ジャンルより世代感やバイブス
──バンドのスタイル的に、2組とも結成当初は対バン相手を見つけるのが難しかったのでは?
タクマ めちゃくちゃ難しかったですよ。ヤバかったよね?
ユーキ 俺らは16年前に大阪で結成したんですけど、その当時の大阪のライブハウスシーンはメロコア系のバンドばかりで、そういう人らと当てられることが多かったです。それからTHE NINTH APOLLOの社長が気に入ってくれて、そのレーベル所属のバンドのツアーに呼んでもらうようになって友達は増えたけど、ヒップホップの話をできる人はいなかった。それから上京するとなったときにATFIELDが手伝ってくれるようになって、「BAYCAMP」にも出るようになったんです。その頃に同世代のドミコやDENIMSにも出会いました。一方で、タクマは新宿MARZに出るようなバンドとか、AAAMYYYのサポートもやってたから、そっちの友達も多くて。タクマは昔、スクリーモ前後のラウドロックみたいなバンドもやってたから、今、交流のあるバンドはそこが混ざってる感じ。
──ドミコやDENIMSには、音を超えたマインドでシンパシーを覚えた?
タクマ そうですね。たぶんジャンルより世代感やバイブスで仲よくなってる人らが多いんですよ。ジャンルがドンピシャに合うバンドはマジでいないんで。
──オドフットも最初は対バン相手を見つけるのに苦労したと思います。
Pecori 悩マーシーでしたね。ただ、俺らには下北沢GARAGEというホームグラウンドがあって、そこはジャンルのボーダーがない感じのライブハウスだったので、界隈みたいなことはあまり意識してなかったです。でも、GARAGEが閉店して自分たちの畑を作るみたいなことを考え出してから、「俺らの位置付けどうする?」という危機感はあったかも。
有元 むずかったよね。楽屋に挨拶に行くのとかも緊張しちゃうし。人見知りっていうのもあるけど(笑)。
──でも、キイチくんは対バン相手とその後に仕事をする機会も多いですよね?
榎元 確かにキイチはそれがめっちゃ多い。
有元 ご縁ですよね。そうなるってことは会うべき人だったのかなと思います。俺は今、ギターでAAAMYYYのサポートしてるんですけど、彼女がいろんな人に出会わせてくれたんですよ。BREIMENの高木祥太もそうですね。その縁でBREIMENの曲にPecoriが参加したりしましたから。
2026年のSPARK!!SOUND!!SHOW!!は面白い
──それぞれの最近のモードについてもお聞きしたいんですけど、スサシはいかがですか?
タクマ それこそ対バン相手を探すのが難しかったり、自分たちで楽曲に関する資料を作らなきゃいけなくなったときに「俺らのジャンルってなんだ?」みたいな経験をしつつ、1年前ぐらいから「もう、スサシというジャンル作っちゃおう!」というモードになっていて。サウンドを含め「これがスサシだよね!」と思ってもらえるような音源作りを意識していました。ただ、自分ではそう思ってなかったけど、スサシはミクスチャーバンドだと言われることが多いから、RIZEやDragon Ash、THE MAD CAPSULE MARKETSを意識した曲を作っても面白いんじゃないかと最近は考えています。今はそこにトライしてる感じですね。
ユーキ あとはこれまでと変わらず、自分たちが好きだと思う要素を曲に入れることですかね。自分が好きな音が鳴っていれば、ライブで客が0人でも楽しめるので。そう考えると、自分は結局ベースミュージックが好きなんやと思うんですよ。
──今日は「CHICAGO JUKE」と書かれたTシャツを着てますけど。
ユーキ そう、オドフットと会うのが決まってたんで(笑)。ジューク、フットワークみたいなベースミュージックを感じられるTシャツがいいかなと思って着てきました。
榎元 ありがとうございます(笑)。
ユーキ 俺はフットワークも好きやし、ここ数年はジャージークラブが流行ってきたり、ジャングル、ドラムンベースのリバイバルとかも起きてるじゃないですか。フレッド・アゲインが今年のフジロックでそれを感じさせるサウンドを鳴らしてたりとか、いよいよメインストリームにも自分が好きなベースミュージックが浸透しつつある。ベースミュージックとひと言で言ってもいろいろあるけど、そのどれも楽しめるし、俺らは常にヤバいビートを探求してるんで。それとタクマが言う90年代から00年代の初期ミクスチャーっぽいサウンドが合わさったら、よりスサシらしい曲ができると思うんですよ。タクマが見せたい側面と俺が楽しみたい下地が共存しているようなものが、2026年以降のうちらのアウトプットの中に入り込んでくるのかな。それは絶対に面白い音源になるやろなって感じてます。
ODD Foot Worksという共通項でまとまったアルバム
──オドフットはニューアルバム「ODD FOOT WORKS 2」が完成したばかりですが、現時点での感触はいかがですか?
