お客さんは“ひかり”、音楽は分かち合うもの
──6曲目、カントリー調の軽快なギターポップ「SPOTLIGHT」は豊崎さんですね。
豊崎 はい。私のテーマは「音楽×生活」だったんですけど、こういうナチュラルな、ギターの優しい音色が響く曲を4人で歌うのはすごく新鮮でした。個人的にはソロの楽曲は自分の“好き”を基準に、スフィアの楽曲はお客さんの“好き”を基準に選択していくようなイメージがあって。それで今回この「SPOTLIGHT」をスフィアとして歌う中で、自分たちにとってのお客さんとはどういう存在なのかを改めて考えて、そこで導き出された1つの答えが「ひかり」だったんです。
戸松 ああー。
豊崎 サビで「ひとりじゃない ひとりじゃないよ」というフレーズが繰り返されるんですけど、ここはステージに立つ自分以外の3人のことを思って歌えると同時に、客席にいるお客さんのことを思って歌えるんですよ。あと、私は10周年のタイミングで過去のスフィアの曲を聴き返していて。でもスタジオ音源よりもお客さんの声も入ってるライブの印象のほうが強くて、4人だけの声で聴くと「こんな歌だっけ?」と感じることも多いんです。それもあって「私の(あなたの)この声が 私たちの歌になるから 私たちの“ひかり”になるから」という歌詞は、すごくスフィアらしいなと思いますね。
──そして弦楽四重奏とピアノで奏でられるクラシカルな「パルタージュ」が、高垣さん。
高垣 やっぱりクラシックというのは私のルーツの1つであり、ソロで活動していくうえでのアイデンティティでもあって。この曲はエルガーの「愛の挨拶」というクラシックの曲を下敷きにしているんです。歌詞はソロでお世話になっているeufoniusのriyaさんにお願いして書いていただいたんですけど、私のテーマが「音楽×人生」で……。
──一瞬「重たいな」と思ってしまったのですが、高垣さんのキャリアを考えれば納得ですね。
高垣 いや、実際重いですよね(笑)。テーマが大きすぎて、私自身が音楽に対して思っていること……例えば「音楽というものは誰かに届いた時点でその人のものになる」とか、そういうことをとりとめもなく書いたテキストをriyaさんに託したんですよ。それをフランス語の「パルタージュ」という美しい言葉で表現してくださって。「パルタージュ」は「分かち合う」という意味なんですけど、この言葉は「パルタージュブーケ」という形で、結婚式で花嫁が持つブーケにも使われるらしいんです。つまり幸せをお裾分けする。
寿 素敵。
高垣 まさに音楽もそういうふうに分かち合えるものなんだって、感動しました。そしてこの「パルタージュ」が、もっと言えば「10s」というアルバム自体がどんどん誰かのものになっていってほしいという願いを込めて歌いました。
道なき道を歩むような気持ち
──ここまでかなりバラエティ豊かな楽曲が続きますが、8曲目は「鋼のVictress with JAM Project」という、曲名からして強烈な……。
戸松 ですよね(笑)。皆さんが気になっている曲の1つなんじゃないかなと思いますが、なんと作詞、作曲が影山ヒロノブさん。
高垣 すごい!
戸松 前々から私たちも「いつか影山さんに曲を書いていただけたらうれしいね」と話していたんですけど、ついにその夢が叶いました。しかも、恐れ多くもJAM Projectの皆さんにコーラスで参加していただいて、いい意味で異色の曲になっているなと。私たちスフィアもJAMさんの一部になれたような気がしています。
──むしろ、僕もいい意味で言うんですけど、この曲はめちゃくちゃアクが強くて暑苦しいのに、それをスフィアの歌として成立させているのがすごいと思いました。
戸松 おお、うれしい!
