SOMETIME'S「Hope EP」インタビュー|“League”を経て、2人が見出す新たな“希望”

SOMETIME'Sが新作EP「Hope EP」を12月7日にリリースした。

今作は、SOMETIME'Sが春から夏にかけて開催したツーマンライブシリーズ「League」に合わせてリリースされた「Somebody」「Clown」「夏のMagic」に新曲2曲を加えた5曲入り。初回限定盤には3公演にわたる「League」のダイジェスト映像を収めたBlu-rayが付属する。

音楽ナタリーでは新作の発売を記念してSOMETIME'Sの2人にインタビュー。2人には「League」を展開しながら作り上げた3曲の制作秘話や、対バンを経て生まれた挑戦的な新曲にまつわる話を交えながら2022年を振り返ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / umihayato

NakamuraEmiとの対バンに“してやられた”

──年の瀬のタイミングなので、まずは2022年がSOMETIME'Sにとってどういう1年だったか振り返れたらと思っています。昨年はメジャー1stアルバム「CIRCLE & CIRCUS」をリリースするという大きな節目がありましたが、今年はどのような1年でしたか?

TAKKI(G) 思い返してみれば、2021年はがむしゃらに音源を作ってリリースするという1年でした。そんな中でメジャー初のアルバムとして「CIRCLE & CIRCUS」をリリースして、ワンマンライブだったり、イベント回りをしているときから、2022年をどういう1年にするかは早めにチーム内で話し合っていて。

SOTA(Vo) メジャーデビューという大きな発表があったのもあり、2021年はワンマンライブが多かったんですよね。2022年の大きな指針として、ツーマンライブや大きなイベントへの出演を含めて、改めて誰かと一緒に音楽を楽しむことに向き合いたくなって。

──それでツーマンライブツアー「SOMETIME'S Presents 2022 2man Live Series "League"」が春から夏にかけて組まれたわけですね。

SOTA はい。2021年が自分たちだけで完結していた分、今年は外に目を向けてこれまで自分たちに見えていなかったものを取り入れられたらいいな、という目的がありました。

TAKKI メジャーデビューという大きな節目を経て、僕らも環境が変わったので新たに仲間を増やしたいという思いもありました。対バン相手のYAJICO GIRLとNakamuraEmiさんははじめましての相手ですし、Omoinotakeとは兼ねてから交流がありましたが、お互いを取り巻く環境が変わってからは初めてのツーマンで、得られるものがありました。

SOTA 3本のツーマンライブに合わせて3曲リリースしようというのも早めに決めていました。もちろんライブで披露することも考えていたし、対バン相手によってどういうライブになるかをイメージしながら、どういう曲を作るのか考えるのも楽しかったな。

SOMETIME'S

SOMETIME'S

──対バン相手はどのように決めたんですか?

SOTA 実はYAJICO GIRLとNakamuraEmiさんに関しては、細い縁があって。YAJICO GIRLに関しては吉見(和起 / G)くんがTAKKIと同じスタジオで働いていたことがある。NakamuraEmiさんに関しては、僕が昔働いていた横浜のライブハウスのPAさんがNakamuraEmiさんをずっと担当されていて。まったくはじめましての方に対バンをお願いすることもできたんですが、どうせならどこかで接点がある方々と一緒にやってみたい思いがあってオファーしました。もちろん、楽曲が好きというのは大前提としてあります。

──対バンライブをする中で印象深かったことは?

TAKKI 6月のNakamuraEmiさんとの対バンは衝撃的でした。事前に僕らが好きな曲を伝えていたら、その曲をセットリストに入れてくださったり、僕らの楽曲のオマージュを楽曲に混ぜたアレンジを披露していただいたり。まさに“してやられた”感じがありました。僕らはEmiさんのあとにステージに上がる出順だったので、気合いの入り方が違いましたね。

SOTA YAJICO GIRLは後輩だし、Omoinotakeは旧友なので、先輩であるNakamuraEmiさんとの対バンは胸を借りるつもりもありつつ、やっぱり緊張したよね。Emiさんはここのところずっとカワムラヒロシ(G)さんと2人でステージに立っていて、当日も2人でライブをしてくれて。2人という編成でも奏でられる音楽の幅広さを見せつけられたというか、すごく刺激的でした。SOMETIME'Sのライブはほとんどバンド編成なので、もし2人でライブをしたらどうなるか、みたいなことはすごく考えさせられました。いいライブだったなあ。

TAKKI 対バンをやるうえで、やっぱり「相手に負けたくない」という気持ちは強くて。音楽は勝ち負けでは計れないから難しいところではありますが、自分たちより前に出たアーティストよりもいいライブをしたいという気持ちは強く芽生えました。ワンマン続きで忘れかけていたその気持ちを思い出せたのはよかったですね。

──Omoinotakeの冨田洋之進(Dr)さんはSOMETIME'Sのドラマーでもありますので、対バンのときは出ずっぱりだったわけですよね?

