鈴木雅之ソロ40周年&70歳!これぞデュエットの真髄「MARTINI DUET DELUXE」|豪華参加者15人からメッセージ (2/4)

“マイ・ソウル・お姉ちゃん”との原風景

──Disc 2は「KING & QUEEN」と題した、鈴木聖美さんとのデュエット集。先ほど子供の頃、姉弟で歌って遊んでいたことがルーツだというお話がありましたが、当時の原風景としてまずどんな光景を思い出しますか?

実家の子供部屋は相部屋で、2段ベッドの上が僕、下がお姉ちゃん。その部屋にステレオが置いてあってね。お姉ちゃんは小学5年生ぐらいからラジオのアメリカントップ40を聴いて、気に入った曲のレコード買い漁り始めて。そこにはR&BもあればThe Beatlesやフォーキーなものもあった。僕はその中でもR&Bに傾倒して、最初に好きになったのがSam & Daveという男性デュオ。お姉ちゃんがヒアリングでカタカナにしてくれた歌詞を見ながら、ステレオの前で正座して一緒に歌って遊んでたんだよね。今思えば、僕のデュエットの原点はそこだった。お姉ちゃんと歌うときはいつもその頃のことが思い浮かぶんだよ。

──Disc 2の1曲目はダニー・ハサウェイとロバータ・フラックの「Where is the Love」のカバーの新録音です。作曲者であるラルフ・マクドナルドとウィリアム・ソルターのコンビは、J-POPシーンに多大な影響を与えた「Just the Two of Us」(グローヴァー・ワシントン・ジュニア&ビル・ウィザース)も手がけています。

これも去年亡くなったロバータ・フラックへのトリビュートの気持ちも込めて選曲しました。「Where is the Love」は日本では当時そんなにヒットしなかったんですけど、今年2月のグラミー賞授賞式の中でロバータ・フラックのトリビュートコーナーが設けられて、チャカ・カーンとジョン・レジェンドがこの曲を歌っていたから、驚いたよ。こっちはそれより前にレコーディングしてるから、すごくない? 俺、先見の明があるなと思った(笑)。アルバム「Roberta Flack & Donny Hathaway」の中でも「You've Got a Friend」なんかと比べるとスタンダードな感じで、10代の頃の我々にはちょっと敷居が高い曲でね。だけど大人になるにつれ「Where is the Love」のよさがわかってきて。去年お姉ちゃんにこの曲をぜひやりたいと言って、歌ってもらったんだ。

鈴木雅之

──アレンジは、カバーアルバム「DISCOVER JAPAN」シリーズ3部作や、2017年のオーケストラライブを共同制作してきた服部隆之さんです。

オファーしたのが隆之がものすごく忙しい時期でね。だけど、ソロ40周年と古希のアニバーサリーなんだから僕がやらないわけにはいかない、休み返上でやらせていただきます、と言ってくれたのは本当にありがたかった。この曲はイントロがオリジナルよりちょっと長いんだけど、これは「東京の大森という下町の町工場に歌うことが好きな姉弟がいて、やがて2人は大人になり、それぞれが全国にラブソングを届けるボーカリストになっていきました」というインタールード的な音を作ってほしいとリクエストしたんだ。それを思って聴いてもらうと、今言ったことがわかるんじゃないかな。

──確かに下町の風景や、ステレオの前に並んで座ったお二人の姿が浮かんできます。

ね? プロデュースってそういうものなんだ。自分の中にあるイメージを、いかにわかりやすく伝えて具体化する道筋を作っていけるか。これは自分が長年やり続けてきていた中で学んできたことでもある。「DISCOVER JAPAN」シリーズは全部日本の名曲だったからR&Bを隆之とやるのは初めてだったけど、みんながそれぞれお祝いの形で参加してくれて心からうれしく思います。

デュエットは“バトル”ではなく“エスコート”

──Disc 2にはほかにも、2024年に杉真理さんが鈴木聖美さんに提供した「奇跡のような日」が装い新たに収録されています。

杉さんは普段から仲よくさせてもらっていて、お姉ちゃんの35周年のときにこの曲をプレゼントしてくれたんです。「もし時間があったらマーチンと歌ってもらえたらうれしいな、という気持ちで書いた」と言ってくれて。残念ながらそのときはスケジュールが合わなかったんだけど、今回は僕なりのアプローチをしたいなと思って、ロバータ・フラックの「Killing Me Softly」的なノリで作るぞと、うちのアレンジャーでバンマスの大坪に伝えました。そう言えば、ロバータ・フラックの1stアルバムのタイトルは「First Take」。……ほら、鈴木雅之って「THE FIRST TAKE」にけっこうお世話になってるじゃない?(笑) 今の若い子たちはみんな“ファーストテイク”って知ってるけど、70年代に青春期を過ごした我々からすれば、ロバータ・フラックで初めて知った言葉だったんだよ。

──6月にスタートする全国ツアー「masayuki suzuki taste of martini tour 2026 Step 123 Season 2 "70/40th anniversary"」の全国30都市38公演すべてに鈴木聖美さんが参加することも発表されました。

お姉ちゃんとこういう形で全国を回ることは初めての経験だから、楽しみだね。お互いいろんなステージに立ち続けてきたけど、お姉ちゃんも来年4月でデビュー40周年だし、「思い立ったが吉日」じゃないけど、出し惜しみはやめようと思って。その前夜祭として1人でも多くの人に鈴木聖美というソウルディーヴァの存在を感じてほしいね。お姉ちゃんとのデュエットはDNA的なものがものすごく大きいから、ほかの人とは比べることができない。ツアーでは、鈴木聖美と鈴木雅之、こんな姉弟がいたんだ!と改めて感じてもらえるステージにできればと思います。

──姉弟だからこそのハーモニーをぜひとも堪能したいです。ちなみに今回のアルバムには「ロンリー・チャップリン」などカラオケ音源も多数収録されていますが、デュエットをうまく歌うコツはなんでしょうか?

