Sweet Robots Against The Machine|TOWA TEI×バカリズム 16年ぶりのSRATMに共通しているのは“裏方気質”だった

新ジャンル“スポークン・テクノ”を提唱

──「3」ではスポークンワードとテクノを合体させた“スポークン・テクノ”という新たなジャンルを提唱されていますが、それはバカリズムさんありきの発想だったんですか?

テイ いや、実は最初はトークやナレーション部分はすべて女優さんにお任せするつもりだったんです。去年、吉岡里帆さんの朗読に曲を付ける企画があって。スポークンワードにテクノのトラックを付けるのは新しいなと思って、バカリズムさんに相談したんです。歌い上げるんじゃなく、言葉が乗っかっていく感じのアルバムを作りませんかって。

バカリズム 女優さんのセリフを僕が考えて。

テイ 僕の中では「Sweet Robots 女優編」と呼んでいたんです。まず僕が音を作って、そこに脚本を書いていただいて。とりあえず男性の声はバカリさんにやってもらってもいいですか?って。

バカリズム 最初にテイさんから音をいただいたとき、誰か男性の声が入ってましたよね。「おはよう」「こんばんは」みたいな。

テイ 参考用に外国人が日本語を勉強するためのレコードの音を仮で入れておいたんです。それでやりとりをしているうちに、別に女優さんじゃなくてもバカリさんは俳優業もやってるし、ポエトリーリーディングには変わりないからこのままバカリさんの声でいけるなと思って。どうせなら4、5曲のミニアルバムより、がんばって10トラックあったほうが末永く聴けるものになる。全曲僕がやるとソロと一緒になるから、まりんに2曲頼んで(「非常識クイズ」「捨てられない街角」)。3作目だし、3人組というのもちょうどいいし。僕としては新しいラウンジミュージックとして聴いてほしい。さっき水原希子ちゃんの妹、水原佑果ちゃんから「いま『3』を聴いてますけど、超気持ちいいです!」ってLINEが来ましたよ。

バカリズム

バカリズム へーっ!

テイ うれしいですね。かわいい二十代前半の女の子が「気持ちいい」と言ってくれて。作ってよかったなと思います。

──バカリズムさんの脚本がまずあって、そこにテイさん、まりんさんが音を付けていくという作り方ではなかったんですね。

テイ それだと劇伴になっちゃうので。映画「大日本人」(2007年公開)の音楽をやったとき、自分に劇伴は向かないなと思ったんです。最初に一番重要だと思ったシーンに合わせてテーマ曲を作ったら、すごくスタッフの反応がよかったんですけど、そのあとがけっこう地獄で「よくわからんけど、なんか地味やな」みたいな(笑)。泣きたかったですね、作業が全部終わってから、教授(坂本龍一)と食事したときに「映画音楽のコツとかあるんですか」って聞いたら、教授は通して観て、ここは弱いなと思ったシーンから付けていくって。

バカリズム 真逆だったんですね。

テイ 先に教えてほしかったなと思いましたけど(笑)。ちなみにバカリさんは自分で脚本を書いた作品の場合、キャスティングを決めることもあるんですか?

バカリズム 作品によりますね。話し合って決めるときもあれば、ある程度決まっているものもあって。キャスティング会議が一番楽しいです、夢があって(笑)。これは無理だろうなって名前をホワイトボードに書いたり、プロフィール写真を並べて、どれぐらいまで実現するかなみたいな。

テイ 僕もオケを作っているときは仕上げのことは全然考えてなくて、単純に音で遊んでる感じで。そこからインストでこのまま行くか、誰かに歌ってもらうか、キャスティングを考えるんです。女性がいいか、男性がいいか。若い声か、老けた声か。歌のうまい人はいるから、ここに個性的な声があるといいなとか。

バカリズム そうやってバランスを取るんですね。

出会いのきっかけは「架空OL日記」

──テイさんとバカリズムさんがやりとりするようになったのは、バカリズムさんがOLになりきって架空の日常をつづるブログを書籍化した「架空OL日記」がきっかけだそうですね。

テイ 僕は純粋にニュースリーディング用にTwitterのアカウントだけ作って、しばらくの間、誰もフォローせず、何もつぶやかずだったんです。そしたら「架空OL日記」を読んで面白いなと思っていた頃、たまたま誰が自分のことをフォローしてるんだろうと思って見てたらバカリさんがいて。それで僕も初めてフォローしてDMを送ったんです。「『架空OL日記』最高でした!」みたいな。バカリさんとは年齢10個以上違うんでしたっけ?

バカリズム 昭和50年生まれです。

テイ 僕は昭和39年。でも一緒にいると5歳下のまりんとか五木田くんより感覚が近い感じがする。2歳下ぐらいの感覚。

バカリズム ははは(笑)。それは落ち着いてるってことですかね。

テイ それまでも都道府県を持つネタとかを見て、ダウンタウンの笑いとも全然違うところから出てきた人だなと思っていたんですけど、「架空OL日記」を読んで決定的にクリエイティビティを感じて。勝手ながら、自分と同じ裏方の匂いがするなと。

バカリズム 考え方は完全にそうですね(笑)。

テイ 作り話だけど非常にリアル。もともとブログで書いてたことも含めて、近年まれに見るSFだなと思ったんです。

バカリズム 本として発売するとき、縦書きにして小説っぽく書き直してほしいと言われたんですけど、「いや、それをやると成立しないんです」って。あくまでブログ本だから1日1ページ、そこを破るとルールが壊れちゃうから。

テイ 制約の美学ってありますよね。派手さのないところもいいし、仕事の具体的な感じもなかったですよね。「なんとなく事務職かなあ」くらいの。

バカリズム こっちは完全に銀行員として書いてましたけど、わざわざブログで「私は銀行員です」と書かないリアルさですね。

テイ ブログの更新はどれぐらいの期間やってたんですか?