SOTA はい。単純にめちゃめちゃ疲れてましたね(笑)。彼は以前から「規模が大きくなっても絶対に俺が叩きたい。もしOmoinotakeとのツーマンがあっても俺が叩きたい」と言ってくれていたので、すごく頼りにしていますし、僕らとの対バンがOmoinotakeの「サマソニ」出演の前日だったんですよね。バンドとしても気合いが入っている状態の彼らとやれたのはすごくうれしかったなあ。

SOMETIME'S史上もっとも速い「Somebody」

──「League」の各公演に合わせて、それぞれ楽曲がリリースされました。4月の公演に先駆けてリリースされた「Somebody」は、非常にライブ映えするアッパーチューンですよね。

TAKKI ライブにそこまで引っ張られたわけではないんですが、今年リリースした楽曲でしっかりこだわったのはとにかくイントロですね。これまで僕らがリリースしてきた曲はイントロで主旋律を聴かせるような構成にしていなくて、「イントロがキャッチーだよね」みたいに言われる曲があまりなかった。「Somebody」もSOTAが出してきたデモの段階でいいメロディだと思っていたけど、いつもの調子で作ったら歌始まりでそのあとにメインのリフが入るような構成になっていただろうな。

SOTA ここまでのっけから明るい曲がSOMETIME'Sにはなかったので、新鮮な曲になりましたね。

TAKKI 4月リリースで最初のツーマンライブに合わせて作っていたのもあって、この曲はライブで育っていった楽曲でもありますね。ライブに足を運んでくれた方々も現場で聴くのを楽しみにしていたと思うし、僕らもライブでやることを見据えて作っていたんですが、アレンジが複雑だからライブでやるには苦労する楽曲でもあって。さらにSOMETIME'S史上もっともテンポの速い曲というのもあり、“SOMETIME'Sらしいグルーヴ感”を表現するのには苦労しました。最初は演奏陣が速さに翻弄されて苦戦していましたが、ツーマンライブを重ねるごとによくなっていった印象がありますね。

SOTA 演奏に引っ張られると、歌っている僕のテンションも上がりすぎちゃうので、バランスを取りながら歌うことを意識していました。ライブでやって盛り上がる曲だし、最初にリリースして正解でしたね。メンバーみんなが苦労している中、僕1人だけは何も考えずに楽しんで歌えるので楽しいです(笑)。

「飯田橋」以外で歌えなくなった「Clown」

──6月のライブに向けてリリースされたのが「Clown」です。「Somebody」とは対照的な落ち着いたナンバーですね。

SOTA 「Clown」に関しては「Somebody」とは違って、ライブのことをまったく意識せずに作った曲ですね。デモ段階では「Somebody」よりもおちゃらけたというか、明るいテイストの楽曲だったんですよ。その“おちゃらけ感”がちょっといきすぎていたのでしばらく寝かせていた。でも、ふとしたタイミングでサビのメロディを思い出すことがあって、なんとなく可能性を感じる曲でもあった。今回、それを引っ張り出してきてテンポを落としてみたらうまく形にできそうだったのでリリースまで持っていきました。

TAKKI 「Somebody」が底抜けに明るいサウンドだったので、対比として落ち着いた雰囲気に振り切れたのもよかったよね。

──サビの歌詞にある「市ヶ谷過ぎたら飯田橋」という言葉が印象的でした。これまでのSOMETIME'Sにない言葉選びだなと。

SOTA 「市ヶ谷過ぎたら飯田橋」という言葉と一緒にメロディがずっと頭の中にあったんですよ。曲として完成させるまでに「さすがに飯田橋はそのまま使えないか」とも思ったんですが、どうしても「飯田橋」以外でハマる言葉が見当たらないし、この言葉以外では歌えなくなっちゃって(笑)。

──歌詞の中では変わらないこと、普遍的なことの例として「市ヶ谷過ぎたら飯田橋」「水道橋から飯田橋」という歌詞が使われているわけですよね。

SOTA でも、正直なところ半分ふざけて書いたところもあるんです。聴いた人たちからどんな反応が返ってくるか興味があったというか。もともと僕が思い浮かべていたClown=ピエロが、映画「ジョーカー」に登場するアーサーに近い。自分が何をしようが駅の並びは変わりようがない、そういう現実の中でおどけている様ををこの曲の主人公に重ね合わせていました。