音楽ナタリー PowerPush - Suck a Stew Dry
モラトリアムズへ贈る「別れ」の4曲
Suck a Stew Dryが新作CD「モラトリアムスパイラル」を3月11日にリリースする。
「『さあ、未来へ』」という歌詞が印象的な表題曲をはじめ、「別れ」をテーマにした計4曲が収められた今作。出会いと別れの季節に合わせて作ったという4曲に彼らが込めた思いとは。CDと同時リリースされるライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」の見どころとあわせて、メンバー5人に話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / 上山陽介
“エゴサーチ”から生まれた曲
──今作は4曲とも共通して「別れ」を感じさせる楽曲ですね。コンセプトありきで作っていった1枚なんでしょうか?
シノヤマコウセイ(Vo, G) 最初はコンセプトはなかったんですけど、曲を作っていく途中で「別れ」をテーマにした曲が多いなって気付いて。ちょうどリリースの時期が3月に決まっていたので、じゃあ別れの曲でまとめようかなと。季節に合わせた作品を作ってみたいとは以前から思っていたので、今回挑戦してみました。
──1曲目「モラトリアムスパイラル」は今までの作品と比べて明るい印象を受けました。
シノヤマ 曲調は明るくなってると思います。ただ実は歌詞が暗いんですよね。ネタばらしになっちゃうんですけど、仕掛けとしては明るくも暗くも取れるようにしているんです。
──と言うと?
シノヤマ 「さあ、未来へ」という言葉って明るい印象がある言葉だと思うんですけど、この曲では明るい意味で使ってなくて。
──どういう意味で使っているんですか?
シノヤマ 卒業って勝手にやってくるものじゃないですか。卒業したくなくても、「さあ未来へどうぞ」って言われて、卒業させられていく。そういう他人から言われる「さあ、未来へ」を指していて、ネガティブな意味で使っています。
──だからカギカッコをつけているんですね。
シノヤマ そうです。
──なぜどちらにも取れるようにしたんでしょう?
シノヤマ 前作(「ジブンセンキ」)を出したときに、自分がネガティブな意味で書いた歌詞を、前向きな意味で受け取ってくれる人たちがいたんです。それは「僕が目指すべき道は誰かが作った通り道 僕が立ち向かう壁も誰かが先に超えた壁」(「僕らの自分戦争」)っていう歌詞で。僕は“僕ががんばって越えた壁も、もう誰かがとっくに越えてる”っていうマイナスな意味で書いたんですけど、Twitterとか見てたら「誰かが越えた壁ってことは僕にも越えられるはずだよね!」みたいなことを書いてる人がいて。びっくりしたんですけど、面白いなと思ったんです。
──シノヤマさんの名前で検索したら「エゴサーチ力がすごい」というまとめが見つかりまして(参照:Suck a Stew Dryボーカル『篠山コウセイ』のエゴサーチ力が凄い! - NAVER まとめ)。まさにそのエゴサーチが生きた結果ですね。
シノヤマ そうですね。自分の曲はどう取られても構わないんですけど、どう取られたかは気になるんですよね。
──検索してどうするんですか?
シノヤマ 僕の中にデータとして蓄積していきます。
──ちなみにほかのメンバーの皆さんはエゴサーチしますか?
フセタツアキ(G, Cho) するする。
ハジオキクチ(G, Cho) 僕はデータベースに蓄積はしないけど、エゴサ自体はする。しないバンドマンっていないんじゃない?
イタバシヒロチカ(Dr) 俺してないよ(笑)。エゴサーチするとすぐ調子に乗ったりヘコんだりするんで。
明るい曲か暗い曲か
──2曲目「絶望と希望のシーソーゲーム」の「未来に光はない でも期待をしてしまう」という歌詞も、ポジティブにもネガティブにも受け取れますね。
シノヤマ そうですね。基本的に僕は前向きなつもりでは書いてないですけど。
スダユウキ(B) 俺はわりと前向きに取っちゃった。
──メンバー間でもポジティブな曲かネガティブな曲かという捉え方はそれぞれ違うんですね。
フセ そうですね。僕は全部暗い曲だと思ってますけど。さっきのところだったら「未来に光はない」って先に言っちゃってるし……って思う。
──シノヤマさんから曲に込めた思いを説明されたりはしないんですか?
フセ されないですね。あんまり詳しく聞くと「恥ずかしい」とか言うんですよ。
シノヤマ ははは(笑)。
フセ 「これはどういうニュアンスなの?」「あー、ちょっと恥ずかしいっすね」って(笑)。
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- ニューシングル「モラトリアムスパイラル」 / 2015年3月11日発売 / ラストラム・ミュージックエンタテインメント
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 1650円 / LASCD-0059
- 通常盤 [CD] / 1080円 / LASCD-0060
CD収録曲(共通仕様)
- モラトリアムスパイラル
- 絶望と希望のシーソーゲーム
- こころは愛を探している
- さらば素晴らしき日々よ
初回限定盤DISC 2収録曲
- 世界に一人ぼっち
- 空想少女リリー
- カタカナトーク
- アイドントラブユー
- 八月のサリー
- 七階
- 二時二分
- ヒーロー
- 僕らの自分戦争
- リトルラブソング
- 遺失物取扱所
- ライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」 / 2015年3月11日発売 / 2400円 / ラストラム・ミュージックエンタテインメント / LADV-0007
- ライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」
収録曲
- 世界に一人ぼっち
- ユーズドクロージング
- アイドントラブユー
- 八月のサリー
- 空想少女リリー
- Normalism
- 二時二分
- 七階
- カタカナトーク
- Payment
- 絶望と希望のシーソーゲーム
- もうひとつの終わり
- リトルラブソング
- 僕らの自分戦争
- ヒーロー
- モラトリアムスパイラル[ver.0.00]
- 遺失物取扱所
Suck a Stew Dry「春のモラトリアムまつり」
Suck a Stew Dry(サックアステュードライ)
ハジオキクチ(G, Cho)がシノヤマコウセイ(Vo, G)を誘い、2010年に結成したロックバンド。2013年にスダユウキ(B)が加入し、現在はキクチ、シノヤマ、スダ、フセタツアキ(G, Cho)、イタバシヒロチカ(Dr)の5人で活動している。2011年11月にデビューミニアルバム「人間遊び」を発表して以降、ミニアルバム「ラブレスレター」、6曲入りCD「世界に一人ぼっち」、枚数限定CD「アイドントラブユー」とリリースを重ね、10代20代を中心にファンを増やしていく。1stフルアルバム「ジブンセンキ」の発売を経て、2015年3月に4曲入りCD「モラトリアムスパイラル」と初のライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」をリリース。発売後にはワンマンツアー「春のモラトリアムまつり」を開催する。