イメージとマッチした原田ちあきの歌声
──「HAPPY BIRTH DIE」はどういう流れで生まれた曲なんですか?
タクマ 今回は2つの音楽からインスピレーションを受けて作ったんです。1つはサルバトーレ・ガナッチの「Horse」。もう1つは「りんご音楽祭」で見た福岡のHABANAという人力テクノをやっているバンドで。漠然と「こういうやりたいな」と思って作ったから、この曲をスサシでやるとかは考えてなかったんですよ。だから完成して1年以上は経っていたのかな。
イチロー そうやな。去年の頭にはレコーディングも終わっていたと思う。
タナカ タクマが先にオケを作ってきて、そこに俺がラップの歌詞を書きました。で、フックのメロディを漠然と「女の子に歌ってもらったら華が出そう」と思いながら、仮歌では俺が女性のフリをして歌っていたんです。身内の女性ボーカルもおるけど、歌い込むとか歌い上げる系の人が多いので、この曲はそっちじゃないねんなと思っていて。
──それで先ほどイチローさんが話していた流れにつながると。
タナカ そうっす。誰にお願いしようか悩んでいたときに、タクマと幸輝の音源の仮歌を聴いて「これやん!」と。あとは幸輝がインスタにアップしてたちあきちゃんがふざけまくっている動画を見て、まさにちょけている感じも欲しかったので「これっしょ!」と確信に変わりましたね。それで思い切ってお願いをしたらOKをもらえたので、幸輝とちあきちゃんが住んでいる大阪の家までタクマが録音しに行って。録り終えた音源を聴いたら、まさに俺がイメージした通りの仕上がりでした。
──原田さんは楽曲を聴いて、どう思いました?
原田 私は歌詞を紐解いたり読み取いたりする能力が低いんですけど、スサシさんの曲っていい意味で頭を使わずに楽しめる歌詞が多い気がしていて。まさに「HAPPY BIRTH DIE」も、楽しいとか愉快な感情が湧き起こる不思議な歌だなと思いました。
──レコーディングはどうでした?
原田 タクマくんに「ふざけた感じで、楽しそうに歌って」と言われたので、私はとにかく自由奔放に歌わせてもらいました。
──そういう振り切ったテンションで歌うのって、言われてできるものなんですか?
タナカ いや、やっぱり原田ちあきには才能があるんですよ。
原田 私、二十歳くらいまでディズニープリンセスになれると思っていて。
タナカ まだイケるよ! ちょっと片足突っ込んでいるし(笑)。
原田 うれしい(笑)。ディズニープリンセスっぽい歌い方をずっと練習していたので、披露する機会をもらえてよかったです。
タクマ それと、今回レコーディングが成功したのは幸輝のおかげでもあるんですよ。俺から幸輝に曲のニュアンスを伝えて、それを事前にちあきちゃんに説明してくれていたから、本番でスムーズに録れたのはありましたね。
原田 そうやね。幸輝くんが家で「練習しよう! 今から曲を流すから歌ってごらん」と教えてくれたおかげで、不安なく歌うことができました。
自分たちのシーンを作る
──以前、別の媒体でチヨさんとタクマさんにインタビューをさせてもらったときに、タクマさんが「これからは頭の使えないバンドたちは淘汰されていく」という話をしていたじゃないですか。理由を聞いたら「Zepp Tokyoを目指して、ゆくゆくは武道館だ」という目標を掲げてレッドオーシャンの中で戦うんじゃなくて、仲間を集めて自分たちのシーンを作っていくほうが得策だと思う」と言ってましたよね。まさに今回とつながる話だなと思いました。
タクマ うんうん、確かに。
チヨ CDは曲を聴いて歌詞カードを読んで楽しむわけだけど、今回はブックレットも付いてるから音楽以外の表現も楽しめるじゃないですか。そういう意味では、自分らのシーンに仲間を呼んで作品を作るっていうのは、前にインタビューで話したこととつながっているかもしれないですね。
原田 それに今、若い人の間で投げ銭をしたりとかお金を払ったりとか、価値をそういうものに見出す力がちゃんと育っている気がしていて。私はTwitterからイラストの売り買いが始まっているんですけど、昔に比べてみんながより芸術に興味を持つようになっているんじゃないかなと感じています。それっていい流れだと思うんですよね。
チヨ そうだね。だからいろんなバンドも面白いことをやっていったら、シーンとしてはもっと豊かになりそうだよね。
タクマ 曲がカッコよくてライブもいいのに物販が売れない、みたいなことって音楽業界ではあるあるな気がしていて。その状況はもったいないと思うんですよね。
チヨ そうやね。僕はスサシでグッズの監修もしているんですけど、物販も表現の一部やからカッコいいものを提供するのが当たり前やと思っている。だからTシャツにロゴだけ1色刷りでバーンと出すって、阿漕な商売をしているとしか思えないんですよね。アーティスト自体が人気やったらそれで売れるかも知らんけど、そこには情熱は感じられないなと思っちゃう。みんなも同じようにやってほしいとは思わないけど、アートな気持ちを持って趣向を凝らせば物販もカルチャーになり得るし、バンド自体がもっと評価されるはずなんですよね。新しいアプローチをすることによって、よりアートな目線で見てもらえるかもしれないんじゃないかと思っているので、みんなが表現をもっと広い目で見て、挑戦していけたら素敵ですよね。
──表現の順番の話かもしれないですよね。バンドをやりたいから音楽をやっているのか、表現したいことがあってそれをうまく伝えられる手段として音楽があるからバンドをやっているのか。
チヨ 僕らは後者なんですよ。音楽を作るだけで満足できるなら同じデザインのTシャツを毎回出すのもいいけど、それだと商売商売しちゃってるなと思っちゃう。そこを変えたいと思う気持ちが大事なのかなと。
スサシと原田ちあきの「これはやらない」
──表現者として、自分の中で「これはやらない」と決めていることはありますか?
