すでに大量オンエアされているので、ご覧になっている方も多いと思う。ビッケブランカの新曲「Ca Va?」は、SpotifyのテレビCM「#音楽さえあればいい」飛行機編で使用されている。組曲のような構造を持ち、フランス語、英語、日本語を行き来するリリックが躍動するこの曲は、ビッケブランカの多様な音楽性が真新しいポップミュージックとして昇華されていて、楽曲と同じく強烈なインパクトを放つCM映像と絶妙な相乗効果を生んでいる。音楽ナタリーではビッケブランカにインタビューを行い、「Ca Va?」の制作秘話と、プライベートでも愛用しているというSpotifyの魅力やユーザビリティについて語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一 撮影 / 須田卓馬
同時にアイデアが湧いたんなら同じ曲にしちゃおう
──「Ca Va?」はかなりぶっ飛んだポップミュージックで(笑)、組曲的な構造はQueen的でもあります。過去にも「Slave of Love」というQueenオマージュな曲がありましたが、「Ca Va?」はどのように立ち上がっていったんですか?
「Slave of Love」はまさにQueenのロックオペラ的な構造を取り入れようと思って作ったんですけど、「Ca Va?」に関してはそういう意識もなくて。もはや曲を作っていくと自然とこういう曲になるというモードに入ってますね。第1楽章、第2楽章みたいに楽章が変わることが普通になってきているんですよ。
──自分の音楽的な多面性をナチュラルにアウトプットするとこういう曲になるという。
そう思います。いきなり言い当てられちゃった感じですけど、いろんなことをやりたいと思ったときにちょっとヒップホップっぽいというか……例えばメロディアスではあるんだけど、(節を)刻むラップ調のテンポで歌いたいと。でも、それと同時にファルセットのハーモニックなパートも作りたいという欲求が湧いてくる。それを別の曲として完成させるんじゃなくて、同時にアイデアが湧いたのなら同じ曲にしちゃおうという感覚ですよね。それが奇をてらった選択じゃなくなってる感じがすごくあります。「Ca Va?」の原曲自体はだいぶ前からあったんです。数年前にフランスへ初めての海外旅行に行ったんですけど、当時はそんなに仕事もなくて忙しくもないから、14日くらいパリに滞在して。日本で知り合ったフランス人のダチを連れ出してスラム街のような場所にあるクラブにも積極的に足を踏み入れたんですけど、「異国の地に来たんだ!」という感動があって。クラブでもコアなハウスやテクノが流れていて、吸収しまくったんです。で、パリではみんな「Ca Va?」と挨拶するんですよ。
──「What's up?」みたいなノリで?
そう、まさに。友達にも家族にも誰にでも「Ca Va?」って言ってるから面白くて。“Ca Va?=サバ=鯖”の連想が何か面白いヒントになりそうだなとも思ったし。それで帰国してからサビの部分だけ作ったんです。でも、今までそれをずっとほったらかしにしていたんですよ。今回、Spotifyさんのタイアップ曲を担当するとなったときに、“スポティさん”ならこれだけふざけた曲でも喜んでくれるんじゃないかと思って。
──スポティさん(笑)。
スポティさんのCM曲を作ることになって(笑)、改めて曲を完成させたという流れですね。
一瞬の心の動きをポジティブマインドで表現できたら
──Spotifyはさまざまな国のさまざまな音楽にアクセスできる、あらゆる面で複合的な要素を持った音楽プラットホームですが、そういった側面と「Ca Va?」という曲の性格の相性のよさを意識したところもありますか?
