もっと人を愛してあげてください

──「鳴り止まない着信音の中で」は、アルバム「ぷ。」以来1年半ぶりの新曲です。メジャーレーベルから離れて、どのような気持ちで制作したのでしょうか。

特に考えはなくて。曲自体はコロナ以前から作り始めていて、自分が出したいものを出したいタイミングで出しちゃった、という感じです。

──ひさびさの新曲がすごく重い内容だったので、何か特別な思いがあるのかと。

この曲は自ら命を絶ってしまった女の子のSNSを見て、それに影響を受けて書いたんです。自分の本音をうまく伝えることができなくて、我慢して溜め込んでしまった思いをリアルとは全然関係ないところに吐き出すから、結果的に自分が伝えたかったことを本当に伝えたい人に伝わらなくて終わってしまう……みたいな曲なんですけど。自分が苦しんでいることに気付いてほしいのに、うまく言えなくて1人で抱えちゃって、その不安がどんどん大きくなって潰れてしまう不器用な人たちのことを“メンヘラ”って言葉でひとくくりにされてしまっていると思うんです。でもみんな愛されたいだけなんだよっていうことを知ってもらいたくて。もっと人を愛してあげてくださいというメッセージを込めて作りました。

──「自分だけじゃないんだ」という安心感を覚えるリスナーは多いかもしれませんね。歌詞について言うと、4行分あるサビの中で最後の1行には言葉を乗せずに「ああ」と歌っているところに言葉以上の切羽詰まった重みを感じて、テクニカルだなと思いました。

ありがとうございます。いい言葉がなかったから「『ああ』でいいか」みたいな感じだったんですけど（笑）。

──サウンド面でも細かいノイズが入っていたりなど不穏な雰囲気を感じる部分があります。例えばサビ手前でページをめくるような音、グラスの中で氷がカラカラとなる音など身近な音がいくつも入っていますけど、どのように作っていったんですか？

アレンジャーの薮崎太郎さんには「不協和音っぽく聞こえる気持ち悪い感じで」とか、「携帯電話のバイブレーションの音を入れてほしい」とか、そういうイメージは伝えましたが、基本的にはお任せです。紙をめくる音は薮崎さんが提案してくれた音で、すごくいいなと思いました。

──アートワークのディレクションはどのように？

イラストレーターさんが感じたことをそのまま表現してくださったほうがいいものができるかなと思ってお任せしました。ただ、この曲にはモデルになっている方がいるので、その方の情報はお伝えしました。具体的なイメージがあったからこそ、あんまり自分が思ってることを人に擦り付けたくないというか。もうちょっとイメージを膨らませたかったというのもあって。

──完全に自分で描き切るのではなく、ちょっと客観を入れたかった？

そうですね。

──でもみゆはんさんは好きなものが明確にあって、そこは何があろうとブレない感じがします。

そうですね。変えたいと思ってもそんなに変わらないんですよね。

──劇的に変わってみたい願望はないんですか？

変わってみたさはあるんですけど、自分1人じゃ限界がありますよね。

自分以外の人に歌わせたい願望

──最近の話題でいうと、Adoさんへの楽曲提供というトピックもあります（参照：自分の声を映画館で聴ける日が来るとは、Adoが映画「かぐや様は告らせたい」挿入歌を担当）。今をときめくAdoさんに自分が書いた曲を歌ってもらうことで変身願望が満たされる部分もあったのでは？

自分が歌うんじゃなくて、Adoが歌ったらどうなるんだろうと考えながら作ったので、それが新しい感覚ですごく楽しかったです。

──今後、作家として楽曲提供する機会が増える可能性もある？

むしろ楽曲提供をどんどんしていきたいです。人と一緒に曲を作る楽しさがわかったので、もっとチャレンジしていきたいです。

──いつかBTSに楽曲提供して、間接的に「BTSになりたい」を実現することもあるかも。

それはヤバいなあ（笑）。

──この先の展望は？

今はボーカロイドにハマっていて自分以外の人に歌わせたい願望があるので、ボカロPとしてがんばります！