ナタリー PowerPush - supercell×中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)

似た者同士の濃厚音楽談義

惰性でできることって本当にないんだな

──ryoさんの「コード進行が豊かとか、3秒に1回何かが起こるみたいなJ-POP的な展開も、昔の自分にとってはむしろ邪悪な存在だった」という意見、中野さんはいかがですか?

中野 俺も小さいときからコードが多いのが嫌だったんだよね。洋楽ってフックまでの流れが1コードだけとかすごくシンプルで、コードじゃなくてサウンドメイクで持っていく部分が多いから、音像感とか空間に意識を持っていって聴くことができるんだけど、日本のポップスはコード展開も多いし、入ってくる楽器の種類も多くて。だから自分にとっては落ち着いて聴けない音楽だなって思ったの。そう小さいときに思ったのが、たぶんすべての始まり(笑)。

ryo なるほど。

中野 ただ、エレクトロニックミュージックも当時から何周かしてるんですけど、僕はジャーナリスト的に音楽地図を作っちゃうところがあって。その中でいろんな音楽の隆盛を見ていると、もはや何が正解なのか、訳がわからなくなってくる(笑)。

──流行っていたものがやがて廃れて、そしてまたリバイバルしてっていうのを繰り返していますからね。

中野 で、今は「正解なんてないんだな」ってところに行き着いて。要は自分が信じた音楽を作るしかないなって思ってるんだけど………それはそれで難しいんだよね。

──そうですよね。

中野 例えば今、EDMが流行ってるじゃない? あれに対して自分がどういう関わり方をするかって考えると、すごくややこしくて。だって中途半端にトレンドを取り入れたら、それこそジジ臭いものになるだろうし、そんなの自分が許さないから世の中に出ることはないと思うんだけど。ただ、それに代わる何かは常にアウトプットしなきゃいけないとは思ってるから、その方法はいつも探してて。だからやっぱり、新しいアルバムを作ろうとなるといまだに新しいハードルがニョキニョキと出てくるし、惰性でできることって本当にないんだなって、今改めて思ってる。最初は「EMBRACE」を作った勢いでもう1枚作ればいいなって思ってたんだけど、いざ作り始めてみたらやっぱりそうもいかなくて………。

多作な人ってうらやましい

──ちょっと待って、もうアルバム作り始めてるんですか!?

中野 うん(笑)。

──「EMBRACE」完成からまだ3カ月なんですけど(笑)。

中野 まだ本当に作り始めですけどね。なかなか難しい。だからほんと、多作な人ってうらやましい。1年に1枚のペースで作り続けてる人も多いじゃない? 本当にすごいと思う。

──それこそryoさんは今、supercellとEGOISTを並行して作ってますけど。そのあたりはどうですか?

ryo でも自分も、この職業に就くまでは1曲作るのに1年とかかかってましたよ。1年も2年も同じ曲をいじってて終わらないみたいな。

中野 すごくわかる(笑)。

ryo ただ、歌モノってどこかで「これはここで完成」ってわかるんですよ。感覚的な音楽って正解というか、何が正義なのかを見つけるまでにすごく時間がかかるんですけど、歌モノはそこが見えやすい。その違いはあるかもしれないですね。

中野 だから第三者が締め切りを作ってくれるっていうのは、すごく大事だよね。そうしないと一生かかっても1曲も完成しないってことになりかねない。俺、デビューしてラッキーだったなと思うのは、締め切りができたことだもん(笑)。

ryo あはは(笑)。

中野 何日がトラックダウンで、何日がマスタリングでって具体的になってくると、もう「今の自分を出すしかない」って腹が括れるから。それがなかったらきっと今でもずーっと、実家の子供部屋とかで何かやってるみたいな人になってたと思う(笑)。

ryo すごくわかります。しかも自分の場合、何をやってもBOOM BOOM SATELLITESという壁を越えられなくて。その間にいろんなライブやフェスに行って、いろんな音楽聴いたりもしたんですけど、帰ってきて自分が作るものはどうしてもBOOM BOOM SATELLITESと比べて劣ってると思ってしまってたから。そういう意味では今はある種、あきらめたというか。BOOM BOOM SATELLITESになれないのはわかったので、もっとリスニング要素に特化したところで自分が何をできるか、新しいものを見つけられるかっていうことを、今やっている感じですね。

歌モノは歌詞が呼ぶ世界観を見つけてこれるかどうかで決まる

──さっき「歌モノの場合は、どこかで完成が見える」っておっしゃったじゃないですか。それってもう少し具体的に言い表せますか?