榎元 どんなアルバムなのか、自分たちでもまだよくわかってないんですよ。メンバーがバラバラに好きなものが共通項を持って、たまたまアルバムという形になっちゃった、としか言いようがない(笑)。時代感やジャンルもバラバラなんだけど、ODD Foot Worksという共通項でまとまっている感じですね。ただ、素直にやろうと思ったものを形にできた手応えはあります。
──キイチくんはどうですか?
有元 榎の言う通り、性格がバラバラな曲ばかりですね。昨日、MVのテスト撮影で公園に行ったんですよ。俺は朝の9時半に現場に着いたんですけど、そこから14時までずっとブランコを漕いでる女の子がいたんです。
ユーキ それ幽霊でしょ(笑)。
有元 ずっとヘッドフォンを着けてブランコに乗りながら音楽を聴いてるんですよ。で、その様子を見てたら「こういう子が聴くアルバムになったらいいな」と思って(笑)。
Pecori 俺もそう思う。「ODD FOOT WORKS 2」はブランコアルバムです(笑)。
──Pecoriくんは今の日本のラップシーンとご自身の在り方についてどう考えてます?
Pecori 無理して今のラップシーンに飛び込む必要はないと思っていて。俺もキイチと考えが一緒で、出会うべき人にはいつか出会うし、それが結果的に一番フラットにいい曲を作れるし、自分もいいラップできそう。けど、多少はシーンの相関図とか今の時代の情勢やトレンドを把握していたいし、それを怠るのは違うなと思っていて。そこを意識することは忘れたくないですね。
──それはビートのトレンドなども含めて?
Pecori そうですね。「シーンなんてどうでもいい」「俺は俺だからなんでもいい」みたいな考え方は、自分を盲信してるだけなので。
「SSR」で楽しみにしていること
──最後に「SSR」で楽しみにしていることがあれば教えてください。
ユーキ 俺らは「SSR」に出るの初めてなんですけど、知らないバンドが多いからそれが楽しみですね。
タクマ 最近Tyrkouazという双子のユニットが気になっていて、今まで2回ライブを観てるんですけど、どっちもすごいよかったんですよ。音がめっちゃドラムンベースで、すげえカッコいいので「SSR」でのステージも楽しみにしてます。
榎元 Tyrkouazは個人的にめっちゃ推してます。それこそ、俺がもう1つやってるインストバンドの1inamillionで対バンしたこともあって。トラックの音もよくて、めちゃくちゃカッコいいので注目です。
Pecori オドフットはこういうイベントに出るのひさしぶりなんですよ。サーキットはお祭りみたいなものだし、今回は会場がLIQUIDROOMなのでいろんなところで音が鳴ってるだろうから楽しそう。いろんなライブをぶらぶらしながら観たいっすね。
有元 俺は音楽って気の交換だと思っていて。「SSR」はアーティストもお客さんもいろんな人が集まるわけじゃないですか。いろんな気が循環する空間になるだろうから、それがすごく楽しみですね。で、今日はスサシとたくさん話せたので、「SSR」でどんなライブをやるのかも楽しみにしてます。
榎元 Gateballersは競演したことないのでライブが気になりますね。あとYAJICO GIRLは、最近ボーカルが活動休止していて。残りのメンバーがYJC LAB.という名義でクラブセットみたいなライブをやってるんですよ。彼らがめっちゃがんばってるのを知っているので、遊びに来る人にはぜひ観てもらいたいです。俺は規模の大きいサーキットだとほかの人のライブを見る気がしないんですけど、「SSR」はちょうどいい規模感なのでいろんなライブを観て回って楽しみたいと思います。