SUGARLUNG「Desert or Ocean」インタビュー|苦難を乗り越えて再出発、ロックバンドの爆発力を信じて (2/2)

僕らの命には限りがあるから、生きている間に何ができるか

──では、ここからは2ndミニアルバム「Desert or Ocean」について聞かせてください。どんな作品にしたいと思いながら作っていきましたか?

エザキ テーマは“再出発”。僕たちが今まで歩んできた道のりや蓄えてきたものをこの7曲に凝縮できればと思いました。ロックサウンドの曲はもちろん、伴奏がピアノだけの曲もあって、いろいろなアプローチの曲が入っているんですが、僕たちとしては「この7曲を携えていろいろなところに行きますよ。よろしくお願いします!」という気持ちです。

エザキマサタカ(Vo, B)

エザキマサタカ(Vo, B)

──1曲目の「ENCORE」は爽快なアッパーチューンで、“再出発”というアルバムのテーマを象徴する曲ですね、

エザキ 「それぞれの旅路でまた会えたら」という歌詞もあるし、俺たちの再出発にふさわしい曲になりました。ライブでもすでにやっているんですが、歌っている自分も「明日もがんばろう」と思えるような曲です。制作期間中のある日、「なんかもう1曲作りたいな」と思いながらトイレに行ったときにサビのメロディをふと思いつきました。口ずさみながら「めっちゃいいやん!」と思ったので、そのままデスクに行って、バーッと続きを作って。ここまでストレートな曲は今までのSUGARLUNGにはなかったんですよ。というのも、うちのイシカワがひねりたがりで。

イシカワ (笑)。「ENCORE」は歌詞を付ける前の段階で、「シンプルだけど、とてもいい曲だな」と思ったんですよ。だから一旦素直な気持ちになろうと思いながら、誰からも愛される曲になってほしいという願いも込めて歌詞を書きました。

──「どうしても僕らは死んでしまうから」というフレーズが気になりました。ちょっと強い言葉ですよね。

イシカワ たぶん、コロナ禍で亡くなってしまった人のニュースを見る機会が多かったのが影響しているんですかね。「結局僕らの命には限りがあるから、生きている間に何ができるかだよな」みたいなことはその時期よく考えていたと思います。

傷は自分の人生を歩んできた証

──2曲目の「Answer」はどういうところからイメージを膨らませていった曲ですか?

エザキ 「ブリッジミュートで始まる曲が欲しいな」というところから制作がスタートしました。いつもライブでやっている「Stay What You Are」という曲があるんですけど、その曲に匹敵するような、次のライブ定番曲を作りたいなと思ったんですよ。最初のハイハット4カウントが鳴った瞬間にアガる!みたいな。

──確かに熱い気持ちにさせられる曲でした。特にイシカワさんのプレイが印象的です。

イシカワ アルカラのサポートでギターを弾いている竹内亮太郎さんにアレンジャーとして関わっていただきまして。竹内さんに相談しながら作っていく中で、今までにないアプローチにもたくさん挑戦しました。自分では思いつかないアイデアばかりだったので、すごく勉強になりましたね。

──歌詞では、「僕らしくあるため今 傷ついたままで今」というフレーズが気になりました。

イシカワ 僕のすごく好きなドラマのワンシーンから着想を得て書いた歌詞です。幼い息子が、お母さんの手が嫌いだって言うんですよ。いつも水仕事をしているから、あかぎれで傷だらけなのが嫌だって。そしたら、そのドラマの主人公はその子に対して「その傷は、お前を守るために苦労してできた傷なんだよ」と伝えるんです。僕はそのシーンが大好きなんですが、傷って、自分の人生を歩んできた証だと思うんですよ。そんなことをふと思い出しながら書いたフレーズです。全体を通して、自己肯定をしたいという気持ちで歌詞を書きました。

イシカワケンスケ(G, Cho)

イシカワケンスケ(G, Cho)

──確かに、自分自身や相手のことを肯定したいという気持ちは、「Answer」含めアルバム全体から伝わってきました。3曲目の「rain down, lay back」はどのように作っていきましたか?

イシカワ  僕が土台から作った曲です。「SUGARLUNGにこんな曲があったらいいのに」と思いながら、今までにない曲を持っていったら、採用されました。

──制作期間中は「今までやったことないことをやってみてもいいんじゃないか」というマインドがあったんでしょうか?

