スピラ・スピカがニューシングル「ピラミッド大逆転」を2月24日にリリースした。
シングルの表題曲はテレビアニメ「俺だけ入れる隠しダンジョン」のオープニングテーマ。「ピラミッド ぐるりんと ひっくり返してやるんだ!」と明るく高みを目指していくポップな世界観は、“ピュアポップ・ロックバンド”を称するスピラ・スピカの真骨頂とも言える仕上がりとなっている。
音楽ナタリーではスピラ・スピカに初インタビュー。本作の制作にまつわるエピソードから、3月18日に予定されている大阪でのワンマンライブへの意気込みまで、元気いっぱいに語ってくれた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 星野耕作
やっと会えたね
──昨年12月にTSUTAYA O-EASTで「スピラ・スピカ One-Man Live 2020『届け、エール!』」が開催されました。ひさびさの有観客ライブはいかがでしたか?
幹葉(Vo) まずはひと言、最高に楽しかったですね! すごくひさしぶりやったけん、「今までこんなにドキドキしとったっけ?」っていうくらい前の日から緊張してましたけど。
ますだ(B) いつにも増してドキドキしたよね。
寺西裕二(G) わかる! ソワソワ落ち着かない感じがあった。
幹葉 当日会場に入ったら入ったで、スタッフの方々や集まってくれた大好きなファンのみんなと会えることに対して思いきり感動してしまって。ライブ前にまず楽屋でひと泣きするという。「泣くの早くない?」ってメンバーにもツッコまれました(笑)。
──ライブでのパフォーマンスにも相当熱が入ったでしょうね。
幹葉 はい。「やっと会えたね」という気持ちがあふれ出て、最初の3曲を全員が全員かっ飛ばしすぎてしまって(笑)。
寺西 あれはちょっと飛ばしすぎたなー(笑)。体力的にも使いすぎた感が否めない。
ますだ みんな最初からフルスロットル感あったもんね。
──それだけライブができない時間で溜め込んでいたものがあったと。
寺西 ホントにそう思います。みんなと一緒にまたライブという空間を作り上げられることにちょっとウルッとしそうになりながら、本当に思いきり楽しめました。僕らはライブをエネルギーにして活動してきたバンドなんだなということを改めて実感できたので、すごく特別な意味を持つライブになったような気がしますね。
ますだ お客さんはマスクをしてたけど、それでも表情がわかるくらい楽しんでくれているのがビシビシ伝わってきたのもうれしかったです。その表情を見ることでまた自分たちのテンションも上がるという。
幹葉 幻聴なんかな? 声を出してはいけないライブであっても、私はみんなの歓声が聞こえてきた気がするんですよ(笑)。
寺西 わかるわかる。表情を見てると聞こえないはずの歓声が聞こえてくるんだよね。
幹葉 あと、スピラ・スピカの楽曲はライブで演奏することでようやく完成するみたいな感覚が強いんです。そういう意味ではリリースしたばかりのシングル「サヨナラナミダ」や、去年の3月に出したまま披露できていなかったアルバム「ポップ・ステップ・ジャンプ!」の曲たちをライブでできたのもうれしかったです。「やっと完成したなー!」ってすごく思いましたね。
──今お話に出た昨年12月リリースの「サヨナラナミダ」は、ちょっとシリアスでエモーショナルなバラードでした。スピラ・スピカとしての新しい表情を提示した曲だとも思うのですが、その反響はいかがでした?
