ナタリー PowerPush - スーパーカー

今のナカコーが磨き上げたあの頃の楽曲「RE:SUPERCAR 1」

デモは恥ずかしいってよりは面白かった

──このデモって作ったの覚えてました?

うーん、うん、大半は覚えてる。

──聴くと当時のことがよみがってくるっていう感じですか。

うん、具体的ではないけど覚えてますね。

──さっき1枚目に入ってる元の曲を聴いたときはちょっと恥ずかしかったとおっしゃいましたが、2枚目のデモに関してはどういう感想を持たれたんですか。

面白かったですよ。恥ずかしいっていうよりは面白い。

──このときの俺はいったい何を考えてたんだ!? とか思って。

まぁ単純に音が好きだったから録音するっていう行為自体が好きだったし、だから面白いこととかタイプの違う楽曲にトライしてみたり。あと、やることなかったからね、普通の生活で。別にバイトもしてないし、だから暇だった。プータローだったから、職がなかったなぁぐらいしか思い出せない(笑)。毎日家にいて曲作ってて、これ何になるんだろうなと思ってたの。あはは(笑)。

──人に聴かせるわけでもなく。

そうそう。

──今みたいにインターネットが発達してたら、人に聴かせる手立てはあったろうけど。

また別だったけど。

──そのとき何を考えたんですか。やっぱりそういう状況をなんとかしたいと思ってた?

まず考えてたのは、田舎から出たいってこと。すごく閉塞感が強かったから、とりあえず出たいって感じかなぁ。出るにはどうすればいいんだろうって。出るのにも理由がいるから、田舎だと。周りの人たちに、大学も行ってないのになんで出るの、別に就職するわけでもないのになんで出るの、みたいに思われて。田舎は、出る奴イコール遊びに行く奴っていう空気があるから。

──じゃあその田舎から出るための理由が欲しいからソニーにテープを送ったっていうのがあったわけだ。

うん。出たいっていうとね、親にも止められるわけだし。

──まぁ止められるでしょうね。

普通に堅気の生活、普通の公務員とかになってほしいわけだから、親は。そんな遊び人みたいな職業に就いてどうすんの、みたいな。

──そうでしょうね、普通の親は。

うちもそう言われたし。それを納得させるには、いい曲書いて音楽で生活するしかないし。

──じゃあその頃の鬱々とした感じっていうのが、このテープには込められていると。……っていうとなんか怨念がこもってるみたいだけど(笑)。

あははは!(笑) まぁそういうのも根底にはあるけど。

全員が共通して「良い」と思えるものはやり尽くした

──あの、そうやって1st、2ndでだいぶ方向を絞っていったって話が出ましたけど、逆に言うとそういうふうに絞ったことによって、だんだんスーパーカーってバンドが窮屈になってきたっていうのがあったりしました?

っていうよりは、次何やろっかなぁみたいになったのが3枚目、4枚目、5枚目とか。後半はそうだったかな。1~2枚目は路線が決まってたから、それ以降どうしよっかって。逆に言うと1枚目と2枚目を出して、その後はずっと考えながら出してたかな。窮屈っていうよりは、最後に「もうない」って思うまでは考えてた。

──じゃあ1~2枚目で路線を決めて、その路線を守んなきゃいけないがための窮屈さとかそういうのはなかった?

それはなかった。もう2枚目で変えると思ってたし。で、批判も来るから、それ楽しいねみたいな。

──じゃあまぁ、もうやることがなくなって最後は解散っていう。

うん。本当にやることがなかったかな。

──それは、これを作った今も変わらないの? もうこのバンドでやることはないなっていうふうに思う?

うん、そうだね……。どっか別の視点が入ってるから、もうあんまりやることはないかもね。

──例えば今この4人がまた結集したらこういうことができるだろうな、とかそういう可能性みたいなものは見えてこなかったですか?

うーん……それは考えたことなかったかな。全員が共通して、良いって思えるものはもうやり尽くしたから。それ以上のものは、たぶん誰かのエゴが強くなったものだから。そうじゃなくて(バンドでは)平等でありたいと思うから。平等でいられるのはあそこまでって感じかな。

──あぁ、なるほどね。こういう言い方が適切かどうかわからないけど、人間としての成長過程の中の1つだったって感じなんですかね。

そういう目で見るともちろんそう。全然そうだと思う。

「RE:SUPERCAR 2 ~redesigned by nakamura koji~」 / 2011年4月20日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD] / 3360円(税込) / KSCL-1755~1756 / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤[CD] / 3059円(税込) / KSCL-1757 / Amazon.co.jpへ
DISC1 収録曲
  1. Walk Slowly
  2. Sun Rider
  3. I need the sun
  4. DRIVE
  5. Dive
  6. 333
  7. OOYeah!!
  8. Pink Rock
  9. Jump
  10. Lucky
  11. Wonderful World
  12. ONE
  13. Low-down (Live Scene)
  14. TRIP SKY
  15. cream soda
DISC2 収録曲(※初回限定盤のみ)
  1. Cream soda demo
  2. Wonderful World demo
  3. untitle #1
  4. untitle #2
  5. untitle #3
  6. CAT demo
  7. 333 demo
  8. ZEBIUS demo
  9. untitle #4
  10. untitle #5
  11. I wanna stay demo
  12. untitle #6
  13. Hello demo
  14. Drive demo
  15. untitle #7
  16. Fllicker demo
  17. untitle #8
  18. MIAMI BEACH demo
  19. In Hawaii demo
  20. Melancholic Bass demo
  21. Tulip demo
  22. Sun Rider demo
  23. untitle #9
  24. I need the sun demo
  25. Life gose on demo
  26. U demo
  27. Jet Bee Town demo
  28. untitle #10
  29. untitle #11
  30. Holly demo
  31. Skyphone speaker demo
  32. Spider demo
  33. untitle #12
  34. YES demo
  35. Sugar Head demo
  36. Sugar Song demo
  37. Rental Car demo
  38. Noman demo
  39. untitle #13
  40. Summer tune demo
スーパーカー

中村弘二(Vo, G)、いしわたり淳治(G)、フルカワミキ(B, Vo)、田沢公大(Dr)による4ピースバンド。1995年に青森で結成し、1997年9月にシングル「cream soda」でデビュー。初期の作品は繊細な歌詞とアタックの強いギターサウンドを特徴とし、ロックファンを中心に人気を集める。

その後2000年2月発表の8thシングル「FAIRWAY」ではディスコビートを取り入れ、同年10月リリースの10thシングル「WHITE SURF style 5.」では高速フリーフォームロックを聴かせるなど、徐々にその幅広い音楽性を提示。2001年11月発売の11thシングル「YUMEGIWA LAST BOY」では砂原良徳をプロデューサーに迎え、エレクトロニカに接近した側面を見せた。

また音楽とビジュアルの融合にも積極的で、2000年の全国ツアー「SUPERCAR TOUR 2000 "FLOOR EXTRA"」ではVJを宇川直宏が務め、ハイブリッドなステージを展開。2004年の全国ツアー「SUPERCAR TOUR 2004 "ANSWER"」では5thアルバム「ANSWER」のジャケットアートワークを担当した宇川直宏×田名網敬一によるサイケデリックな映像が、アルバムの世界観を再現するのに一役買った。

2005年1月20日に発売された「ROCKIN' ON JAPAN」誌上にて解散を発表。同年2月26日に新木場STUDIO COASTで行われたラストライブにて解散した。