“憧れのスフィア像”に追いついた
──「Music Power→!!!!」はシンプルに言って名曲ですよね。ボーカルグループの楽曲として非常にクオリティが高いと思いました。
全員 ありがとうございます!
寿 アレンジもゴージャスで、ブラスも初めて生で録っていただいたんです。
豊崎 スフィア初の生ラッパ。
高垣 あとrinoさんが作ってくださる曲って、不思議と相手に語りかけるような、優しい言葉を選びたくなるんだよね。
寿 うんうん。メロディがそうさせる。
豊崎 ただ、rinoさん自身がスフィアのために作詞してくださった曲って、どれもめちゃくちゃ芯が強い人の歌なんですよ。
高垣 「尖らなくても 突き抜けてみせる」(2017年2月発売の5thアルバム「ISM」収録曲「キミ想う旋律」)とか。
豊崎 「変わらない為に変わる」(2012年7月発売の3rdアルバム「Third Planet」リード曲「Planet Freedom」)とか。今までスフィアはそういうrinoさんの曲を歌わせてもらってきたんですけど、感覚としては、私たちにとっての“憧れのスフィア像”をrinoさんが曲の中で表現してくださっている感じだったんですよ。だから個人的にはちょっとだけ背伸びしていたような気がしていて。でも今回、一緒に歌詞を書かせてもらうことで、ようやくrinoさんが描く理想のスフィアに背丈を合わせられたんじゃないかなと思うんです。
戸松 確かに。
高垣 改めて歌詞を読み返してみると、スフィアがリレー形式で書いた歌詞に対するrinoさんからのアンサーがサビに表れているような……例えば「ありのままでいいよ。」とか。だからきっといろんな読み方ができるし、この曲から皆さんが何を受け取ってくれるのかもとても楽しみですね。
誰1人としてフォローし合えない曲
──今回のアルバムは全体としてものすごく攻めていますよね。例えば3曲目の「When You Feel Love?」は完全にコーラスグループの曲になっていますし。
戸松 この曲は「LAWSON presents Sphere's eternal live tour 2014」(2014年7~11月開催)のファイナルで、「Future Stream」をアカペラで歌ったことが1つのきっかけになっています。私たちはレコーディングではハモリも録るんですけど、ライブでは全員で主旋を歌うというのが基本の形だったんです。でも「Future Stream」のアカペラバージョンで、主旋と、上ハモと下ハモでしっかりパートを分けて歌ったことで4人の可能性が広がったような気がして。
寿 そのあと「My Only Place」(2016年11月発売の19thシングル)で、初めてハモるパートを決めてレコーディングしたんだよね。
豊崎 その頃から、ライブでも曲によってはパート分けするようになって。
高垣 そうやって4人だからこそできることが増えていったし、それを強みにしていけるという手応えも感じています。この10周年のアルバムで、完全に個々のパートが分かれた曲をやりたいという意見で一致したんだよね。
戸松 だから「When You Feel Love?」に関しては、自分が歌わないパートのことは全然わからないんですよ。楽曲の資料も「戸松用」みたいにそれぞれわかれていましたし。レコーディングもライブと同じように、主旋から始まって上ハモに行って下ハモに行って、また主旋に戻って……みたいな流れで録ったので。そういう意味では誰1人としてフォローし合えない(笑)。
寿 「私、あなたのパート知らないわよ?」って(笑)。
戸松 そんなライブで歌っているような生っぽさを、CDに封じ込めたいという狙いもありました。伴奏も極力シンプルにして。デモの段階ではもっと音数が多かったんですけど、あくまで4人の声をメインにしたかったので、引き算させてもらいました。
柑橘系アッパーチューンと寿デジロック
──4曲目から7曲目までの4曲は、4人のソロ曲をスフィアとして歌っている感じですよね。
寿 そう。4人それぞれにフォーカスした楽曲になっています。
豊崎 スフィアには「Ding! Dong! Ding! Dong!」(2014年6月発売の4thアルバム「4 colors for you」収録曲)という、4人の個性をギュッと1曲にまとめた楽しい曲がありまして。それを分解するというか、1曲ずつ独立したスフィアの楽曲を作りたいと、メインディレクターの佐藤純之介さんにお願いしたんです。
──まず4曲目の極端にアッパーな「CITRUS*FLAG」は完全に……。
戸松 私ですね(笑)。この案が出たときに1人ずつ「音楽×○○」という形でテーマを決めたんですけど、私は「音楽×ハッピー」にしたんですよ。なおかつ戸松っぽい曲を4人で歌うんだったら、「こんなに突き抜けちゃって、ライブは大丈夫?」っていうくらい振り切ったほうが楽しいと思ったんです。それで純之介さんにリクエストするときも「柑橘系」「炭酸」「水しぶき」みたいに単語でイメージをお伝えしました(笑)。
──柑橘系(笑)。
戸松 その中で「CITRUS」というワードも、「FLAG」と合わさることでスフィアとしていい化学反応が起こりそうだなって思ったんですよね。曲自体も遊び心にあふれているので、レコーディングでも「掛け声をもっと足しましょう」とか言ったりして。
寿 間奏のところとか、掛け声増えたよね。
戸松 だよね? きっとライブのときはなんでもありというか、どういう遊び方をしても正解になってしまうような曲だし、そういう曲になってくれたらいいなとも思ってます。
──続く「My Sweet Words」はソリッドなデジロックで、こちらは寿さんですね。
寿 正解です。私はソロでは“寿ロック”と勝手に呼んでいるロックナンバーを多く歌わせてもらってるんですけど、それを4人で歌うとしたらどういうものがふさわしいか話し合ったときに、今おっしゃったデジロック的なサウンドを愛生ちゃんが提案してくれて。作詞には、私がソロでお世話になっている田中秀典さんを指名させてもらいました。秀典さんの世界観と言葉選びが好きなんですよね。私のテーマは「音楽×メッセージ」だったので、「手紙をモチーフにした物語にしたい」という要望や使ってほしい言葉を書いたお手紙をお渡ししました。そしたらこんな素敵な歌詞をいただいて、大満足でしたね。
戸松 カッコいい歌詞だよね。
寿 レコーディングは私が一番手だったんですけど「これを4人で歌ったらどうなるんだろう?」ってすごくワクワクしたし、実際に4人の声が重なった歌を聴いて「カッコいいなあ!」と思いました。やっぱり4人とも声優でもあり役者でもあるので、それぞれが曲の世界に入り込んで、それぞれの方法で曲に表情をしっかり付けてくれて。それがホントにうれしかったです。
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お客さんは“ひかり”、音楽は分かち合うもの