SOMETIME'S「Hope EP」インタビュー|“League”を経て、2人が見出す新たな“希望” (2/2)

SOTAの歌を道標にギターを鳴らす

──8月には「夏のMagic」という楽曲がリリースされました。TAKKIさん作詞作曲のこの曲は、どのように作られたんですか?

TAKKI 「夏に向けて新曲を作ろう」と思って作り始めたのではなくて、夏に作業していたことでその要素が入ってしまった曲ですね。僕がけっこう前に作ったデモの段階でなんとなくパッとしない印象を持ってしまい、「仕上げるならアルバム曲になるだろうな」という漠然としたイメージがあって。でもSOTAに引っかかるものがあったようで「このタイミングでやらない?」と声をかけてくれて。

SOTA 僕としては昨年出した「CIRCLE & CIRCUS」にも収録したかったくらいですが、そのときも結局採用されず。ずっと気になっていた曲の1つでした。「Somebody」「Clown」とリリースを続けたその次を思い浮かべたときに頭をよぎったのが「夏のMagic」のデモだったんですよね。手癖で作ったらSOMETIME'Sの曲によくある“幕の内弁当みたいなゴージャス感”が出る曲になりそうだったところを、この曲はあえて隙間のあるアンサンブルで構成するように、ちょっと趣向を変えて作り始めた曲です。

TAKKI 僕はギタリストなので、隙間のある構成にするならばサウンドの核になるのがギターになることはわかっていて。これは僕のエゴでもありますが、いつもお願いしているアレンジャーの藤田(道哉)には「ギターが立つ曲にしたいから、俺が必要ないと思った音は入れないでくれ」くらいまで言って(笑)。

──ギターの存在感がかなり大きく、SOTAさんのボーカルとTAKKIさんのギターがデュエットしているかのような印象がありました。

TAKKI さっきSOTAが“幕の内弁当”と表現したように、SOMETIME'Sの楽曲はいろんな音を盛り込んでゴージャスにしがちなこともあって、どうしてもギターが隙間産業的な立ち位置になることが多い。僕はギタリストでありながらもSOMETIME'Sにおいてバランサーであることも理解しているから、楽曲全体のバランスを見てギターの立ち位置を決めている。だから隙間産業的なギターを入れることになるのも納得しているし、個人的にはそのスタンスで演奏するのも楽しい。でも「夏のMagic」においてはギターをメインにすると決めた以上、普段のプレイとはかなり異なるアプローチをする必要があって。普段僕が意識しているようなピアノやドラムといった楽器に対してのアプローチがこの曲に限ってはほとんどないので、珍しくSOTAの歌を道標にギターを鳴らすという構成にしてみました。

TAKKI(G)

TAKKI(G)

──先ほど「必要ない音は入れないでくれ」とおっしゃっていましたが、ストリングスの音が入ってますよね?

TAKKI そこは非常に悩みました。「ゴージャスにはしたくない」という思いもありつつ、藤田に提案してもらったときは「いいね」という気持ちと、「どうなんだろう」という思いが半々くらいで。リファレンスとしてトム・ミッシュの曲を共有して、楽曲の全体像をつかんでもらったところ、弦楽器1本を入れる構成に落ち着きました。

──よく聴くとヒグラシの鳴き声も入っています。

TAKKI よく気付きましたね(笑)。ヒグラシの声は歌詞のイメージができたあとに藤田と「なんか入れたいよね」という話になり、裏の公園に出かけて録りに行きました。本当はもっと“木々のざわめき”みたいな音が入るかなと思ったんですが、幹線道路が近くて車の音も入っちゃうから、鳴き声だけが入るように録ってみました。あと曲中に出てくる風鈴のような音は実際にグラスを3つ買ってきて、いい音で鳴るものを探ったり……。

──先ほど話していた「夏に作業していたことで夏の要素が入ってきた」というのは、ここにつながるんですね。

TAKKI はい。個人的には季節という要素を楽曲に落とし込むのはすごく難しいアプローチだと感じていて。作り手のエゴとして、生み出した曲はいつでもどこでも、聴くシチュエーションを選ばずに聴いてもらいたい。いつ聴いても「いい」と思える曲を生み出していくというのが、作家からリスナーに向けての愛情だとも思っているんです。音楽が産業へと変わっていく中で季節性や聴くタイミングが限られた楽曲が増えていったと個人的には感じていて、それはそれで素敵なこともわかる。あくまで作る側と聴く側のサイクルの話なので、作り手のエゴを優先するのが正しいわけでもないですし。自分の中でもまだ消化しきれていない思いの中で「夏のMagic」という曲を出していいのか、けっこう葛藤がありました。

SOTA 最後まで「Magic」でいくか「夏のMagic」でいくか悩んでたよね。

TAKKI うん。結果としてはせっかく夏の要素を取り入れたことだし、「夏の~」でいこうという結論になりました。タイトルを付けるのにもすごく勇気が必要でした。

SOMETIME'S初の“ラップ曲”

──EPにはすでに配信されている3曲に加えて2曲の新曲が収録されています。これらは対バンライブが終わったあとに作り始めたんですか?