タナカ 自分がおもんないと感じることはしない。逆に、それ以外はどうでもいいっすね。
タクマ 自分の中でダサいことをしたくないのは大前提として、ちゃんと自分らが消化したものをやっていると思われたいというか。ぶっちゃけ「この人みたいな売れている曲を書いて」と言われたら書けると思うんですよ。それも自分たちの中で消化できるものなら自信を持って出せる。結局、自分たち発信でやるっていうのが大事だと思うから、誰かにやらされてるというふうには見られたくないかな。ちゃんと自分たちで納得してやっているように思われたいですね。
タナカ あと、がんばっているように思われたくないっす。それこそタクマが言った「やらされている」につながるんじゃないかなって。
タクマ うん。それと楽しそうにやっているなと見せられたら、周りもハッピーになるし「あいつらと会いたいな」と思う気がするんですよ。
タナカ そうやな。「楽しそう」って「がんばってる」の逆な気がするしな。
原田 それこそお二人が言うように、私も創作を始めたときから飄々とした感じでやろうと思っていて。私、寝ずに絵を描いていたり、「この絵を売り込むためにはどうすればいいのか?」みたいなことを自分の中で計算したり、誰に声をかければ私の絵をより多くの人に見てもらえるのか、どこに出展すればちゃんと見てもらえるか、ちゃんと考えながらやってきたんです。だけど、そういうのを勘でやっているように見せていました(笑)。そっちのほうが天才っぽくていいかなと(笑)。
──その姿勢は今と変わりました?
原田 いえ、変わってないと思います。しんどく作ったものよりも、楽しく作っているほうがみんなも見たいかなという気持ちがあるので。もともと描くことが好きだから、そんなに苦になることはないんですけど、嫌なことがあったときはなるべくそれがみんなに伝わらないようっていうのは心がけています。
いつか歌いに来てくれるんですか?
原田 そういえば「HAPPY BIRTH DIE」のMVにも、私の絵を使っていただいているんですよ。ずっとアニメーションに携わってみたかったので、それが叶ってうれしかったことを最後にお伝えさせていただきたい!
チヨ LINEで「夢が叶いました!」って連絡くれたもんね。
原田 本当にうれしかったです!
タナカ ちなみに、いつかライブに歌いに来てくれるんですか?
原田 うわ、歌いたい! 前々から「COUNTDOWN JAPAN」と「FUJI ROCK FESTIVAL」に出るのが夢で……。
タナカ 原田ちあきが「COUNTDOWN JAPAN」に出てきたらお客さんも喜ぶやろな(笑)。
タクマ いいね。しっかりカマしてくれそうじゃん。
タナカ そのときはVJでちあきちゃんの絵も使いたいな。
原田 うわ、それめっちゃいい! 振り付けも考えます。
タナカ それオモロいな(笑)。TikTokのアカウント作って動画アップしよう。
ライブ情報
- SPARK!!SOUND!!SHOW!! 2021 TOUR "HAPPY BIRTH DIE" EXTRA-あくまこうりんのぎしき-
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- 2021年7月15日(木) 東京都 LIQUIDROOM <出演者> SPARK!!SOUND!!SHOW!! / ROTTENGRAFFTY
- 2021年7月19日(月) 大阪府 BIGCAT <出演者> SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Age Factory
- 2021年7月20日(火) 愛知県 THE BOTTOM LINE <出演者> SPARK!!SOUND!!SHOW!! / The BONEZ
- 2021年7月22日(木・祝) 宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX <出演者> SPARK!!SOUND!!SHOW!! / FOMARE