ryo 歌モノって、歌詞のストーリーラインによって決まってくるところがあるので。その歌詞が呼ぶ世界観を見つけてこれるかどうかで決まる。逆に言えば、それを見つければOKなんですよね。さらに自分の場合はバンド編成のサウンドなので、それだけでかなり範囲が絞られるから。BOOM BOOM SATELLITESの場合は、そこに打ち込みやエディットが入ってくるから果てしないと思うんですけど。

中野 そうなんですよ……。

ryo しかも、ブンブンの場合は似たような音楽やってる人がいないから、何かを参考にしようもないでしょうし。それに比べて、歌モノは先駆者が鬼のようにいるので。だから自分の場合、そういう路線で捉えてきて、最近ようやくTHE BEATLESや山下達郎さんのすごさがわかってきましたね。ただ、それをすごいって言ったらいけない気もしてるんですけど。

──それはアーティストとして、そこをすごいと肯定したらそれより上に行けなくなるから?

ryo そんなにカッコいいものではないですけど(笑)。でも「この人のこの曲いいよね」ってことを表立って言うようなアーティストにはなりたくないっていうのは、すごくありますね。

EGOIST ニューシングル「All Alone With You」/ 2013年3月6日発売 / Sony Music Records
初回限定盤 [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8238~9
通常盤 [CD] 1223円 / SRCL-8240
CD収録曲
  1. All Alone With You
  2. elbadaernU
  3. All Alone With You (TV Edit)
  4. All Alone With You -Instrumental-
  5. elbadaernU -Instrumental-
  6. All Alone With You (TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤DVD 収録内容
  • 「All Alone With You」Music Video
  • 「PSYCHO-PASS サイコパス」Ending ノンクレジットムービー
supercell ニューシングル「The Bravery」/ 2013年月日発売 /
初回限定盤A [CD+Blu-ray] 1890円 / SRCL-8241~2
初回限定盤B [CD+DVD] 1680円 / SRCL-8243~4
通常盤 [CD] 1223円 / SRCL-8245
CD収録曲
  1. The Bravery
  2. She is my senior
  3. 青空
  4. The Bravery (TV Edit)
  5. The Bravery -Instrumental-
  6. 青空 -Instrumental-
  7. The Bravery (TV Edit) -Instrumental-
初回限定盤DVD / Blu-ray 収録内容
  • 「The Bravery」Music Video
BOOM BOOM SATELLITES アルバム「EMBRACE」/ 2013年1月19日発売 / Sony Music Records
初回限定盤 [CD+DVD+USB] 4750円 / SRCL-8162~4
初回限定盤 [CD+DVD+USB] 4750円 / SRCL-8162~4
通常盤 [CD] 3059円 / SRCL-8165
supercell(すーぱーせる)

コンポーザーのryoと複数のイラストレーター、デザイナーによって構成されたユニット。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。その人気はインターネットを通じて爆発的に広がり、2009年3月に待望のメジャーデビューを果たす。1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、翌年の「第24回日本ゴールドディスク大賞」にて「ザ・ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞した。続く1stシングル「君の知らない物語」からはゲストボーカルにnagiを迎える。「君の知らない物語」はアニメ「化物語」の主題歌に起用され、こちらも大ヒットした。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリースし、オリコン週間ランキングで3位を獲得。その後、新ボーカリストを募集するオーディションを敢行し、2000人を超える応募者の中から福岡県出身のこゑだを選出。2012年12月にアニメ映画「ねらわれた学園」のオープニングテーマとなるシングル「銀色飛行船」をリリース。2013年3月にテレビアニメ「マギ」のエンディングテーマを含むニューシングル「The Bravery」を発表した。

BOOM BOOM SATELLITES
(ぶんぶんさてらいつ)

中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表した。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2004年には映画「APPLESEED」の音楽を手がけ、その後もさまざまな映画やアニメに楽曲を提供。デビュー15周年を迎えた2012年6月には約3年ぶりのシングル「BROKEN MIRROR」をリリースした。2013年1月、2年7カ月ぶりのオリジナルフルアルバム「EMBRACE」を発表し、自身の楽曲のパーツを提供して、ニコニコ動画とコラボしたリミックスコンテストを開催するなど型にはまらない活動を展開。しかし同年1月、川島が脳腫瘍治療のためしばらくライブ活動を休止することを発表。そして2月末に、5月3日の日本武道館公演から活動を再開させることを宣言した。