SOTA デモ自体は常にいくつか存在するので、対バンライブが終わってからどの曲を採用するか決めた形ですね。チームで話し合った結果、選ばれたのが「Drug cure」「Hope」です。

TAKKI 「Drug cure」に関してはデモをみんなで聴く“デモ会議”にアレンジャーの藤田がいきなり提出してきた楽曲で……。

──なるほど。それで作曲のクレジットに藤田さんの名前が入っていたんですね。

TAKKI そうです。これまでも藤田が出発点になって制作された楽曲はありますが、今回は彼の意向がそのまま完成形まで反映されたパターンですね。

──この曲の特徴を挙げるとするならばSOTAさんのラップだと思います。SOMETIME'Sとしては初めての試みですよね?

TAKKI デモにもラップが入っていて、最初は藤田のおふざけだと思っていたんですよ。「あ、ここは何かを入れるつもりの未定のゾーンなんだな」って(笑)。作業が進んでもラップのゾーンがずっと残っていて、「これはもしかして本気なんじゃないか……」と思い始めて。

SOTA 僕も自分がラップをやるとは思っていなかったので驚きました(笑)。デモの時点では間奏の裏にちょっとゴニョゴニョ入れていたら、思いのほか藤田がそのラップというアプローチにしっくりきていて。だったらやってやりますか!とひと肌脱ぎました。

SOTA(Vo)

SOTA(Vo)

──新たなアプローチとしてラップをしてみてどうでしたか?

SOTA すごく初歩的なことを言うようですが、僕のイメージではラップって音符のないゾーンをリズムと韻で歌い切るものだったんです。でも実際にやってみたら、譜割りや特に抑揚の部分で思ったよりも全然歌に近いもので。そこがすごく難しいし、楽しかったですね。TAKKIにもらった歌詞がちゃんとラップ用のものだったので、そこに僕の技量が追いつかないとすごくダサいので、必死にレコーディングしました。単純に音楽的な見識が広がりましたし、アプローチの幅が広がったのはよかったですね。

──TAKKIさんがラップの歌詞を書くのも初めてですよね?

TAKKI はい。めちゃくちゃ難しかったです。そもそも僕の歌詞の書き方って、完全にメロ頼りなんですよ。「SOTAがこう歌いたいんだろうな」というのを考えながら書いているんですが、ラップのパートにはメロディがない。なんとなくの譜割のイメージがあるだけの状態で歌詞を書くのは初めてでした。英語で韻を踏むアイデアはいろいろ浮かんできましたが、SOMETIME'Sでやるなら日本語も混ぜたくて、日本語パートの韻を英語で踏んで、さらに日本語で踏み直そうとか考えるとすごく難しかったですね。でもこういう制約を自分に課しながら作業をするのは楽しいので、いろいろ試行錯誤しながら書き上げました。一度書き上げた歌詞をSOTAに歌ってもらったら、意外とハイペースで歌えてしまい、2行くらい足りない!となったときは焦りましたが(笑)。

SOTAが1人で理想に近付けた「Hope」

──EPの最後に収録されているのが今作のリード曲でもある「Hope」です。この曲はSOTAさん作詞作曲のものですが、どのように作り上げた楽曲ですか?

