SUNDAYSがSUNDAYSたり得るのは誰のおかげ？

──実際にカラフルな7曲を揃えましたよね。「アッと言わせたい」や「宮田誠のブルース」ではストレートなロックンロールを、「ドジ」や「バンドマンの友達が言うには」ではパンク由来のサウンドを聴かせたかと思ったら「あたしは人間」にはシンセが大フィーチャーされているし「秘めてる」はすごくサイケデリックだし。でも全曲ともトーンは統一されている。

宮田　それはプロデューサーの浅田信一さんの力が大きいんでしょうね。「まるいとんがり」と「バンドマンの友達が言うには」はセルフプロデュース。さすがに自分たちの音っていうものを自分たちでは理解できてるつもりなので、この2曲に関してはまあ問題なく自分たちの音作りができるんですけど、ほかの5曲は浅田さんプロデュースなんです。なのにSUNDAYSらしい音になってるのは、前作の「終わらない旅」からご一緒してるからで。一度一緒にミニアルバムを作ったことで、浅田さんがSUNDAYSの音を深く理解してくれたっていうのがすごく影響してるんだと思います。おっしゃる通り「あたしは人間」ってかなり大胆なアレンジになってると思うんですよ。

──キーになる音がメンバーの担当楽器によるものじゃないし（笑）。

宮田　でも浅田さんはSUNDAYSの音にしてくれる。だからレコーディングがすごく楽しかったんですよ。「終わらない旅」のときはけっこうシンドイ局面もあったんですけど、今回は浅田さんと「鍵盤いる？ いらない？」って感じでスムーズにコミュニケーションできたし苦労した記憶はないですね。

冬実　あとSUNDAYSの曲がどれもSUNDAYSらしくなるのは、私の力なんです！

宮田　あらあら？ おやおや？（笑）

冬実　「何様だよ！」って感じ？（笑）

──でもロックバンドのテイストを決める大きな要因ですよね、ボーカリストの声と存在って。

冬実　ええ。声を乗せたときにバンドの音をすごく魅力的にできてこそのボーカリストだし、私自身、そういうボーカリストだって思ってますから。どんな曲でも私が歌えばSUNDAYSになるって。

「普通の人間でもこんくらいのことは全然できるんだよ」

──そのボーカリストが歌う歌詞についても聞かせてください。繰り返しになりますけど、ホントに明るいし歯切れがいいですよね。

宮田　断定できないことをお客さんに聴かせていいものかっていう気持ちがあるんですよ。悩み相談なんかに対して「いやオレはこう思うけど、まあ最終的には自分で決めれば」って答える人っているけど、それってなんか無責任な気がするんですよね。目の前に悩んだり葛藤したりしている人がいる上に「オレはこう思う」っていう答えを持ってるんなら、それをちゃんと出せよって。で、オレやふーちゃんもいろんな局面に対する自分たちなりの答えを持っているつもりではいるので、それをちゃんと伝えたい。その言葉が聴いている人たちにとってのなんらかの励みになってほしいんですよね。

冬実　カッコいいな、お前（笑）。でもホントに私たちの音楽を聴いて「がんばって生きていくぜ！」とか……。そこまではっきり自覚してもらわなくてもいいんだけど、せっかく聴いてもらう以上、やっぱりその人の人生に何らかのプラスの価値を加えられるといいな、とは思いますね。そのためにも宮田くんの言う通り、私たちなりの回答を示さなきゃいけない、というか、示したい。

──ただ「こうしろ！」と命令はしない。もっと優しいですよね。例えば「秘めてる」では「たまには不満を言いながら 僕ら歩いてく」と。日々歩みを止めずに進んでいくべきなんだけど、とはいえ誰しも不満はあるよね、と。ちゃんと聴き手の情状酌量の余地を認めてるんですよ（笑）。

冬実　あはははは（笑）。確かにそういう感じですね。答えを示したいけど、そんなに気張ったバンドでもないので。肩の力は抜けてるんですよね。熱いんだけど、リラックスしてる。それがSUNDAYSなんですよね、たぶん。

──その感覚がアルバムタイトルの由来でもある？

冬実　そこにリンクしている部分はありますね。

宮田　うん。メンバー全員チャリンコに乗るし、松屋とかでメシを食うし、普通の人間ですから。そんなめちゃくちゃ複雑な人生を歩んできた人たちじゃないんで（笑）。ただステージに上がったら、そこではミュージシャンだし、ロックスターでありたい。聴いてくれる人たちに対して「普通の人間でもこんくらいのことは全然できるんだよ」ってことを伝えたいんですよね、このアルバムで。

オレのピエロぶりを観た誰かに元気になってほしい

──あっ、タイトルの話ついでにもう1つ。2曲目なんですけど……。

宮田　あー……（笑）。

──「宮田誠のブルース」って勇気のあるタイトルですよね（笑）。

冬実　タイトルは私が付けました。

──あっ、そうなんですか。

宮田　オレが「この曲は『宮田誠のブルース』でいくから」って言いだしてたらめちゃくちゃイタいじゃないですか！ たぶん命名者の狙いはオレがそう思われることにあると思うんですけど（笑）。

冬実　もちろん（笑）。いつもアレンジが固まって曲が完成に近づいたら「で、この曲のタイトルどうする？」って話し合いをするんですけど、この曲に関しては宮田くんのパーソナリティがすごくよく出てるから、聴いた瞬間から「これは宮ちゃんのブルースだから『宮田誠のブルース』じゃない？」って言ってました。

宮田　まあ当時の彼女にフラれてすぐに書いた、すごくドキュメンタリー感あふれる詞なので……。

──歌い出しは「悲しいよ 今日もまた 傷付いた フラれたぜ」だし（笑）。でも最終的には正面切って“音楽は素晴らしい”って歌うポジティブなロックンロールですよね。

宮田　僕の名前がタイトルになることで「あっ、この人がフラれたのか」って感じてもらった上でこの歌詞をふーちゃんが歌って。で、ライブで僕がギター片手にステージを走り回ってる姿を観たら「あっ、フラれても元気になれるもんなんだな」って思ってくれるかな、と（笑）。ただこの曲、タイトルがタイトルだから絶対にタイアップが取れないんですよ……。

──テレビ番組や商品やサービスを応援する以前に、“宮田誠”を応援する歌になっちゃってますからね（笑）。

宮田　そこだけが悩みで……（笑）。でもタイアップをとることよりも、オレのピエロぶりを観た誰かが元気になってくれることのほうが、オレにとってはかけがえのないことですから。