──そんなコテコテにメタルな「鋼のVictress」から、同じくメタル路線でよりシンフォニックな「Absolute Pride」へ。
高垣 この曲の作詞のこだまさおりさんと作曲の菊田大介さんは、「GENESIS ARIA」(2013年5月発売の12thシングル表題曲)という曲を作ってくださったタッグでもあるんです。今回もこのお二方に今の私たちだから歌える強い楽曲を作っていただきたくてお願いしたんですけど、こだまさんが「スフィアがこの10年間で切り開いてきたものや、戦い続けてきたことを物語風に描いていくのはどう?」と言ってくださって。例えるならジャンヌ・ダルクのような主人公を立てて。
──ああー。
高垣 ありがたいことに、この10年間で「スフィアは声優ユニットのパイオニアですね」みたいに言ってもらえることが何度もあって。私たちはただがむしゃらに突き進んできただけなんですけど、客観的に見て、多少なりとも何かを切り開いてこられたのだとしたら、これからもスフィアだからできることがまだあるかもしれない。私は歌詞の中に出てくる「先導者はいない」という言葉がすごく好きなので、このアルバムから始まる10周年を、道なき道を歩むような気持ちで進んでいきたいですね。
──次のマーチ調のエレクトロポップ「Pl@net Spheres!!」でガラッと雰囲気が変わりますね。
豊崎 この曲はですね、私たちはスフィア結成当初から「Pl@net Sphere」というWebラジオを毎週更新しているんですけれども、テーマ曲がないことにいまさら気付いてしまい、「じゃあ作ろう」と(笑)。リスナーのみんなありきの番組だったので、そのみんなも巻き込んで、スフィアに対して思っていることやラジオで放送された中で印象的だった言葉を募りまして、それを畑亜貴さんに紡いでいただきました。
高垣 畑さんもこれまでスフィアの楽曲を何度も手がけてくださっていて。
豊崎 私たちはよく「5人目のスフィア」という言い方をするんですけど、畑さんもスフィアにとって欠かせない作家さんの1人なので、10周年のアルバムに畑さんの作詞曲を絶対に入れたかったんです。この曲に関しては、実はメロディに乗せ切れなかったワードがまだたくさんあって、それを収録した別バージョンがアルバム発売と同時に配信限定でリリースされるんです。CDバージョンもかなりにぎやかな仕上がりになっているんですけど、配信バージョンは間奏で私たちがやんややんやと叫んだり笑ったりして、よりラジオっぽい雰囲気が出ています。
「s」から始まる10のキーワード
──11曲目の「Future Is Now!」は、新曲群の中で最もスフィアらしい曲ですね。
寿 「Future Is Now!」は、実は5周年のときにディレクターさんから提案していただいた曲なんですが、そのときはタイミングが合わず、私たちが聴くこともなく……だから5年間温め続けてきた曲であり、ディレクターさんをはじめとするスフィアチームの思いを背負った曲でもあるんですよね。かつ、デビュー曲の「Future Stream」からの「Future Is Now!」なので、今の私たちの表現を詰め込むと共に、またここから再スタートするんだという思いも込められています。
豊崎 これはみなちゃんの発案なんですけど、「Future Is Now!」のラップ部分には「s」から始まるスフィアにとってのキーワードが10個、ギュギュッと入っているんです。だからアルバムタイトルが「10th」ではなくて「10s」なのも、スフィアの「s」と、私たちにとって大事な10の「s」ワードをタイトルに落とし込んだからなんですよ。
寿 この「Future Is Now!」も含めて「10s」に収録された10曲の新曲はスフィアの4人が毎月楽曲会議に参加しながら大事に作っていった曲で。既存の2曲にしても充電前に最後にレコーディングした曲なので、ホントに思い入れが強い曲ばかりなんですよ。だからじっくり、たくさん聴いてもらいたいです。
戸松 「10s」は曲順もみんなで話し合って決めたので、まずは1曲目からラストナンバーまで通して聴いてほしいですね。例えばさっきお話ししたJAMさんの曲のあとには「Absolute Pride」が控えているので、ここはラスボスパートみたいな(笑)。そういう流れも込みで楽しめるんじゃないかと思います。
豊崎 この10周年という年に、私たちは今言った「s」から始まるいろんなワードを全力で表現して、皆さんに恩返ししていきたいと思っています。6月にはニューシングルのリリースがあって(参照:スフィアが1年7カ月ぶりシングルリリース、表題曲は「ゾイドワイルド」EDテーマ曲)、9月からは全国ツアーが始まって(参照:結成10周年のスフィア、9月より全国ツアー開催)……実はまだ言えないこともたくさん企画しているので、引き続きお祭り騒ぎに付き合っていただけたらうれしいです。
高垣 そして10周年からさらに先を見据えて、未知数な部分もたくさんありますけど「普通はこんなことしないよね」とか「こんなユニット、今までなかったよね」とか、そういうことを言われ続けるユニットでありたいですね。
ツアー情報
- スフィア「LAWSON presents Sphere 10th anniversary Live tour 2019 "A10tion!"」
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- 2019年9月7日(土)大阪府 オリックス劇場
- 2019年9月8日(日)大阪府 オリックス劇場
- 2019年9月15日(日)東京都 中野サンプラザホール
- 2019年9月22日(日)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
- 2019年9月28日(土)東京都 中野サンプラザホール
- 2019年10月13日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年10月14日(月・祝)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年10月26日(土)千葉県 幕張イベントホール
- 2019年10月27日(日)千葉県 幕張イベントホール