自分の二大アイドルはマーヴィン・ゲイとルーサー・ヴァンドロスなんだけど、2人ともそれぞれデュエットのアプローチをすごく大事にしていて「デュエットの達人」と僕は呼んでるんだよ。彼らのデュエット曲を聴くと、お互い歌い上げても決して“バトル”じゃない。パートナーのよさを引き出しながら、エスコートする感じで歌ってるんだ。そこがものすごく魅力的であり、自分にとってデュエットとはそうあるべきだということを学べたのは2人のおかげだから、頑なに意識しているところだね。

“介護”ではなく楽しんでくれる、孫世代の女性シンガー

──Disc 3「King & Kaguya family」はテレビアニメ「かぐや様は告らせたい」シリーズより、伊原六花、鈴木愛理、すぅ(SILENT SIREN)、高城れに(ももいろクローバーZ)、古賀葵という歴代デュエットパートナーとの主題歌が収められています。

去年12月31日にテレビスペシャル「かぐや様は告らせたい 大人への階段」が放送されるということで、新たな主題歌「アブナイキオク」を四宮かぐや役の声優・古賀葵ちゃんと一緒に歌ったんだけど、相手が本物のかぐやなわけじゃない? こっちも会長(白銀御行)になったような気持ちで歌えたんだよね(笑)。ここまでやってきた役得みたいな気分だし、何よりも「かぐや様」ファンにはプレゼントになると思いましたね。アルバムには1作目の「ラブ・ドラマティック<feat. 伊原六花>」からではなく、あえて最新から並べることで、かぐやたちとの思い出を反芻するように何回もリピートしたくなるという。そういう選曲の妙は大好きだから。

──2019年に「アニソン界の大型新人」として「かぐや様」に携わられたことは本当に大きな出来事だったんですね。

考えてみれば、昭和、平成、令和……最初は家族や仲間といった自分のファミリー的なつながりから出発して、いろいろ枝分かれして、いろんなボーカリストや女性シンガーたちと歌ってくることができた。「かぐや様」もまた、「やっぱりデュエットっていいな」と思えたホームでもあるんだよね。だって、それまではせいぜいアルバムで1曲デュエットするぐらいだったけど、「かぐや様」という作品では5回もオープニング主題歌を歌わせてもらったこと自体、特別なものだから。しかも、さっき言ったトニー・ベネットじゃないけど、年齢で言えば孫のような世代の女性シンガーたちと一緒に歌ってるじゃない? ここに整合性を持たせられるのは鈴木雅之ならではという自負はあるから。なかなか難しいよ? 70という年齢は。時として介護みたいになりかねないところ(笑)、相手も構えずに楽しんでくれているのはうれしいよね。若い人たちと年齢差を超越して歌い続けることで、自分自身いつまでも若くいられる感覚はすごくあります。

これからの人生は「思い立ったが吉日」

──今回のアルバムと同時に、昨年開催されたデビュー45周年ツアーの映像作品「masayuki suzuki taste of martini tour 2025 Step123 season2 "All Time Doo Wop"」もリリースされます。

去年はグループでのデビュー45周年だからロックンロールとドゥーワップがメインだったし、女性のコーラスもなく、男だけのアプローチでやった「男祭り」だったわけ。だからこそ余計にソロ40周年は女性に囲まれてもいいんじゃないか、70歳だし、という気持ちが強かったことは告白しておくね(笑)。

鈴木雅之

──最後に、今年9月で古希を迎えられますが、「Step123 season2」の先のビジョンはどのように描かれていますか?

どうだろうね? 10年前、還暦を迎えるまでの3年間を「Step123」と名付けたときは、クリアした瞬間に次の景色が何か見えてくるだろうと思ったんだ。よくステージでも言ってたけど、還暦はひとつの人生のゴールだと思ってたから、自分がクリアした瞬間にまだまだ届けなきゃいけない思いとか歌があることに気付かされたのが「Step123」の到達地点。だからこそ今回、70になるまでの3年間を「Step123 season2」とすることが自分らしさだと思ったけど、さすがに古希からの10年は全然違うと思う。体力的なこともあるし、かけがえのない人たちも亡くなっていくし。だからこそ、これからは「思い立ったが吉日」で、出し惜しみなく今を楽しむことが次につながる。まあ、今言えるのは「目指せ、トニー・ベネット」ってことだね(笑)。そして古希に向けて思うことは、1日1日を何のために生きるのではなく、誰のために生きるのか。この先10年、人を思う気持ちを心と体に刻んでいきたい。