SPYAIR|アニメ「銀魂」はバンドの運命を変えた、最終章に捧げる渾身のナンバー

SPYAIRの新作CD「轍〜Wadachi〜」が、1月6日にリリースされる。

タイトル曲「轍〜Wadachi〜」はKENTA(Dr)が作曲した楽曲で、アニメ「銀魂」シリーズの最終章を飾る映画「銀魂 THE FINAL」の主題歌。さらに「サムライハート(Some Like It Hot!!)」「サクラミツツキ」「現状ディストラクション」など、過去にSPYAIRが担当した「銀魂」テレビアニメや劇場版、PlayStation4ゲーム版のテーマ曲5曲を収録した、SPYAIRと「銀魂」の歴史を総括する作品となっている。

本作のリリースを前に、音楽ナタリーではIKE(Vo)とKENTAにインタビュー。新曲「轍〜Wadachi〜」の制作プロセス、そしてバンドの運命に大きな影響を与えたというアニメ「銀魂」への思いについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 須田卓馬

「『銀魂』はいい作品だった」と言える曲に

──新作「轍〜Wadachi〜」がリリースされます。タイトル曲は映画「銀魂 THE FINAL」の主題歌で、作曲はKENTAさんですが、どんなイメージを持って制作に臨んだのでしょうか?

IKE(Vo) それは俺も聞きたい(笑)。

KENTA(Dr)

KENTA(Dr) (笑)。作曲を始めたことに関しては、コロナ禍の影響が大きかったと思いますね。2020年は本来、デビュー10周年に関連する活動を予定していたんですけど、それが全部なくなって。もともと去年の終わりくらいから、「次のアルバムはUZ(G)以外のメンバーも作曲した曲を入れよう」という話になってたし、コロナの影響で時間ができたから、まず機材をそろえていたんです。そうしたらちょうどそのタイミングで「銀魂 THE FINAL」の主題歌の話が来て、とにかく自分のできることをやろうと。「こういう曲を求められていて」みたいなことを考える余裕はなくて、ただただ「いい曲を作ろう」と思ってました。

IKE 曲の全体的なイメージがあったわけじゃないんだ?

KENTA 「戦闘シーンの曲じゃないな」というのはあったかな。これまでの「銀魂」の曲は戦闘シーンに似合う曲が多かったんですけど、今回はアニメ版最後の映画ということもあるし、これまでを振り返るというか、「『銀魂』っていいマンガだったし、いいアニメだったよね」ってみんなで言えるような曲にしたくて。ゴリゴリの激しい曲というより、さわやかで、しかも哀愁があるような曲がいいなとは思ってました。

──2006年から始まったアニメ「銀魂」シリーズのラストを飾る曲ですからね。

IKE そうですよね。制作はどうだった?

KENTA 面白かったけどね、曲を作るのは。自分の頭の中にあるものを具現化する作業だから。

IKE 最初のとっかかりは何からだったの?

KENTA メロディからだね。鼻歌でメロディを歌って……。

IKE それを鍵盤で弾くんだ?

KENTA そう。鍵盤が弾けるわけではないし、1音1音探していくから、めちゃくちゃ時間かかるんだけど。

IKE なるほど。気になってたんだよ、メロディから作るのか? コードからかな?とか。

KENTA コードのことはわからない(笑)。UZはもちろん、MOMIKEN(B)も弦楽器だからコードの理論をわかってるんだけど、こっちは打楽器だからメロディから作るのがいちばんラクなんだよね。鼻歌は誰でも歌えるから(笑)。

左からIKE(Vo)、KENTA(Dr)。

この4人で演奏してIKEが歌えば、何をやってもSPYAIRになる

──ドラマーが作曲する場合、まずリズムを組んで、コードを付けて、最後にメロディというパターンもありますけどね。

KENTA トラック先行は難しかったんですよ、逆に。ドラムに関しては「歌があれば、どんなリズムでも付けられる」という自信があるし。

IKE そうか。「轍〜Wadachi〜」は四つ打ちが軸になってるから、最初にビートを組んだのかと思ってた。

KENTA いや、全然。最初のデモは四つ打ちじゃなかったしね。

IKE へー!

──めっちゃ驚いてますね、IKEさん(笑)。

IKE 最初に送られてきたデモ音源がほぼ完成された形だったんですよ。どうやって作ったかわからなかったから、「KENTA、すごいじゃん!」という感想しかなくて。

KENTA そうだよね(笑)。

IKE(Vo)

IKE しかも、そのデモ音源がすごくよかったんです。外に向かって開けた曲だなと思ったし、メロディラインも素直で。

KENTA ひとひねりができないから、素直に作るしかないんだよ(笑)。

IKE それがいいんだと思う。メロディ自体から「伸びやかに歌ってください」と指示されている感じもあって。アクを入れたり、ドスを効かせたりしないで、サビのパートに疾走感とパワー感を乗せるだけでよかったんですよね、この曲は。1カ所だけ難しいところがあったんだけどね。「宝物さ」の“さ”の音程が自分の中にはなくて、何度も聴いて音程を確かめて。しかも柔らかい声で乗せたかったから、すごい苦労した(笑)。

──作曲者が違えば当然、メロディも違いますからね。KENTAさんは作曲の段階で“SPYAIRらしさ”は意識していたんですか?

KENTA いや、それはまったく。「この4人で演奏してIKEが歌えば、何をやってもSPYAIRになる」と思ってるし、今までUZが作ってきた曲を意識することはなかったです。むしろ「UZはやらないだろうな」ということをやろうと思ってたかな。そのほうが変化があるので。「轍〜Wadachi〜」のミックスも、今までにはやったことない手法なんですよ。

IKE 確かに音の組み方が違うよね。具体的なことは知らないけど(笑)。

KENTA (笑)。エンジニアさんと俺が2人で話して決めたことだから、メンバーには伝えてなくて。わかりやすく言えば、よりさわやかなイメージなんですよ。今までは音の壁がバーンと迫ってくるようなサウンドにすることが多かったんだけど、今回はそうじゃなくて。

IKE 大きく包まれてる感覚もあるし、軽やかだよね。

KENTA うん。もしメンバーの中で違和感があったり、「これはちょっと……」ということがあればやめようと思ってたんだけど、そういう意見は出なかったから、そのまま進めました。

IKE ポップな方向性というか、キラッとした感じもあって。でも演者がロックバンドだし、俺のボーカルも含めて、結果SPYAIRの曲になるんですよね。あと、今までになかったジャンルを突いている曲だから、歌録りのマイクも変えてみたんです。