ナタリー PowerPush - スーパーカー
今のナカコーが磨き上げたあの頃の楽曲「RE:SUPERCAR 1」
今の自分とのズレはあまり感じなかった
──自分の音楽に向かってく姿勢とか、基本的な音の好みであるとか、そういうことで自分の中で変化してるものはありますか?
うーん、まぁでも幅じゃないかなぁ。うるさい音楽でも、1から10まであるから、うるささの幅が。「歪んだギター」って言っても10段階ぐらいあるから。曲によって意味も違うし。だからそれを知ったか知らないかみたいな、そういうのはあると思うけど。
──じゃあ基本的な方向性としてはそんなに変わってないけども、その振れ幅は昔と今ではだいぶ違ってきてると。許容範囲ってことなのかな、それは。
うん、許容範囲だし、目的っつーか楽曲はどっちの方向でどのぐらいのレベルで、みたいな。そういうものかなぁ。
──じゃあそんなに現在の自分との大きなズレは感じなかったっていうことですか。
うん、あんまり感じなかったけど、感じるような曲もあったから、それは除外したんだよね。
──今の気分とそんなに違和感のないものを選んでいったと。最終的に残った曲は、どこが決め手になったんですか?
いや、まぁ単純にすごく限られた制作期間だったから、その中で効率良く、なおかつ早くできて違和感もないようなものをできる楽曲を選んでるから。
──早くできるっていうのは要するに、ここをこういうふうに直せば今の気分に寄り添って満足いくものになるだろうというのが明確に見えるような?
うん。合理的にやんないと本当に間に合わないレコーディングだったから。
──どのぐらい時間かけたんですか?
仕込みは1週間で仕込まきゃいけなくて。
──あら。
あとずっとミックス。スタジオに持ってって、エンジニアの渡辺省二郎さんと一緒に、こうしてああしてこうしたらこうなるんじゃない?みたいな話をしつつやってみて、また今度は家に持ち帰ってやってみて。だから1日2.5曲ぐらいのスピードで作っていった。
スーパーカーを聴いたことがない人が「いいね」って思えるように
──良い意味でね、今の自分には作れないなって感じる曲ってありました?
いや、あると思いますけどね、全然。
──例えば収録曲の中にあります?
「DRIVE」とかできないかなぁ。
──それはどういう意味で?
これ作ったときは、メロディに集中してたから。今はそんなにメロディに集中できない。
──できない?
できない。そんな引き出しは今ないから。
──メロディに集中するっていうのは要するに、いい曲というのはいいメロディであるという信念が昔はあった?
うん。メロディに重きを、比重を置いてた。
──じゃあ逆に言うと、今はメロディだけじゃなくて、いろんな要素がいい曲を作ることに関係してくるってことがわかってきたと。
うん、今はね。自分が好きな楽曲は、メロディだけじゃなくてトータルのバランスが美しい曲だし。いびつなバランスでもどっちもいいと思いますけど、ただ自分が好きで、作って楽しいのは、バランスが取れた楽曲かなぁ。
──それは打ち込みで曲を作り始めたことに関係してるんですか?
まぁどっかでは関係してるんじゃないですか。
──バランス感覚ね。じゃあ、ここに収められた曲っていうのはそういうバランス感覚みたいなものを、化粧直しするときに考えたっていうことなんですね。
うん。それも考えてるし、聴いたことない人が聴いて「あぁいいね」って思えるように。新しく聴く人は昔の音を全然知らないで聴いてくれるわけだから、どっちかっていうとそっちかな。で、バンドに興味持ってもらえればいいと思うし。もう活動してないんだけどね。ふふふふ(笑)。
スーパーカーについて訊かれることはない
──今現在やってるバンドでファンも目の前にいるんだったら、こういうことをファンに届けたいっていうのがある程度明確になると思うんですけど、実体のない、すでに活動を終えてるバンドが改めて新しい音源を出すってとなると、何を見せるのか、何をアピールするのか、なかなか難しいと思うんですよ。そこらへんのことはどういうふうにお考えになってますか?