バカリズム 3年ぐらいです(2006~2009年)。ほぼ毎日、OLさんが寝るくらいの時間にベッドの上で書いてる設定で、だいたい夜11時ぐらいに公開してて。平日の昼間にアップしてたら嘘になるから。

テイ ははは!(笑) 時間まで守って。徹底してますね。しかも別に誰かにやれって言われて始めた仕事でもないんですよね。

バカリズム 完全に僕の趣味です(笑)。

テイ 趣味もお笑いってところがすごい。マンガがお好きだっていうのはこの前Twitterで読みましたけど。

野球とマンガ

バカリズム 僕、マンガ家になりたかったんです。

テイ 僕も最初に就きたい仕事として意識したのはマンガ家でした。

バカリズム えっ! そうなんですか。

テイ 父親が建築関係だったんですけど、学生結婚だったから僕が小さい頃はまだまだ貧乏で。大学院にいたとき、よく図面の青焼きをロールで持って帰ってきてくれたんです。それを婆さんがハサミで切ってノート帳にしてくれたので、しょっちゅうマンガを描いてました。「次のウルトラマンはこれだ」とか、勝手に想像したキャラクター。

バカリズム 僕は「キン肉マン」のオリジナル超人を描いてました(笑)。似たようなことしてたんですね。テイさんは話も自分で作って描いてたんですか?

左からバカリズム、TOWA TEI。

テイ 描いてました。実話に基づく話が多かったですね。鼻がでっかい山田くんって奴がいて、こいつが後輩やりまくっちゃう話とか。

バカリズム そんな生々しいマンガを描いてたんですか(笑)。僕はイラストだけでした。ヤンキーマンガが好きだったので転校生とか新キャラを描いては、「ついに最強の敵が現れた!」みたいな。

テイ バカリさん、野球部だったんですよね。

バカリズム 中、高とやってました。そこそこ強いチームだったのでけっこう本格的に。

テイ 僕も小学校のとき、草野球チームに入ってて。チームのロゴとか描いた気がします。

バカリズム へーっ、意外と共通点多いですね。野球とマンガ。

テイ 高校生のときはかわいい子がいるなあと思ってテニス部に入ったけど、すぐ辞めちゃって。

バカリズム テニス部はかわいい子いるイメージですよね。

テイ あはは(笑)。バカリさんは学生時代、野球に打ち込んでいたから、そこで基礎体力を付けたんじゃないですか?

バカリズム そうですね。まあ、しんどい部活でした。男子校の体育会系だから、今ではたぶん話せないようなこともたくさん受けて。当時はそれが当たり前だと思ってたし。

テイ 野球部だと最初は走ってばっかじゃないですか?

バカリズム ずっと走ってましたね。水を飲んじゃいけないとか意味がわからなくて。おかげで水のありがたみを知りましたけど。

テイ あれ、なんだったんでしょうね。うちは気を利かせた1年のマネージャーの女の子がレモンを輪切りにして持ってきてくれて…………これ全然音楽ナタリーでする会話じゃないな(笑)。

次のページ »
1人の時間が好き

Sweet Robots Against The Machine「3」
2018年7月18日発売 / BETTER DAYS
Sweet Robots Against The Machine「3」

[CD]
3240円 / COCB-54263

Amazon.co.jp

収録曲
  1. フューチャリズム(Futurism)
  2. ダキタイム(Dakitime)
  3. サセル体操(Gymnastics to make)
  4. 覚えてはいけない九九(Do not remember 99)
  5. アニマル(Animal)
  6. 非常識クイズ(Insane quiz)
  7. 捨てられない街角(Boxes)
  8. レイディオ(RADIO)
  9. 集会(Assembly)
  10. かわいい(Kawaii)
Sweet Robots Against The Machine「3」アナログ

[アナログ2枚組]
5940円 / COJA-9335

Amazon.co.jp

収録曲

DISC 1
A面

  1. フューチャリズム(Futurism)
  2. ダキタイム(Dakitime)
  3. サセル体操(Gymnastics to make)
  4. 覚えてはいけない九九(Do not remember 99)
  5. アニマル(Animal)

B面

  1. 非常識クイズ(Insane quiz)
  2. 捨てられない街角(Boxes)
  3. レイディオ(RADIO)
  4. 集会(Assembly)
  5. かわいい(Kawaii)

DISC 2
A面

  1. Futurism(Inst.)
  2. Dakitime(Inst.)

B面

  1. Do not remember 99(Inst.)
  2. Insane quiz(Inst.)
  3. Assembly(Inst.)
Sweet Robots Against The Machine(スウィートロボッツアゲインストザマシーン)
Sweet Robots Against The Machine
テイ・トウワの変名プロジェクト。1997年に砂原良徳、清水靖晃、Stretch Armstrongらを迎えて1stアルバム「Sweet Robots Against the Machine」を、2002年には砂原、細野晴臣 セニョールココナッツと共に2ndアルバム「TOWA TEI」を発表した。2018年7月に、砂原、バカリズムを迎えて16年ぶりのアルバム「3」をリリース。