと」とか、特に1995、96年頃のSMAPの歌詞って、ものすごい“日常”なんですね。もう“商店街!”みたいな(笑)。そんな歌詞を国民的アイドルが歌ったときの化学反応がSMAPのすごさだと思うんですけど。そんな曲が作りたくて、この曲はOLの友達の話を聞きながら「日曜日ってステキなんだな」とか想像を巡らせながら書いていきました。

──そうだったんですね。この曲は「がんばれてないな」とか「このままでいいのかな」と思ってしまう人の心にそっと寄り添う楽曲だと思います。

サウンドもすごくフランクなので何も考えずにノリノリで聴いてもらえるんだけど、聴く人によってはハッとする部分があるかもしれないですね。あとは今までさまざまな色の曲を書いてきましたけど、意外とこういうノリの曲ってなくて、ライブではその新たなポジションとしても育っていくのかなと思います。

ニューシングル「ノーサイド / ONE FOR YOU」 2017年2月22日発売 / SME Records
期間生産限定盤 [CD+DVD] 1500円 / SECL-2117~8
通常盤 [CD] 1300円 / SECL-2116
期間生産限定盤CD収録曲
  1. ノーサイド
  2. ONE FOR YOU
  3. SUNDAY
  4. ノーサイド -Instrumental-
  5. ONE FOR YOU -Instrumental-
期間生産限定盤DVD収録内容
  • ノーサイド Music Video
通常盤CD収録曲
  1. ノーサイド
  2. ONE FOR YOU
  3. SUNDAY
  4. ノーサイド -TV size ver.-
  5. ノーサイド -TV size ver. Instrumental-
瀧川ありさ 1st recital live tour 2017 "Spring Journey"
  • 2017年4月6日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2017年4月7日(金)広島県 Live Juke
  • 2017年4月13日(木)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2017年4月14日(金)新潟県 ジョイヤミーヤ
  • 2017年4月20日(木)宮城県 darwin
  • 2017年4月22日(土)北海道 札幌くう
  • 2017年4月27日(木)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2017年4月28日(金)京都府 京都MUSE HALL
  • 2017年5月3日(水・祝)神奈川県 Yokohama O-SITE
  • 2017年5月6日(土)埼玉県 西川口Hearts
  • 2017年5月13日(土)長崎県 Ohana Cafe
  • 2017年5月14日(日)福岡県 ROOMS
瀧川ありさ(タキガワアリサ)
瀧川ありさ

1991年生まれ、東京出身のシンガーソングライター。幼少期より音楽に親しみ、中学2年生のときにバンド活動を開始する。高校卒業と前後してバンドが解散すると1年のブランクののち、ソロアーティストとして活動を再開。2015年3月にアニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」を収録したシングルでメジャーデビューを果たす。7月に2ndシングル「夏の花」、11月にはアニメ「終物語」のエンディングテーマに採用された3rdシングル「さよならのゆくえ」を発表する。コンスタントにリリースを重ね、2016年11月にメジャー1stアルバム「at film.」を発表。2017年2月22日に自身初の両A面シングル「ノーサイド / ONE FOR YOU」をリリースした。