エザキ 今、チームのスタッフも含め、たくさんの人に支えられながら活動できている実感があるんですよ。だからこそ「せっかくだから新しいことに挑戦しよう」というマインドになれていて。自分たちにしかないものをどんどん表現したほうがお客さんも自分たちも楽しめそうだなと思っています。「rain down, lay back」は早くライブで披露したいですね。夏フェスでお客さんが飛び跳ねているイメージが浮かぶ楽曲なので。

イシカワ 今回のアルバムでは夏フェスなどでも映えるような、アッパーチューンを中心にセレクトしたんです。4曲目の「melody」もまさにフェスに合うだろうなと思いながら、作り溜めていたデモの中から自分が引っ張り出してきました。実は7年前に作った曲なんです。

──「ENCORE」や「Answer」のように「melody」もストレートに展開するかと思いきや、面白いところで転調していますよね。

エザキ たくさん遊ばせていただきました。僕ら転調はそんなにしないバンドなので、「ほうほう、これが転調なのか!」という感じで制作を進めていったんですけど、アレンジャーのハジメタルさんがきれいにまとめてくださって。アレンジャーさんとの制作は本当に勉強になりましたね。今後もいろいろな人と曲を作っていけたらと思いましたし、自分たちだけの制作でも生かせそうなことをたくさん吸収させてもらいました。

SUGARLUNGの曲はお客さんの存在があって初めて完成する

──疾走感あふれる「スターゲイザー」、ピアノバラード「アムネシア」は、歌詞もサウンドもひっくるめて、世界観がしっかり確立された曲だなと思いました。

イシカワ 「スターゲイザー」は歌詞がなかなか完成しなくて。

エザキ 歌詞ができたのがレコーディング当日だったので、ボーカル殺しだなと思いましたけど、まあこういうことは日常茶飯事なので(笑)。「スターゲイザー」の歌詞は僕も大好きですね。

イシカワ 「アムネシア」の歌詞に関しては「“失恋”“記憶喪失”をテーマに」というオーダーがエザキからあって。10代の頃の恋愛の記憶をたどることから始めましたが意外と悩まずに書けました。僕、歌詞は時間をかけて考えるタイプなんですよ。どんな言葉が一番いいかなって。だけどこの「アムネシア」に関しては「曲がこう言っているから、その通りに書けばいい」という感じで、かしこまらずに書けました。

SUGARLUNG

SUGARLUNG

──「アムネシア」は最初からピアノアレンジを予定していたんですか?

エザキ そうですね。アルバムの中で最後にできた曲なんですけど、ほか6曲のレコーディングが終わったときに「変化球が欲しいよね」という話になって。ちなみに、このピアノはイシカワが弾いています。ライブでどうするかは検討中ですが、僕はピアノの弾き語りも好きなので、この曲でトライしてみてもいいかもなと考えていて。練習がんばります!

──アルバムのラストを飾る「ショウメイ」に関してはいかがでしょう。

イシカワ 僕の中では「ENCORE」が陽だとしたら「ショウメイ」が陰で、対になっているようなイメージです。

エザキ 聴いてくれる人の目の前で歌っているような曲にしたくて、SUGARLUNGでは初めてコーラスを入れずに作った曲です。レコーディングでは声が裏返ってもかまわないという気持ちで歌ったので、生々しさや、あがいているような感じが出ているんじゃないかと思います。この曲は早くライブでやりたくて……というか、全曲ライブでやりたいですね! 僕たちの曲は、お客さんの存在があって初めて完成するものなので。お客さんの顔を見たり声を聞いたりしながら「ああ、作ってよかった!」と実感したいです。

──今後の展望についても教えてください。このバンドで実現させたい夢はありますか?

イシカワ 「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」含めロックフェスにはたくさん出たいですし、ゆくゆくは自分たちでロックフェスを主催したいです。

エザキ 僕たちはロックバンドなので、今の自分たちが鳴らすロックサウンドをより多くの人に届けたいです。だからツアーはたくさんやりたいし、日本武道館ワンマンも、アリーナツアーも達成したい。でも、続けることが一番の正義なのかな。自分たちが好きな音楽を続けることで、聴いてくれている人たちに向けて、続けることの大切さを伝えていきたいです。

SUGARLUNG

SUGARLUNG

ライブ情報

SUGARLUNG 2nd mini album "Desert or Ocean" release tour

  • 2023年6月15日(木)大阪府 梅田Zeela
    <出演者>
    SUGARLUNG / FIRE ARROW / ANYDOUBT / メルトタイマー / 江藤慧(yo|d|aca.) / [SHOP]origami
  • 2023年7月27日(木)大阪府 BananaHall
    <出演者>
    SUGARLUNG / VIVACE / ALL iN FAZE

プロフィール

SUGARLUNG(シュガーラング)

2017年7月に活動を開始した、エザキマサタカ(Vo, B)とイシカワケンスケ(G, Cho)からなるバンド。2018年には結成1年ながらロッキング・オンが主催するオーディション「RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL」で優勝し、大型音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演した。2020年には新型コロナウイルス感染拡大防止とライブハウス支援、アーティスト活動の継続を目的とした無観客配信イベント「twilight city」を2回実施。2022年5月、オーディション「ROAD TO JAPAN JAM」にてグランプリを獲得し、ロックフェス「JAPAN JAM」に出演を果たす。2023年5月、2ndミニアルバム「Desert or Ocean」をリリースした。