SOTA ギターと歌から始まって、楽器が1つずつ重なっていき、最後にぎやかになって終わる曲にしたい……という構想が出発点でした。サビも決まってなければ具体的になんの楽器をどのタイミングで重ねるかも決めていない状態だったんですが、この曲が採用されて。作業の分担としてTAKKIと藤田が「Drug cure」に向き合っているタイミングだったから、「Hope」は僕がなんとかしなきゃ、と考えてはいたけど、一向にビジョンが見えないまま時間だけが過ぎていってしまい……。

TAKKI 僕と藤田は「Drug cure」の作業をしながら、SOTAが「Hope」の制作で苦戦しているのはわかっていたんですよ。でもここで僕らが中途半端に入って、いろんな意見を出して曲を完成させてしまうと、SOTAが最初に持っていたイメージからはかけ離れたものになってしまう予感があって。そうやって僕ら3人で曲を作るときもありますが、今回に限ってはSOTAが1人で作ったほうがSOTAの理想に近い、いい曲に仕上がると思っていたから、あえて僕は踏み込まないようにしていました。

SOTA 「Drug cure」と「Hope」に関してはレコーディングスタジオでプリプロをさせてもらって。プリプロで永田こーせーさんに来ていただいて、ようやく「Hope」の全容が見えてきた感覚がありました。先ほどTAKKIがギタリストとしてのエゴの話をしていましたが、逆に僕はメロディとコーラスワークくらいにしかエゴがない人間なんですよ。なので、ホーンをどう重ねるべきかみたいなところが本当に手探りで、永田さんに助けてもらいながら、ようやくこの曲をどうすればいいか“希望”を見出せたところがあるかな。今のは後付けのコメントですが(笑)。

TAKKI EPに収録できるか危ういところまで追い詰められてたよね。

SOTA この曲が完成したことでひと皮抜けられたような感覚まではなくて。長いトンネルでようやく出口の光が見え始めたような感覚。でもこの曲が形になって本当によかったな。

TAKKI メジャー1stアルバムを出して、タイアップ曲もあって、ある程度「SOMETIME'Sの音楽といえばこうだよね」みたいなイメージができたとは考えていて。それは喜ばしいことですが、制作で悩んでいるときに周囲のイメージや評価が曲に影響してきてしまうことがある。それが100%の悪いことじゃないのもわかっているから周囲の声を頼りに進みたくなるときがあるけど、それってあまり制作に関係ないんじゃないか、みたいな思いも同時に持っていて。そういうジレンマと戦いながら制作をしていたのが2022年だった気がします。そんな中で新しいアプローチに挑戦できた2曲をEPに入れられたのは、誇っていいことかもしれませんね。

──冷静に自分たちの状況を見ているんですね。

TAKKI いや、でもこれは音源が完成したからようやく整理できているのであって、制作中はそこまで考えられてないんですよ。いつも「なんであのときは考えなかったんだろう」と思ってますから(笑)。

気負うことなく楽しむ1日に

──来年の1月15日には今作の発売記念イベント「NIST」が開催されます。ツーマンよりもスケールアップして計5組のアーティストが出演するわけですから、にぎやかな1日になりそうですね。

SOTA ただただ楽しみですね。リリースイベントじゃなくてリリースパーティと謳っているので、盛大にやりたいです。ツーマンライブだとやっぱりある程度相手を意識する“対決感”が出てしまうんですが、5組も出ると僕の中では結婚式のお祝いの言葉をみんなからもらうイメージなので、当日はしっかり僕らも楽しむつもりで臨みます。皆さん勢いのあるアーティストさんばかりなので、しっかり刺激をもらって2023年の活動につなぎたいですね。

TAKKI すごいメンツに囲まれたなとは思いますが、もともと仲よくしている友達が多いからか意外とプレッシャーはそこまでないんですよ。気負うことなく5組でワイワイやって楽しい1日になればいいなと思っています。もしかしたら前日になったらすごいプレッシャーを感じているかもしれませんが(笑)。

SOTA そもそもLIQUIDROOMで5組ってどうなの?みたいな話もあるよね。

TAKKI 5組分の転換がどうなるかとかはまだ考えてないから。

SOTA 今がちょうど一番気楽な時期なのかもしれない(笑)。僕らが楽しみにしているのは間違いないので、いろんな人に遊びに来てほしいですね。

ライブ情報

SOMETIME'S Hope EP Release Party 「NIST」 Supporting Radio J-WAVE

2023年1月15日(日)東京都 LIQUIDROOM
<出演者>
SOMETIME'S / Kroi / the chef cooks me / ぷにぷに電機 / YONA YONA WEEKENDERS

プロフィール

SOMETIME'S(サムタイムス)

2017年にSOTA(Vo)とTAKKI(G)の2人で結成された音楽ユニット。2021年5月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsからメジャーデビュー音源「Slow Dance EP」を発表。同年8月にはメジャー1stアルバム「CIRCLE & CIRCUS」をリリースした。2022年4月から8月にかけてツーマンライブシリーズ「SOMETIME'S Presents 2022 2man Live Series "League"」を展開。12月には新作「Hope EP」を発表した。