透色ドロップ|コロナ禍の真っ只中にデビューし、今日までの日々に手に入れたもの

お披露目もデビューライブもオンラインに

──そんなメンバー5人がそろったのはいつ頃ですか?

橘花 2月頃には会っていたと思いますが、(見並は)遅れて合流したよね。

見並 そうそう。私は3月10日に上京して、その日が初対面でした。

──新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛期間中だったこともあり、お披露目は4月26日にZoomを使った記者会見上で行われました。結成からそこまでの期間はどのように過ごしてました?

見並里穂

見並 私以外のメンバーはみんな実家に帰っていたんですが、私は親からコロナの影響で「帰ってきちゃだめ」と言われて家に1人でいたんですよ。それが悲しすぎて、オンラインレッスンが始まったときに寂しくなって泣いちゃうこともありました。だからお披露目をするまでの自粛期間は、「せっかく熊本から上京したのに、このままデビューできないかもしれない」という不安と寂しさですべてがマイナス方向にしか考えられなくなって。そんな中、メンバーがLINEをしてくれたのが心の支えになってました。むしろ、それがなかったら今頃ここにいないんじゃないかと思います。

──お披露目の最後のほうはメンバーみんな涙を流してましたよね。

見並 あれは悲しい涙というよりもうれし涙なんです。ようやく1歩先に進めたなって。ちょっと未来が見えたことに対する涙でしたね。

──しかし、やっと活動ができると思いきや、5月に行われる予定だったデビューライブが中止になりました。

橘花みなみ

橘花 そもそも5月にライブをやることは難しいだろうなと思っていたので、正直ショックはそんなに受けなかったんですけど、改めて開催が決定した6月18日のライブではファンのみんなに会えると思っていたので、マネージャーさんから「無観客ライブにします」と言われたときは絶望っていうか、放心状態になりましたね。

──そんな無観客のデビューライブはどうでしたか?

見並 私は最年長で夢を追いかけている時間が長かったからこそ、ステージに立てたことがすごくうれしくて、ライブが終わった3秒後に号泣しました。上京する前、親には「本当は正社員として働いてほしい」と言われていたので、ステージに立った自分を見せることで少しは親孝行できたのかなと考えたら、うれしくて涙が出てきましたね。

橘花 本番前に「#アイドルをやらないと死ねない」というライブタイトルがTwitterでトレンド入りして、大勢の人に見られていると思ったら緊張してきちゃって。肩に力が入ってしまい、満足のいくパフォーマンスができなかったです。私はそれが悔しくて「本当はもっとできたはずなのに」と思って泣いちゃいました。

忽那 私は子役をやっていたので、カメラがあってお客さんがいない状況には慣れていたんですよ。ただ、自分がいい感じに踊れたなと思った動きが配信では映っていなくて、「お客さんが入ってるライブだったら観てもらえたのにな」と悔しかったです。

悔しさを晴らすことができた“REVIVAL LIVE”

──その後、7月5日に初の有観客ライブ「#STEPPP〜動員ライブ、はじめました。」が行われましたが、そこでの手応えはどうでした?

橘花 なんとチケットが完売したんですよ。だからすごく緊張しちゃって、逆に「おうちに帰りたい」と思っちゃいました(笑)。

忽那杏優

──ハハハ、逆に帰りたい(笑)。

忽那 私はめちゃくちゃうれしかったです。みんな「ヤバいヤバい!」と慌てていたときに1人だけワクワクしていた気がします。

見並 私はうれしかったのと同時に、やっぱりすごく緊張もして。ただ、お客さんを入れてやるライブが一番楽しいなと実感しました。

──そのあとすぐ7月16日には1stツアー「透色事変」が始まりました。

見並 会場が埋まるのか心配だったんですけど、チケットの倍率が高かったみたいで、蓋を開けたら初日公演は平日にも関わらず満員でした。「せめて特典会だけでも」と来てくれる方も多くて、ファンの皆さんに支えられていいスタートが切れました。

橘花 私が一番記憶に残っているのは8月15日の公演ですね。それまでは200人くらいのキャパの会場でライブをやることが多かったんですが、あの日は600人ほど入るSELENE b2でやらせていただいて。しかも初めてアンコールが起きたんですよ。とても感動して涙が出ちゃいました。

