音楽ナタリー PowerPush - Suck a Stew Dry
モラトリアムズへ贈る「別れ」の4曲
パーソナルな歌詞を壮大なサウンドに乗せる
──ということは「こういう意味の歌詞だからこういうサウンドにしよう」と考えているわけでもなく?
シノヤマ そうですね。あまり関係ないかな。3曲目の「こころは愛を探している」なんかアレンジは壮大ですけど、歌詞ではめっちゃパーソナルなことを歌ってて。
キクチ そういう構造だから、逆にパーソナルな部分が際立つのかなっていう気もしますけどね。
──この曲は、ライブでは以前から披露していたんですよね?
シノヤマ はい。バンドではやってなかったんですけど、僕が1人で弾き語りでやってました。
──いつ頃からあった曲なんですか?
シノヤマ 2013年の夏くらいですかね。できたときからバンドでレコーディングしたかったんですけど、アレンジがまとまらなかったんで1回投げ出して。「もう1回やるか」とトライしたのが今回のタイミングだったんです。この曲も別れを歌っているので今作にちょうどいいかなというのもあって。
──確かに今作のために作られたようにしっくりきていますね。最後の「さらば素晴らしき日々よ」は歌詞はネガティブですが、疾走感があって明るい曲調です。
シノヤマ これは最後にできた曲で。この曲は本当にリリースしていいのかなっていう戸惑いが一瞬あったんですけど……。でも進めちゃえみたいな、開き直りがサウンドにも表れてると思います。
──何に戸惑ったんですか?
シノヤマ なんか恥ずかしくて(笑)。
キクチ 青春っぽいもんね。
シノヤマ うん。一瞬そう思ったけど、そんなこと考える必要ねえだろって。作ってみたら面白かったんでいいかなと。
キクチ 確かに最初は「とりあえず作ってみるか」っていう感じだったよね。「俺らのカラーに合わないかな」とも思ったけど、そんなこと考えてもしょうがないし……と思って制作に取り掛かって。
フセ でもできあがったらそんなに気にならないし、むしろCDの最後を飾る曲としていい感じになってるんじゃないかな。
サウンドが明るかったので歌詞はダメな感じに
シノヤマ 「さらば素晴らしき日々よ」の歌詞は、明るいサウンドに逆行してどんどん……。
フセ やばいよね。最初から全部よくないことだもんね。
シノヤマ この曲はメロディが先にできて。サウンドがめっちゃ明るかったのでじゃあ歌詞はダメな感じにしようと。僕、そういう思考回路になっちゃうんですよね。
──その思考回路が“シノヤマイズム”ですよね。
スダ シノヤマさんって、話すと明るい印象なんですけど考えてることは暗いんですよね。サウンドは明るいのに、歌詞は暗いっていうサック(Suck a Stew Dry)の曲と同じですね。
シノヤマ なんか逆行していっちゃうんです。
──じゃあ暗いことを歌おうって思って作ってるわけじゃないんですか?
シノヤマ 「さらば素晴らしき日々よ」は意図的ですけど、基本的には「暗いことを歌おう」とか「明るいことを歌おう」って思ってるわけではないですね。
──音楽で人を励ましたいとかそういうことではない?
シノヤマ はい。励ましたくはないですね。個人的な欲で言えば、ヘコんでもらったほうがいいです(笑)。
フセ 結局受け取る側次第ですからね。受け取る側が励まされたと思うのであればそれでもいいし、どん底に突き落とされたなって思うならそれはシノヤマくんの思うツボだし。
キクチ でも本当にどっちもあるよね。「バカ野郎!」って言ったらがんばる人もいれば、ヘコむ人もいるもんね。
打ち込みを取り入れた表題曲
──サウンド面では「モラトリアムスパイラル」に打ち込みが取り入れられていて驚きました。
シノヤマ この曲はプロデューサーさんについてもらったんです。
キクチ バンドで作ったものにアレンジを加えてもらって。
スダ 新鮮でしたね。
フセ 僕らだけではできないことをやっていただいた感じです。打ち込みとか僕らは全然わからないんですけど、今回のプロデューサーさんにはEDMの知識とかもあって。
──できあがった曲を聴いたときはどう思いました?