でも自分も60年代の全然知らないバンドを「あっいいな」って思って、そのバンドを掘り下げてく楽しさを知ってるから。そのバンドがいったい何をして何を考えてたのか知るのは、楽しいことだとは思うし。今回の作業はその感覚にちょっと近かったかな。やってて面白いと思ったから。こんなことやる奴はいないと思ったし(笑)。
──要するに自分が過去のバンドをいろいろ掘ってるときの感覚みたいなのを、新しいファンの人にも面白がってもらえればいいなということですか。
うん。全然知らないバンドだけど、いったい何したんだろうねって。
──いろんな人にスーパーカーのことを訊かれる機会は多いですか。
ないですけどね。
──あっ、ないんだ。
気ぃ遣ってきて。
──わははははは(笑)。
気ぃ遣わなくていいんだけど、「ちょっと訊いていいですか」とか言われるから。
──いや、やっぱ気は遣いますよ(笑)。
普通に言えばいいのにとか思いますけど。
──ある程度時間が経って、客観的に見られるようになったのもあるんですかね。
あるんじゃないですか。当の本人はそんなに気遣わないんだけどね、そういうのに対して。
DISC1 収録曲
- Walk Slowly
- Sun Rider
- I need the sun
- DRIVE
- Dive
- 333
- OOYeah!!
- Pink Rock
- Jump
- Lucky
- Wonderful World
- ONE
- Low-down (Live Scene)
- TRIP SKY
- cream soda
DISC2 収録曲(※初回限定盤のみ)
- Cream soda demo
- Wonderful World demo
- untitle #1
- untitle #2
- untitle #3
- CAT demo
- 333 demo
- ZEBIUS demo
- untitle #4
- untitle #5
- I wanna stay demo
- untitle #6
- Hello demo
- Drive demo
- untitle #7
- Fllicker demo
- untitle #8
- MIAMI BEACH demo
- In Hawaii demo
- Melancholic Bass demo
- Tulip demo
- Sun Rider demo
- untitle #9
- I need the sun demo
- Life gose on demo
- U demo
- Jet Bee Town demo
- untitle #10
- untitle #11
- Holly demo
- Skyphone speaker demo
- Spider demo
- untitle #12
- YES demo
- Sugar Head demo
- Sugar Song demo
- Rental Car demo
- Noman demo
- untitle #13
- Summer tune demo
スーパーカー
中村弘二(Vo, G)、いしわたり淳治(G)、フルカワミキ(B, Vo)、田沢公大(Dr)による4ピースバンド。1995年に青森で結成し、1997年9月にシングル「cream soda」でデビュー。初期の作品は繊細な歌詞とアタックの強いギターサウンドを特徴とし、ロックファンを中心に人気を集める。
その後2000年2月発表の8thシングル「FAIRWAY」ではディスコビートを取り入れ、同年10月リリースの10thシングル「WHITE SURF style 5.」では高速フリーフォームロックを聴かせるなど、徐々にその幅広い音楽性を提示。2001年11月発売の11thシングル「YUMEGIWA LAST BOY」では砂原良徳をプロデューサーに迎え、エレクトロニカに接近した側面を見せた。
また音楽とビジュアルの融合にも積極的で、2000年の全国ツアー「SUPERCAR TOUR 2000 "FLOOR EXTRA"」ではVJを宇川直宏が務め、ハイブリッドなステージを展開。2004年の全国ツアー「SUPERCAR TOUR 2004 "ANSWER"」では5thアルバム「ANSWER」のジャケットアートワークを担当した宇川直宏×田名網敬一によるサイケデリックな映像が、アルバムの世界観を再現するのに一役買った。
2005年1月20日に発売された「ROCKIN' ON JAPAN」誌上にて解散を発表。同年2月26日に新木場STUDIO COASTで行われたラストライブにて解散した。