見並 忽那も泣いたもんね。あとは9月20日に“REVIVAL LIVE”として行った 「#アイドルをやらないと死ねない」は、デビューライブと同じ会場でやらせていただいて。デビューライブって1回しかできないもので、それがオンラインになってしまったことがメンバー的にも悔しい気持ちが大きかったので、こうやってリベンジができたことにグッとくるものがありました。

──ある意味、忘れ物を取りに行くライブでしたよね。

見並 6月よりも納得がいくライブができたので、心に残っていた悔しさを晴らすことができたと思います。

「透色学概論」は落ち込んでいる人に寄り添える作品

──12月14日には新作「透色学概論」が配信リリースされました。この作品は透色ドロップにとってどんな1枚になりましたか?

橘花 これまでリリースしてきた曲は「バカになれ!」みたいな雰囲気のにぎやかなものが多かったんですが、「透色学概論」ではきれいなメロディの曲とか、いろんな系統の楽曲が増えたので、私たちのいろんな表情を味わえると思います。

左から見並里穂、忽那杏優、橘花みなみ。
左から見並里穂、忽那杏優、橘花みなみ。

見並 全部の曲が大好きなんですけど、個人的には初めてソロパートをいただけた「ぐるぐるカタツムリ」は大切な1曲になってます。ほかにも「ユラリソラ」「孤独とタイヨウ」とか、自分に自信のなかった主人公が他人に影響を受けて強くなっていくような歌詞の曲が多くて、嫌なことがあった人や落ち込んでいる人に寄り添える作品になったと思います。

──さわやかな曲調のナンバーが多いですが、曲に出てくる主人公たちがみんな強くないのが特徴ですよね。

見並 日陰を歩いている系の、学校では教室の端っこで本を読んでいるような感じですよね。「ぐるぐるカタツムリ」も自分の殻に閉じこもっている女の子が出てきます。

──個人的にはその「ぐるぐるカタツムリ」と「孤独とタイヨウ」が好きです。

見並 今思えば、「透色事変」のファイナルのときに「2ndツアーをやります」という告知映像の中で流れたメロディが「孤独とタイヨウ」だったんですよ。なので、この曲を初めて聴いたときは「ここで伏線回収!?」と驚きました。

忽那 いろいろと思い入れが強いよね。私は「孤独とタイヨウ」を初めて聴いたときにメロディだけで泣いちゃって。そのうえ、歌詞もすごく好きなんです。人の温かさを感じられる素敵な曲になってます。

──12月19日には2ndツアー「透色学概論」のファイナルが東京・新宿BLAZEで開催されます。

橘花 最初の頃は私だけファンが増えなくて悩んでいたんです。だけど最近は自分ががんばればがんばるほど結果が出てきて、「ちばなちゃんのパフォーマンスが好きだから観に来ました」「透色ドロップの噂を聞いてライブを観に来たら、ちばなちゃんがすごくかわいくて気になった」という声をいただけるようになって。デビューして約半年が経ちましたが、活動から今日までの日々ですごく手応えを感じるようになって、これからますます力を入れてやっていきたいと思っています。ファイナルではそんな私たちの集大成を見せたいです。

──精神面と技術面、どちらも成長しましたもんね。

見並 そうなんですよ。特に最初の頃は社会人からアイドルに転職したばかりで、今までとまったく違う世界に慣れようと必死でした。「私、どうしてこのグループにいるんだろう……?」と悩むことも多かったです。でも今は、グループのためになんでもやっていきたい。自分のためというより、グループに貢献できるようになりたいと思っています。

忽那 グループ活動って全員が同じ速度で成長するわけではないじゃないですか。だから停滞期というか、伸びしろが見えなくなって迷走する時期も来ると思うんですけど、そういうときもメンバー同士で支え合っていけるようなグループになっていきたいです。

ライブ情報

透色ドロップ 2nd Tour 透色学概論VII
  • 2020年12月19日(土)東京都 新宿BLAZE
左から見並里穂、忽那杏優、橘花みなみ。