シノヤマ 「おお!」って。
スダ 最初は自分たちに合うのかなって思ったりもしてたけど、できた曲を聴いて「あれ、いいんじゃね?」って思いましたね。
キクチ 最初はプロデューサーさんとやるのどうかなって思ってたんですよ。長くはないけど自分たちだけでそれなりにやってきて、自分たちなりのやり方とかもあったし、「モラトリアムスパイラル」はすでにバンドでアレンジもできてたし。だから「変になったら嫌だな」とか思ってたんですけど、いいものができてよかったです。
聴いた人が昔を思い出してくれたら
──今作「モラトリアムスパイラル」が完成してみてどうですか?
シノヤマ 時期に合わせたものが出せるっていうのがうれしいです。
フセ 前回のアルバムでやりつくした感じがあったんですよ。だから次は何をどういうふうに出すかっていうのが悩ましくて。でも打ち込みを取り入れたり、「別れ」というコンセプトを付けたり、新しい要素を入れていくことでいいものができたと思います。めっちゃ売れたらいいなって思ってます(笑)。
イタバシ 僕は聴いた人の反応が楽しみです。まあエゴサーチはしないですけど(笑)。
スダ 「別れ」がテーマなので、聴いた人が昔を思い出してくれたらいいな。
シノヤマ さまざまなことを感じていただいて、その反応をTwitterでつぶやいていただければ(笑)。僕のデータとして蓄積していきますので、よろしくお願いいたします。
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- ニューシングル「モラトリアムスパイラル」 / 2015年3月11日発売 / ラストラム・ミュージックエンタテインメント
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 1650円 / LASCD-0059
- 通常盤 [CD] / 1080円 / LASCD-0060
CD収録曲(共通仕様)
- モラトリアムスパイラル
- 絶望と希望のシーソーゲーム
- こころは愛を探している
- さらば素晴らしき日々よ
初回限定盤DISC 2収録曲
- 世界に一人ぼっち
- 空想少女リリー
- カタカナトーク
- アイドントラブユー
- 八月のサリー
- 七階
- 二時二分
- ヒーロー
- 僕らの自分戦争
- リトルラブソング
- 遺失物取扱所
- ライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」 / 2015年3月11日発売 / 2400円 / ラストラム・ミュージックエンタテインメント / LADV-0007
- ライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」
収録曲
- 世界に一人ぼっち
- ユーズドクロージング
- アイドントラブユー
- 八月のサリー
- 空想少女リリー
- Normalism
- 二時二分
- 七階
- カタカナトーク
- Payment
- 絶望と希望のシーソーゲーム
- もうひとつの終わり
- リトルラブソング
- 僕らの自分戦争
- ヒーロー
- モラトリアムスパイラル[ver.0.00]
- 遺失物取扱所
Suck a Stew Dry「春のモラトリアムまつり」
Suck a Stew Dry(サックアステュードライ)
ハジオキクチ(G, Cho)がシノヤマコウセイ(Vo, G)を誘い、2010年に結成したロックバンド。2013年にスダユウキ(B)が加入し、現在はキクチ、シノヤマ、スダ、フセタツアキ(G, Cho)、イタバシヒロチカ(Dr)の5人で活動している。2011年11月にデビューミニアルバム「人間遊び」を発表して以降、ミニアルバム「ラブレスレター」、6曲入りCD「世界に一人ぼっち」、枚数限定CD「アイドントラブユー」とリリースを重ね、10代20代を中心にファンを増やしていく。1stフルアルバム「ジブンセンキ」の発売を経て、2015年3月に4曲入りCD「モラトリアムスパイラル」と初のライブDVD「僕らのジブンセンキ ワンマンツアー2014 Final」をリリース。発売後にはワンマンツアー「春のモラトリアムまつり」を開催する。