ナタリー PowerPush - S.R.S
若さとピュアネスを詰め込んだ1stアルバム「ACROSS THE MINDSET」
全員が平成生まれの新世代ロックバンド、S.R.S。その若くみずみずしい感性で、シングル「Sometimes」「ワンダーソング」と独特の心象風景を描いてきた彼らが、ついに1stアルバム「ACROSS THE MINDSET」を完成させた。
今回ナタリーでは、アルバム制作の軸となった同名タイトル曲を中心に、バラエティ豊かな今作についてインタビュー。今春には高等専門学校を卒業し、アーティスト活動に全力投球する彼らの未来は、今、まぶしいまでに輝いている。
取材・文/川倉由起子
1stアルバムは先入観を持たずに、まっさらな気持ちで聴いてほしい
──前回のインタビューでは昨年夏に山中湖で合宿をされたという話を伺いましたが、1stアルバムにはまさにその時できた楽曲たちが収められているんですか?
山口卓也(Vo, G) はい、シングル以外はほぼそうですね。聴き返すと合宿中の思い出がすごいよみがえってきます。
──完成してみての率直な気持ちは?
山口 それはもう、「何度聴いても本当にカッコいいアルバムができた!」と。
──お、かなり頼もしい言葉が出ましたね。ちなみに、アルバムタイトルの「ACROSS THE MINDSET」は、S.R.S的に訳すとどんな意味になるんでしょうか?
山口 そもそもの熟語の意味は、“固定概念を超えていこう”的なニュアンスなんですが、それって僕らの今の心境を表してるんじゃないかと思って。言葉の持つチカラも強いと感じたので、自然とこのフレーズがタイトルの最有力候補になっていきました。
──1曲目には同名の曲もありますが、声に出してみてもすごくカッコいい言葉だと思いました。
山口 そうですよね?(笑) 後はリスナーに向けての想いも実は込められていて、一回シングルで持ったイメージをよけて、まっさらな気持ちで聴いてほしいなって。今までのシングル2枚で僕らを知って、じゃあアルバムも……って手に取ってくれる方が多いと思うんですけど。
──確かにシングル2枚を聴いてアルバムを聴くと、結構ビックリすることが多くて。本当にバラエティ豊かなナンバーが揃ってるし、シングルもまた違った聴こえ方がしますよね。
山口 はい、ホントそうなんです。だからアルバムは何も先入観を持たずに聴いてもらえたらうれしいなと思ってるんです。
大人と子供の狭間だからこそ書けた
──では収録曲についても聞かせてください。まずは1曲目、タイトル曲「Across The Mindset」はどういう気持ちで制作されたんですか?
山口 この曲は、子供の頃に感じていたこととか、何気なくしていた変な想像とか、そういうものがだんだん歳をとるにつれて少なくなってきたなっていう思いから生まれました。昔ならこうやって手を広げたら空を飛べるんじゃないか……とか、今じゃ絶対考えないような妄想をみんなしてたと思うんですよ。
──えぇ。思い出すと笑っちゃうような空想とかしてましたね。
山口 でしょ? でもそういうの最近しなくなったなーって気付いて、僕はそれがちょっと嫌だなって思ったんです。だから大人になったとしても、いつまでも当時のようなピュアな心を忘れずにいたいって気持ちがこの曲を書く原点になっていて。アルバムタイトルにしたのも、やっぱりそこを大事にしたいという想いが強かったからなんです。
──でもそういう気持ちを持ったとしても、普通は何もせずに過ぎていって、気付いたら忘れてる人が多いと思うんです。きっと、現在20歳のちょうど大人と子供の狭間の皆さんだから書けた世界なのかな、と。
山口 あぁ、確かにそうかもしれないですね。でも僕は想像したりするのは嫌いじゃないんで、これからも続けていこうと思ってますけど(笑)。イメージすることはやめないぞ! っていう意味も歌詞にはちゃんと込めてますから。
──楽器隊の皆さんはいかがですか?
向尾荒野(G) 僕自身も山口のピュアな気持ちを忘れたくないっていう想いに共感していたので、完成してみて今の僕ららしい等身大の曲になったと思いました。
上松幸平(B) 歌詞を読んでも納得する部分や共感するフレーズがたくさんあったんですよね。
畑中拓也(Dr) 大人になるにつれて、自由に何かを想像することって少なくなっていくと思うんです。でもやっぱり……そういう気持ちは忘れたくないなって改めて思いましたね。
山口 完璧な大人でもないし、かと言って子供でもない今の僕たちだからこそできた曲であり、アルバムだと思うんです。
日本語詞で新たに生まれ変わったライブ定番曲
──カントリー風の爽快なナンバー「ジョーイ」については向尾さんが作詞をされてますが、どういう経緯だったんですか?
向尾 これは元々の作詞作曲は山口で、最初は英語詞だったんですよ。ライブでも毎回欠かさない曲として歌ってきてたんですが、今回アルバムに収めるタイミングで日本語詞にしようということになり。
山口 せっかくアルバムに入れるなら、他の曲と同じように日本語で統一したいと思ったんです。でも僕はすでに英語詞を書いた時点で出し切った感があったので、荒野にお願いすることになったんです。
向尾 僕はS.R.Sでは初の作詞になるんですが、もともと本を読んだり文章を書いたりするのは好きだったので、作業はすごく楽しかったですね。英語のアクセントが強い部分は日本語をはめていくのに苦労しましたが、プロデューサーのいしわたり(淳治)さんにも「これは荒野にしか書けない詞だよ」って言ってもらえて。すごくうれしかったです。
──サウンドにすごくマッチした風景描写が印象的でした。
向尾 歌詞のイメージを膨らませると、まずはフランスのド田舎みたいな草原を列車が走っている風景を思い浮かべて。メロディも本当に良かったので、それを引き立たせる歌詞にしたいなとは思ってましたね。
──ちなみに「ジョーイ」って人の名前ですか?
向尾 そうですね。これは英語詞のときから変えてないんですが……。
山口 ハイ、僕の考えた架空の人物です(笑)。
CD収録曲
- Across The Mindset
- ワンダーソング
- I'm waiting for you
- 風向き
- ジョーイ
- SUNSHINE
- クレイジーガール
- さよならボクサー
- 大切だから捨てましょう
- 鬼さんこちら
- You're My Rock'n Roll Girl
- She is coming home
- Sometiems -B.C.-
S.R.S(えすあーるえす)
山口卓也(Vo, G)、向尾荒野(G)、上松幸平(B)、畑中拓也(Dr)の4人により2005年に結成されたギターロックバンド。ソングライティングを担当している山口のルーツである、UKロックのテイストを感じさせる温かみのあるサウンドと美しいメロディを特徴とする。2009年5月にリリースしたメジャーデビューシングル「Sometimes」が同月全国公開の映画「重力ピエロ」の主題歌に抜擢され、注目を集める。また2009年8月にはスペースシャワーTV主催のフェスティバル「SWEET LOVE SHOWER 2009」にオープニングアクトとして出演。着実にステップアップを続けている。