音楽ナタリー Power Push - そらる
大切にしたいのは“こじんまりとした宇宙”
そらるがニューアルバム「ビー玉の中の宇宙」をリリースした。
今作には、そらる自身が書き下ろした表題曲「ビー玉の中の宇宙」のほか、buzzG、みきとP、まふまふ、Neru、黒魔、はるまきごはんといった名うてのボカロPたちによる提供曲が多数収録された。まふまふとのユニット・After the Rainでの活動で注目を集めたそらるが、どのような思いをもとにこのアルバムを制作したのか。また自身のソロ活動に対するスタンスや、7月26日にスタートする全国ツアー「ビー玉の中の宇宙の旅」についての話などを聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦
“小さいけど大事な宇宙”
──アルバムの収録曲はどれも「宇宙」をテーマにしたものとなっていますが、作家の方々にはどんなオーダーを?
一見すると「宇宙」がテーマのように思えるんですけど、実はそこまで壮大なテーマでオーダーをしたわけではなくて。タイトルそのままの「ビー玉の中の宇宙」って言葉をテーマに書き下ろしをお願いした皆さんにそれぞれ書いてほしい曲調を伝え、曲を書いてもらっています。
──「ビー玉の中の宇宙」という言葉はどこから生まれたんですか?
子供の頃にビー玉を通して見た間接照明がとてもキレイだった思い出があって。ビー玉の中の模様がキラキラして、とても幻想的な光が生まれるんです。宇宙って言うとすごく壮大なイメージを連想するんですけどもっとこじんまりとしたもの、ビー玉の中に広がっている星空のような、自分の中の小さいけど大事な思い出みたいなものがアルバムのコンセプトになっています。
──そらるさんの書き下ろし曲「ビー玉の中の宇宙」は、アルバムのコンセプトがそのまま表現された楽曲なんですね。
この曲は男の子と女の子の関係を歌った恋愛の曲に見えるんですけど、一部の歌詞が “ビー玉の視点”で書かれているんです。ビー玉を擬人化しているというか。
──歌の中に出てくるビー玉ではないほうの視点の持ち主は?
大人になった男の子ですね。この曲は男の子と、その子の宝物だったビー玉が登場人物なんです。1番はビー玉の目線で歌詞が書かれてて、2番はサビまでが大人になってしまった男の子の目線で書かれています。例えば2番のサビ前に「ポケットで光った小さな夢」ってあるんですけど、1番では「ポッケの中 全部全部詰まってた」という表現にしているんです。大人は「ポッケ」とは言わなくなるけど、ビー玉は子供の頃のまま変わっていないので「ポッケ」って言っていて。
大人になるにつれて感じる喪失感
──曲の中では人間とビー玉の関係だけではなく、大人と子供の対比も描かれているように感じます。
子供の頃に大事だった思い出が、大人になるにつれて薄れているんじゃないかっていう、喪失感みたいなものを漠然と感じていて。大人になっていろんなことを任されたり、自分でやれることが増えていく代わりに、子供の頃に大事にしてたことを忘れていくのって、すごく悲しいことだなって思うんです。
──人によっては大人になって得られるものが増えることに喜びを感じる場合もあると思いますが、そらるさんはそうではないんですね。
例えばお金が手に入るようになって好きなものを買えるようになると、子供の頃に100円だけ握って駄菓子屋に行って食べたいお菓子を買ったときの喜びって、もう味わえないと思うんです。子供の頃は満たされていなかったはずなんだけど、ちょっとしたことで得ていた喜びの大きさがとても大きかったんじゃないかなって。ただ子供の頃に戻りたいっていうわけではないんです。多くの人が経験している幼少期のキラキラした思い出っていうのを自分は大事にしたいし、大人になった人たちもそういう思い出を忘れないでほしいという思いはありますね。
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- ニューアルバム「ビー玉の中の宇宙」/ 2016年7月19日発売 / アニメイト限定セット [CD+グッズ] 3240円 / 通販版 [CD] 2160円 / 会場限定版 [CD] 1620円
- 「ビー玉の中の宇宙」
- 「ビー玉の中の宇宙」特設サイトはこちら
収録曲
- アトモスフィア
[作詞・作曲:はるまきごはん] - 捨て子のステラ
[作詞・作曲:Neru / 編曲:z'5、Neru] - Discord Alien
[作詞・作曲:buzzG] - 悋気な惑星
[作詞・作曲:みきとP] - 宇宙葬
[作詞・作曲:ちんたら] - ブラックホール的犯行
[作詞・作曲:YASUHIRO] - 宙の入り口
[作詞・作曲:TOKOTOKO(西沢さんP)] - 永久のスーパースター
[作詞・作曲:koyori] - コスモと蒼い花
[作詞・作曲:ぷす] - 廃棄ロボットの夢
[作詞・作曲:黒魔] - キヲクノソラ
[作詞・作曲:とあ] - プルート
[作詞・作曲:まふまふ] - ビー玉の中の宇宙
[作詞・作曲:そらる / 編曲:ぎぶそん]
そらる「summer tour 2016 -ビー玉の中の宇宙の旅-」
- 2016年7月26日(火)
- 大阪府 なんばHatch
- 2016年7月28日(木)
- 福岡県 DRUM LOGOS
- 2016年8月2日(火)
- 東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2016年8月4日(木)
- 宮城県 Rensa
- 2016年8月9日(火)
- 広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2016年8月11日(木・祝)
- 愛知県 DIAMOND HALL
そらる
ボーカリスト、エンジニア。2008年から動画共有サイトに“歌ってみた”動画を投稿し始める。自身の楽曲だけでなく多数の歌い手の作品のミックスも担当している。2012年6月に1stアルバム「そらあい」をリリース。2013年にはスズム feat. そらるとしてアニメ「ダンガンロンパ」のエンディングテーマ「絶望性:ヒーロー治療薬」を発表した。2015年には15曲入りのフルアルバム「夕溜まりのしおり」をリリース。また2016年よりまふまふと共に「After the Rain」名義での活動を開始し、4月に同名義初のアルバム「クロクレストストーリー」をリリースした。同年7月にはソロアルバム「ビー玉の中の宇宙」を発表し、今作を携えた全国ツアー「ビー玉の中の宇宙の旅」を開催する。