そこはうれしい偶然というか、あまり意識してなかったんです。それを意識し始めると答えが出なくなっちゃう気もするし。だから、あくまで数年前にパリに行って楽しかった記憶、現地でみんなが「Ca Va?」と挨拶していたことを思い出して、楽しい曲を作りたいという気持ちを大事にしました。終始楽しみながら、ふざけながら制作できましたね。
──この曲自体が好奇心の塊みたいな感じですよね。リリックもフランス語、英語、日本語が共存していて。
そうですね。サウンドのみならず、ついに言語までミックスし始めるというね(笑)。3カ国語で歌うのは初めてだし、それを巡り巡ってスポティさんのCMで実現できるのは幸せだなと。でも、歌詞にメッセージ性があるというわけではなく、一瞬の感情という感じです。
──「知らないことも 知らないままでゆこう」とか「気にしない 気にしない」とか、まさに旅で感じることというかね。
そう。一瞬の「僕は今こんな気持ちなんです」という心の動きをポジティブマインドで表現できたらいいなと思って。
──Spotifyサイドからリクエストはなかったんですか? 「こういう歌詞にしてほしい」とか。
一切なかったです。すごくアーティストの表現を尊重してくれる会社なので。ありがたいですね。
──CMの内容も旅に出る機上の人が一瞬のトラブルに遭うんだけど、「気にしない 気にしない」という感じで、「音楽さえあればいい」というキャッチコピーに着地するという(笑)。
いいですよね、あのCM。実は僕も出てるんですよ。
──え、気付かなかった。
オレンジジュースを顔から浴びる男性の斜め後ろに座っているのが僕なんです。あの現場では俳優に徹しようと思いました(笑)。「音楽さえあればいい。」というキャッチコピーはすごくいいと思います。音楽を作る側としてはリスナーにそう思ってもらえたら最高ですよね。それと同時に、僕にとって音楽は「あったら楽しくなるもの」でもあって。そのうえで「本当に大切なのはあなた自身」ということも音楽で伝えていけたらと思ってるんですよね。
- Spotify
2008年にヨーロッパでスタートした、スウェーデン発の音楽ストリーミングサービス。2011年にアメリカに進出し、日本では2016年11月に本格的にスタートした。国内外5000万曲以上の楽曲をラインナップし、現在世界のユーザー数は2億1700万人超。世界各国のSpotifyエディターやアーティスト、音楽ファンが作成した膨大なプレイリストや、アルゴリズムに基づく高精度な独自のレコメンド機能を持つ。
- ビッケブランカ「Ca Va?」
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「#音楽さえあればいい」飛行機編
- ビッケブランカ「Ca Va?」
- 2019年6月12日発売/ avex trax
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初回限定盤 [CD+DVD]
2700円 / AVCD-94432/B -
通常盤 [CD]
1296円 / AVCD-94433
- CD収録曲
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- Ca Va?
- Lucky Ending
- ウララ(acoustic ver.)
- Ca Va?(Karaoke)
- Lucky Ending(Karaoke)
- 初回限定盤DVD収録内容
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WIZARD TOUR 2019@Zepp Tokyo
- ウララ
- Moon Ride
- Buntline Special
- Black Rover
- SPEECH
- Lights Out
- まっしろ
- 夏の夢 remix
- Smash(Right This Way)
- キロン
- Winter Beat
- ビッケブランカ
- 愛知県出身の男性シンガーソングライター。美麗なファルセットボイスとピアノが紡ぎ出すポップチューンを武器に各地のイベントなどに出場し話題を集める。2014年10月に1stミニアルバム「ツベルクリン」をリリースし、2015年8月には2ndミニアルバム「GOOD LUCK」を発表。2016年10月にミニアルバム「Slave of Love」でavex traxよりメジャーデビューを果たす。2017年1月にワンマンツアーを行い、各公演のチケットはソールドアウトに。7月に1stフルアルバム「FEARLESS」をリリース後、8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」といった大型フェスに出演した。9月からワンマンツアー「FEARLESS TOUR 2017」を行い、2018年には4月にメジャー1stシングル「ウララ」を、11月には2ndアルバム「wizard」を発売した。2019年6月に、SpotifyのCMソングを表題曲とする3rdシングル「Ca Va?」をリリース。