Survive Said The Prophet|サバプロの10年と向き合い “再定義”の先に見えた未来

裏方の人たちにも個性があるんだよということが、
聴いてる人にちゃんと伝われば

──ここからはDISC 2の「To Be Defined」について聞かせてください。こちらにはファンがセレクトした曲に加えて、マネジメント、レコード会社、ライブ制作などに関わるサバプロのクルーがセレクトした5曲も入っています。“クルーセレクト”という発想は珍しいと思うのですが、これにはどのような思いが込められているんですか?

Yosh ツアーを回っているときは、クルーに「どう思う?」とか「どうだった?」と聞いたりもするし、彼らに頼ることは多いんです。そうやって一緒にやっていくうちに、彼らもアーティストなんだということに気付いて。だから彼らへのリスペクトも込めてセレクトをお願いしました。

Show(Dr)

Show 楽器のパートと一緒で、「音響」「照明」「マネジメント」っていうパートなのかなという感覚です。うちの場合は常に同じメンツでやらせてもらってるし、そういう人たちが選曲に参加してないのは逆におかしいでしょと。

──47都道府県ツアーも、クルーと意識の違いを埋めるためというのが開催理由の1つだったとおっしゃっていましたもんね(参照:Survive Said The Prophet「Inside Your Head」インタビュー)。

Yosh はい。そのツアーを経て“正式メンバー”になったので、今作でお披露目するみたいな感覚ですかね。すでにメンバーでしたけど、発表する覚悟が付いたというか。僕たちにはこのチーム感、ファミリー感が必要なんですよ。それを改めて彼らに再認識してもらって、僕らも再認識して。

──実際にセレクトされたのも、隠れた名曲と言えるような5曲ですね。

Yosh うれしいですよね。ここまでマニアックな選曲だと、もはや仕事として僕らと関わってるわけじゃないんだなと思えて。

Show 仕事ってどうしても無機質になりがちじゃないですか。それが悪いとは言わないけど、人と人で仕事をしてる以上、裏方の人たちにも個性があるんだよということが、聴いてる人にちゃんと伝わるといいなと思いますね。

10年間の成長を確認するのに、これ以上リアルなやり方はない

──今作はもう1つ、レコーディングがすべて一発録りであることも特筆すべきところかと思います。音源を聴いてもまさか一発録りだと思わなかったので驚きました。

Yosh ほかのバンドマンに一発録りと言うと驚かれます。でも僕らにとってこれが正しいレコーディングの仕方だったんですよね。これが僕らの10年間というか。10年間の成長を確認するのに、これ以上リアルなやり方はないと思います。

──それは10年間ちゃんとライブを重ねてきてるからですよね。ちょっとした失敗とか、思った通りじゃないことが起こったとしてもそれをよしと思える、それを愛せるのはライブバンドならではだなと。

Yosh 間違いないです。ライブを積み重ねてこなかったらこういった方法は取れなかったと思いますし、そういったものを求めてくれる人に向けての作品でもあるので。昔の音源から演奏がどうアップデートされているかも含めて味わってもらいたいです。

Ivan(G)

──初回限定盤付属のDVDに収録されているドキュメンタリーでは、5人で向かい合って演奏する姿が収められていました。向かい合う形でのレコーディングはいかがでしたか?

Ivan コロナでの自粛期間を経てひさしぶりの再会がこのレコーディングだったので、本当にみんなの笑顔が素晴らしかったですね。

Yosh ずっとドカンと音楽をやれてなかったから。

Ivan そうそう。「こうやってみんなと音楽ができるこの場所、いいなあ」と改めて思いましたね。

アベンジャーズに変わる瞬間が今

──バンドの10年を振り返ったベストアルバムを経て、次の10年はどんな10年になりそうですか?

Show この10年は自分の存在意義、なんで生きてるのかということを考えていて。そんなことは考えなくても生きていけるけど、あえて考えることによってすごく成長できたなと思うんです。だからこれから先はそういった考えをより熟成させていけたらと思っています。個人としてもバンドとしても。

Ivan 僕は誰かのインスピレーションの素になれたらいいなと思います。例えば誰かが僕らを見て、楽器を始めたり作曲を始めたり、そういうキッカケになれたらいいなと。

Yosh 僕らは次の10年で、バンドという概念を覆せるくらいのグループになると思います。幸いなことに、今日この瞬間にたどり着くまでに、僕らの前にはいろんな壁が立ちはだかって、それを乗り越えてきた。この10年での1人ひとりの成長や評価が、これからの10年ではっきりと見えるようになるだろうし、とにかく期待だけしていてほしいです。アベンジャーズに変わる瞬間が今なんです。もうレボリューションは始まっています!

──前作のインタビューの際、今後の目標を聞いたら「プライベートの時間も大切にしたい。休みたい」とおっしゃっていたので少し心配だったのですが、頼もしい言葉が聞けて安心しました。

Yosh 言ってましたね。もう十分休ませていただきました(笑)。

──図らずも自粛期間に休みが取れたと。

Yosh はい。本当に休みが欲しかったんです(笑)。でも休んだら、ちゃんとまたバンドをやる道に戻ってくることができて、安心しました。

Ivan それにしても「休みたい」と言えることも含めて、正直でいさせてもらってありがたいよね。

Yosh そうだね。

──皆さんが結果的に続けるという選択肢を選ぶことになってよかったです。

Ivan でもこの先も、バラしたり休んだりする選択肢は常にありますよ。

Yosh そうそう。ただ、覚悟を決めて俺らが選んだのはバンドの道なので、コロナで崩壊するほど弱いバンドじゃないってことだけは確か。海外の人も聴いてくれているので、日本のカルチャーを通して、世界に俺らの音楽を発信、共有していけたらと思います。

左からIvan(G)、Yosh(Vo)、Show(Dr)。