幹葉 最初は「どう受け取ってもらえるんだろう?」というドキドキ感があったんですけど、プラスに受け取ってくださる方がすごく多かったですね。ライブで歌ったときは、曲に込めた私の強い思いを、皆さんがしっかり受け取ってくださったように感じました。
寺西 僕らには明るくてポップというイメージがあると思うので、受け入れてもらえないかもなという不安もあったからね。でも実際は皆さんすんなり受け入れてくださったので、バンドとして新しい表情を見せる曲もどんどん出していいんだなって、ある種の自信につながったところもありました。
幹葉 そうだね。あの曲を通してすごく成長することができたと思います。
スピラ・スピカの隠しダンジョン
──そして早くもニューシングル「ピラミッド大逆転」が届きました。表題曲はとにかく明るく楽しい雰囲気に仕上がっていますね。
幹葉 「サヨナラナミダ」とはガラッと雰囲気が変わり、「これぞスピラ・スピカ!」という曲になりました。
──この曲はテレビアニメ「俺だけ入れる隠しダンジョン」のオープニングテーマとして書き下ろされたんですよね。
寺西 はい。アニメの世界観を受け取ったうえで、そこで感じたドタバタした感じとか、“隠しダンジョン”という言葉から連想されるちょっと秘密で怪しい感じみたいな部分を曲としても表現できたらいいなというイメージで作っていきました。アニメの中の隠しダンジョンは合言葉を言うと扉が開く設定なので、そういう部分もメロディや音色で表現しつつ、僕が思う“スピラ・スピカの隠しダンジョン”を目指してみました。
──スピラ・スピカとしてはきっと得意なテイストですよね。
寺西 そうですね。普段から明るい曲を作ることが多いので、今回もスッと世界観をイメージすることはできました。ただ、例えば以前に出した「イヤヨイヤヨモスキノウチ!」(2019年8月発表の4thシングル表題曲)も明るい曲だったけど、そことはまた違った明るさを出さなきゃなという悩みも少しあったんですよね。なのでメロディ的に音符を増やすのではなく、ちょっと伸ばす部分を多くしてみたり、あまり抑揚を付けない棒のようなメロディラインを盛り込むことで明るさの中にちょっと怪しい雰囲気を出すようにしてみたところはあって。
──それによって、明るく楽しい曲という得意な分野の中でまた新しい表現を手に入れることができたわけですね。
寺西 はい。アレンジャーのIf Iさんのアイデアも加わって、またちょっと違う色を出せたかなって。自分としてはけっこう自信ありなので、皆さんがどう受け取ってくれるかが楽しみです。
ピラミッドごとひっくり返す
──曲に関して、幹葉さんとますださんはどんな印象を受けましたか?
幹葉 イントロからしてちょっと不思議な感じがありますよね。「なんか変なの始まったぞ!」みたいな(笑)。
ますだ 「なんだこれ?」って一瞬思うよね(笑)。
幹葉 そうそう。一瞬で興味を引き付けられて、リズムが入ってくると「はい、扉が開きましたー!」という流れになっているのが最高だなって。
ますだ 曲の持っている楽しいドタバタ感、わちゃわちゃ感がすごくいい仕上がりだったので、ベースラインに関してもそこをうまく表現することをすごく意識しましたね。とにかく楽しい曲なので、できるだけテンションを上げてレコーディングに臨みました。
寺西 演奏していてもめっちゃ楽しい曲なんですよ。そんなに難しいプレイをしているわけではないんだけど、アンサンブル的にもグルーヴ的にもみんなでどんどん上へ上がっていけそうな感覚になるんですよね。
──歌詞は幹葉さんが手がけていますが、どのようなことを考えながら書いていったんですか?
幹葉 原作のマンガやアニメのシナリオを読ませていただいたうえで、自分やスピラ・スピカとして重なる部分を探し出し、それを軸にしながら書いていきました。アニメの主人公のノルくんは最下層の貴族なので、理不尽なことでみんなから見下されたりすることがあるんですよ。でも、そういう中でも自分なりのスキルを手に入れ、仲間と協力し合いながらどんどん強くなっていく。そういったストーリーは自分たちにも似とる部分があるんじゃないかなと思ったんです。なので自分たちの強い意志、強い決意が込められた歌詞にもなっていますね。
──今の状況を乗り越えてさらなる高みを目指していく。そんなメッセージは誰の人生にも当てはまるものでもありますしね。勇気をもらえる歌詞だと思います。
幹葉 ありがとうございます! 生きていると他人と自分を比べて、その境遇だったり自分にないものをうらやんでしまうことってきっとあると思うんです。でも、うらやましい、悔しいという感情をそのまま終わらすのではなく、がんばって見返してやろうという前向きなパワーに変えられたらいいじゃないですか。なので聴いてくれる人にとっての応援ソング……あれ、てら(寺西)くんなんて言ってたっけ? いいキャッチコピー考えてくれてたよね?
寺西 “奇想天外逆転応援ソング”だね(笑)。
幹葉 そうそう! そういうものとして受け取ってもらえたらうれしいですね。
寺西 うん。ただ、“ピラミッド大逆転”という発想はすごいなって思いましたけどね。普通、上を目指すのならば“下克上”とかそういうワードが思いつくものですけど、ピラミッドごとひっくり返すんかいっていう(笑)。
幹葉 ぐるりんとね!
寺西 そこがキャッチコピーにつけた“奇想天外”の由来です(笑)。
幹葉 そういう発想はアニメの雰囲気から引き出してもらったものだと思いますね。オープニングテーマとして引っかかりのある言葉を使えてよかったなって思います(笑)。
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すべての声にちゃんと意図がある